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お化け屋敷をリフォーム  作者: 奈瀬朋樹
chapter 3
16/35

15話 幼怪サキュバス

「いえ~い、お兄ちゃんどうよ? 比奈菜サキュバスだよ~」


 着替え終わった比奈菜が嬉しそうに衣装を見せびらかす様子にメイク室内がほんわかムードに変貌、露出は少ないけど黒のストッキング・挑発的なボンテージっぽいゴスロリ衣装・ガーゴイル風の翼・角付きフリルのカチューシャという誘惑されちゃいそうな姿だ。ごく一部の男限定で。


「ほらほら~、お色気ムンムンでしょ~」


 そうして比奈菜がセクシーポーズをしてきたので、率直な感想を伝えてあげました。


「サキュバスにしては色気不足だな。妖怪じゃなくて幼怪って感じだ」

「なにおー、このエロ河童!」

「エロくねーよ! 大体ここはお化け屋敷で、それじゃ客が驚かないだろ!!」


 これじゃただのコスプレサキュバスだ。

 もっとこう、色香で惑わした男の臓物・剥ぎ取ったズボンを握るとかしないと。

 そう思っていたら特殊メイク道具を持った血塗れナースがニヤッと笑い出す。


「勿論これで終わりじゃないわ。比奈菜ちゃん可愛いから、そのギャップを利用しなきゃね。これから顔の左半分だけグロにするから」

「成程、まず柱から右顔だけ出して客を油断させてからのグロ演出ですか。それなら衣装も左側だけダメージある感じにします?」

「それいいわね。道具持ってくるからちょっと待ってて」

「え~、今のままがいい~」


 そんな戯言を吐くサキュバスを引っ込め、グロメイク強行というドタバタ劇を落ち武者が嬉しそうに眺めている。


「明智さん? どうかしましたか?」

「いやいや、元気な新人が来てくれて活気が出たと思ってな」

「えー、騒がしいだけでは?」

「似た様なものじゃよ。職場にもこういう空気は必要じゃぞ」

「そんなもんですか?」

「要はメリハリじゃて。仕事前から雑談もない息苦しい職場なら、儂はもう呼吸不全でとっくの昔にお陀仏じゃよ」

「そんなマイナスイオンっぽい癒し効果、比奈菜にありますかね?」

「ほっほっほっ、年寄りに可愛い子は総じて癒しじゃよ。ところで今日は別嬪さんも来る筈じゃが、姿を見せんのう」

「あれ? そういえば雫先輩まだですね」


 念のため携帯で連絡しようとしたら、勢いよくメイク室の扉が開かれる。


「……すみません! ……遅れっ、ました」


 息を切らした雫先輩が到着。

 ラフな服装・髪も簡単に纏めた様子から、どうやら寝坊&超特急で駆け付けたみたいだ。


「大丈夫じゃ。まだ時間はあるから休憩しなさい。坊主、すまんが水を持ってきてくれ」

「了解です」

「……すみません」


 落ち武者に諭されて雫先輩が椅子に座り、俺はメイク室に常備されたペットボトルを取って雫先輩に渡した。


「雫先輩が遅刻なんて珍しいですね」

「……早めに課題を済ませようと昨日頑張ったら寝坊しちゃって。……あれ? 今日はなんだか雰囲気違う?」

「ほっほっほっ、坊主の妹が臨時参戦してな。今メイクをしている所じゃ」

「……へぇ、夕護君妹がいたんだね」

「はい、明るいだけの愚妹ですけっ、ぐるじいぐるじい!」


 急に後ろからガシッと抱き付かれ、首元に回された腕で思いっ切り絞め上げられてしまった。


「お・に・い・ちゃ~ん。比奈菜はこ~んなに可愛いのに愚妹は失礼だよ~」

「分かった、分かったから離せ! 俺が悪かったから!」


 そう謝って首絞めが解かれたけど、何故か比奈菜は俺の背中に引っ込んだままになっている。


「お兄ちゃん。この美人さんは?」

「俺の教育係の雫先輩だけど」

「マジで! お兄ちゃんのバイト話で存在は知ってたけど、こんな美人だったの!? ほ~、へへぇ~、やるね~お兄ちゃん」

「うるせーよ! あとお前は初対面くらい畏まれ!」


 そんな兄妹喧嘩に雫先輩が小さく笑ってから、軽く頭を下げてきた。


「……はじめまして、音霧雫です。……川葉比奈菜さんでいいのかな?」

「うん! 川葉だと紛らわしいから比奈菜でいいよ~」

「……ありがとう。あとそのサキュバス衣装可愛いね。もっと見せてくれない? 今は体半分しか見えてないから」


 んっ? 体半分?

