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第6話:屈服する王に魔王は嘲笑う

 私は魔王ルシス。私の城である闇の城を破壊しようと決起するイグナイテッド王国の軍勢に策略を巡らし士気を急低下。

 更にな怒涛の魔物の攻勢により張り合うまでも無く我々の事実上の完全勝利として終了。

 魔法を極めに極めて独自に改造した私の力と新たに増強させた魔物の力によってイグナイテッド王国の兵士は雑魚と化し為す術も無く死んでいった。

 そして今や総大将の首であるアストラルは私の中にある。後はこの首をザルバトーレ王に見せびらかすに限る。

 さてはて、そろそろ私が自ら赴いて律儀な挨拶をしてやるとしろう。

 早く行かなければ真夜中になって日の出を迎える事になるのだからな。


「今宵はお前達で盛大に楽しめ。今から私はイグナイテッド王国の王に赴く事にする」


「何故、そんな事をなさるのですか?」


「ちょっとした挨拶をしたい。奴等の挨拶を無下にする訳にもいかないのでな」

 

 それに、俺達の城を断りも無く攻撃を仕掛けた礼としてお前達イグナイテッド王国の幹部クラスであろう無様な首を見せびらかした上で今回の後始末の件で条件を出せば、奴は私達魔王軍の報復を恐れて条件を飲むに違いない。

 魔王の覇気を匂わせる衣装から大人しめの服装に変更。それからは生首を片手に意気揚々と城を後にして、城付近に偵察の為に待機させているリザードラゴンを一体だけ引き連れて大陸全土の中心に立つイグナイテッド王国を目指し優雅に舞い上がる。


「魔王様。間もなく目的地に到着します」


 おっと。優越に浸っていたら、あっという間に到着したな。城門には見張りの兵士が何人も待機しているようだが、私は敢えて堂々と入らせてもらうとしよう!


「リザードラゴン! そのまま突っ込んでいけ」


「承知しました」


 猛スピードで進むリザードラゴンに見張りの兵士が警鐘を鳴らして総動員で弓から放つ矢を一斉に降り注ぐ。

 しかし、余りの早さに矢の攻撃は当たらない。


「ここで飛び降りる。お前は城門の見張りをしている兵士を片付けてから、相手をせずに適当に見つからない場所で待機していろ」


「魔王様だけで行くつもりですか!?」


 リザードラゴンまで連れていくと間違い無く戦闘が始まってしまう恐れが高い。目的の為にそれだけは避けて置きたい。


「そうした方が誠意があるだろ? だから、私は単身で行くのさ」


 頃合いの場所で飛び下り警鐘に何事かと騒ぎ出している愚民の横を悠然と通りすぎていく。

 しかし、街中で警備をしていたのであろう雑魚の兵士達が最終的な目的地であるイグナイテッド城への行く手を阻む。

 ふっ、殊勝な心構えをしているが私が前に立つ時点でお前達の敗北は決まっているというのに何とも哀れな連中だ。


「止まれ、不法浸入者よ! これ以上は先に進ませんぞ!」


 剣に槍に弓。どいつもこいつも大した事の無い武器で私に矛先を向けるとはな。

 私としては今回に限り無駄な命を奪いたくは無いのだが、それでも徹底的に道を阻むというのなら流血沙汰はやむを得ないな。


「私は魔王ルシス。今日は首を片手に王に返上しようと伺った次第。なるべくなら私を見逃してくれると、余計な時間と命を取られる事無くスムーズに出来るのだがな」


 言葉で説得しようも私が魔王である以上刃を突き付けるか。

 ならば、残念この上無いが私の手の中で安らかに死んでいくと良い。


「本当に良いんだな? 今そこで私の言う通りに道を開ければお前達の命は保証されるのだぞ?」


「黙れ! 魔物を大陸全土に解き放ち我々の光り輝く時代に闇の世界を作りし悪の塊よ! お前なぞ我々の刃で沈めさせてくれる!」


 覚悟があるのなら、私から一気に参らせて貰うとしよう。


「この長刀の切れ味を無知のお前達に知らしめてやる事に深く感謝したまえ」 

 

