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お化け屋敷をリフォーム  作者: 奈瀬朋樹
chapter 5
21/35

20話 不採用

「ほあああぁぁぁああああああ、……………超だるぃ」


 バイト三昧だったGWが開けた朝、クラスの自席にぶっ倒れる様に突っ伏してから、圧力鍋が変形するレベルまで凝縮させた溜息が駄々漏れる。


 とんでもないものを見てしまった。

 めっちゃ眠いのに、興奮しっぱなしで眠れる気がしない。


 昨晩は雫先輩と比奈菜が気持ちよさそうにベッドで寝る中、こっちは座布団1枚だけで寒さを凌ぎ、狭い台所の廊下は寝心地も悪く、更には微かに聞こえてくる2人の寝息に心臓が高鳴ってしまい、数えていた羊も2000、いや3000頭だったか? そんなこんなでどうにか眠れたけど、目覚めた途端にあの光景だ。


 あの曲線美は反則だ。


 今もその光景が脳に焼印されて片時も忘れる事ができず、このまま一生眠れずに興奮しっぱなしで死ぬかもしれない。

 斬新な死因だな。

 それに眠れない原因はこれだけじゃない。


 俺の制服ポケットに、爆弾が入っているのだ。


 早朝帰宅した後に制服に着替えて学校に行こうとしたら「お兄ちゃん、これ雫ちゃんに返し忘れたからお願いね~」と言われ、何かを受け取ったのと同時に比奈菜がダッシュで逃げ去り、確認してみたらそれは居酒屋で比奈菜が取り上げた、漆黒のブラジャーでした。

 思考が数秒停止した後、ブラを力強く握り締めて全力猛追したが逃げられてしまい、今朝に真っ正面から括目した、あのたわわな膨らみを支える太平洋ベルト地帯を手中に収める破目になってしまったのである。


 ただでさえ気まずくなっちゃったのに、どんな顔して返せばいいんだよ!!


 最初は鞄にしまったけど、もし学校で持ち物検査があったら、鞄の中を見られたら、そんな不安に押し潰されそうになってしまい肌身離さず持つ事を決意。本来ならポケットじゃなく絶対に見つからない衣類の深部、それこそパンツの中にしまいたかったが、そんな事をすれば意識がヘブン状態から抜け出せず、そのまま輪廻の輪に導かれて異世界転生、新たな物語が始まってしまうだろう。


 それならいっそタイムカプセルとして埋めようとしたが、勘のいい犬に掘り返されたり、フリーの爆発物処理班に発見される可能性も無きにしも非ずで、結局ポケットにしまったという次第だ。GWフル出勤の疲労・寝不足なのに意識がギラギラ覚醒しっぱなしで、1秒ごとに体力がガリガリ低下中、きっとこれがRPGでいう毒状態なのだろう。そんな極限状態でアホな思考が巡り続け、それでもつい男の本能でポケットに手を突っ込もうとしたら、


「おっはよろー、まーた朝から死んで…」

「うぎゃあああああぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」



 ドガッシャーーーーーン!!!



 心臓と共に体が飛び跳ね、机ごとぶっ倒れちゃいました。


「ちょっ、川葉? 大丈夫?」

「す、すまん神岸。ちょっと寝不足で」


 そんな情けない自分を心配そうに起こしてくれたのだが、その時に神岸のフラットな胸部を見て平静に戻る事ができました。

 ありがとう神岸。


「ほんとに顔色悪いけど、保健室行く?」

「いや、いい。どうせ寝れないし、今は1人になりたくない」

「??? どゆこと?」


 漆黒爆弾を抱えた悶々状態でベッドインしたら、どんな行動を取るか分かったものじゃない。

 今は自分自身が信用できません。


「まぁいいけど、本当に辛いなら休みなよ」

「分かった。悪いな、心配かけて」


 そんな精一杯の愛想笑いに、渋い表情が返ってくる。


「そんなにバイト大変だったの?」

「ああ、相変わらずの人手不足でな」


 比奈菜がいなかったらマジでヤバかった。

 お化け屋敷のバイトって人気ありそうなのになぁ。

 そう疑問に思っていたら、神岸が不思議そうな顔をしてくる。


「人手不足って解消したんじゃないの?」

「全くしてない。何でそう思った?」


「だって私バイト応募したけど落ちたから、人が集まったのかなーって」


「それ本当か!?」


 まさかの事実に前のめりに迫ると、神岸がコクコクと頷く。


「川葉もGWだけでいいから手伝ってくれーって言ってたじゃん。だから短期で応募してみたけど不採用だったよ」


 おかしい。

 GWの人員補充は俺が連れてきた比奈菜だけで、生徒会で人柄もいい神岸が門前払いになる理由はない筈だ。


「神岸、バイト不採用になった件、詳しく教えてくれないか?」

「うん、いいよ」


 そうして詳細を知った後、居ても立っても居られなくなり、放課後になるのと同時にパークに直行、余命3ヶ月を切ったお化け屋敷に向かったのだ。

キリが悪かったので今回は短めです。

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