 てゆーかこいつ、確か半身グロメイクを。



「ふっふっふっ、では遠慮なく。がおーーーーーーーーーー」


「きゃああああああああああああああああああああああああ」



 サキュバスが「かおーー」って何だよ!

 だが比奈菜のメイクはグロいの一言で、右顔は可愛いけど左顔は腐敗で爛れて、衣装も左側だけ返り血付着、左手には男性の生首(複製)を握り締めるという猟奇的要素満載な仕上がりになっている。


「おおおおおおお! 凄い、めっちゃ怖がってる!!」

「分かったからストップ、足止めろ!」

「えっ? って、うわっちゃ‼」


 浮かれて足を止めなかったサキュバスが椅子に座っていた雫先輩を巻き込んで一緒に倒れてしまった。


「あう~、いた……くない! 何この天然柔らかクッション! お兄ちゃん凄い! 凄いよこの人‼ 超デがっ‼」


 押し倒した雫先輩の上で興奮する愚妹の脳天に河童チョップを叩き込み、首を掴んで起こし上げてから強制的に頭を下げさせる。


「すみません。騒がしい妹で」

「ごめんなさい。ちょっとだけ調子にのりました」


 河童とサキュバスの平謝りに、体勢を立て直した雫先輩が愛想笑いを浮かべる。


「……あ、あはははは。……じゃあ、私も着替えるから」


 そう言ってメイク室に移動した後、幼怪サキュバスが自分の胸部をスリスリと撫でてから唸り始める。


「流石の比奈菜もあれには勝てない。お兄ちゃん、あっちがサキュバスやった方がよくない?」

「あー、うん。そうかも?」


 確かに雫先輩のスタイルなら絶対似合うだろうけど…………

 あの巨乳を全く納めようとしない挑発的なボンテージ、極限まで細められたハイレグ、だが挑発的な衣装とは裏腹に引っ込み思案な性格が合わさり、顔を真っ赤にして両手で体を隠そうとする仕草というギャップも加わって…


 いいな。


 そんな妄想をしていたら血塗れナースが笑い出す。


「音霧さんにサキュバスやらせた事あるけど、男性客にナンパされて仕事にならなかったのよ。だから封印中よ」


 おおう、マジっすか。

 どうやら先程の妄想を遥かに凌駕するサキュバスの様で、似合い過ぎなのも考え物らしい。そんな考察をしていたら血塗れナースがこちらを見据えて、


「けどどうしても見たいなら頼んでみたら? 鼻の下伸びっぱなしのエロ河童君?」

「なっ! ちょっ、伸びてませんって!」


 慌てて顔を隠す仕草にサキュバスがやれやれという様子で、


「うわー、やっぱりエロ河童だ。皆さんごめんなさい。こんな駄目お兄ちゃんですがこれからも仲良くしてあげて下さいね」

「うるせーっ! この貧乳幼怪サキュバスが!」

「なにおーっ! 比奈菜はこれから二次成長期の最終ブーストで1年経たずにバインバインになっちゃうんだからね!」

「うわー、そりゃーたのしみだー」

「めっちゃ棒読みっ! この童貞エロ河童めっ!」


 そんな口論に周りが笑っていた所で着替え終わった雪女が姿を現す。


「……何があったの?」

「それはね、このエロ河童が…」

「わーーーっ‼ 皆さんもう開店間近です。配置に付きましょう!」

「あはははは、じゃあ今日もお仕事頑張りましょう!」


 この号令に皆が同調、俺も河童マスクを装着して準備万端!

 GWを乗り切るぞ!!


 そうしてお化け屋敷の営業がスタート。少人数ながらもどうにか人やりくり、比奈々もしっかり働いてくれて、どうにかトラブルなしでGW終了。

 皆本当に頑張ったのだ。


 本当に頑張ったなのに、現実は非常である。

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