 私の背丈よりも長い長刀を鞘から引き伸ばした同時に周りにある物などを軽く吹き飛ばしてやると武器を構えていた何人かの兵士は地面に腰をつけそうになる始末。

 他の兵士は唖然としながらも私に刃を切り刻もうと刃向かってきたので身体を真っ二つにして終わらせる。

 すると、血祭り仕立て上げられた光景を目にした一般人は大きな悲鳴を上げて一目散に逃げ出していく。


「ふんっ。揃いも揃って大した事の無い連中だな。せっかくだから、ここで呑気に戯れている愚民を狩りたい物だが」

 

 今日はザルバトーレ王に部下の首を晒し上げて、落とし前をつけさせるのが私の為す任務。

 余計な事で王を怒らせるというのは避けた方が良いと感じた私は曇りが広がりつつあり雨が降りそうな空の下で単身城へと目指して足を進めていく。

 道中、命知らずなイグナイテッド城から配備された兵士が邪魔するので得物である長刀で一思いに切り伏せ、堂々とした態度で進むと遂に城の前で私を取り囲む程の人数が武器を構えて立ちはだかる。


「王の命までは奪わんよ。今日はただただ王て話し合いをする為にイグナイテッド王国に訪れただけに過ぎない。なるべくなら、お前達の命を奪わずに城に入らせて貰いたい」


「魔王ルシス! 大陸全土に魔物を散りばめ世界を我が物とせん悪の根源よ! 我々の正義の力で片付けてやる!」


 正義だと勝手に都合良く決め付ける愚かな連中風情が。余計な事まで時間を割くつもりは毛頭無かったのだが。


 残念だ、本当に残念だ。せめて苦しまない様に一思いに天へと誘ってやろう。


「全員突撃! 悪の根源たる魔王を討ち滅ぼし世界に平和を取り戻すのだ!」


 甘い甘い! その程度の襲撃で私の身体に傷を付けれると思うな!


「苦しんで死ね!」


 遠距離から降り注ぐ弓矢を赤子の手のように避けていき、怒涛の動きで迫る兵士の槍と剣の奇襲を払い除けて現段階に置いて片手でしか使えない長刀で周りの兵士を吹き飛ばす。


「やれやれ。生首のお陰で両手が使えないのはかなり痛いなぁ」


「その首は!?」


 アストラル将軍の首だと気が付いた兵士達にどよめきが沸き立つ。隙を一瞬でも見せてくれてありがとう。

 

「ぐぁぁぁ!」


 目にも見えない神速で兵士の後片付けをようやく終わらせた私は城の門を無断で破り王様が居座る最上階へ。

 部屋の構造は一階の端と端にある部屋と上の階へと続く長い階段が坦々と続いている。


「ようやくだ」


 上り詰めた先に居るのは、王様を守る兵士と堂々たる態度で望むザルバトーレ王の姿。

 その出で立ちは私よりも年老いて爺さんに近い年齢を感じさせつつも、隙を与えない迫力がある。

 しかし、こんな所でのこのこ引き下がる私では無いのだ。今日は思う存分私の存在を知らしめてやる!


「遂に来たか」


「ザルバトーレ。お初に掛かり光栄……でも無いな。私達を悪と決め付け同胞を苦しめる元凶ザルバトーレ王。私はお前達を完膚無きまでに滅ぼすと誓った魔王軍代表の魔王ルシスだ! 決着が付くまでは以後お見知りおきを」


 挨拶と同時にアストラル将軍である生首を見せつけると場は一気に凍りつくと表情を一つも変えないザルバトーレ王は細目。

 さすがの王様も生首には反応したか。


「何がお望みだ? こんな本拠地に来るには相応の理由があるのだろう」


「貴様達が所有する城の占拠を私達に無条件で譲れ。これ以上余計な犠牲を出したくないのであれば……な!」


「断る。人間でありながらも魔物を解き放つ魔王の戯れ言に従うなど私のーー」


 こんな時にでも自分の保身を案じるというのか。貴様はどこまでも腐っているな。


「保身を気にするとは小さい奴だ。そうやって己の為に守るならば私達にも考えがあるぞ」


「何だと?」


「まずは目の前で偉そうに座っているお前をこの場で断罪する。その前に兵士達が死力を尽くすと思うが、私が簡単に払い除けて跡形も無く殺ってやろう! 今片手にぶら下がっている生首のようにな!」


 王の元に無慈悲に転がっていくアストラル将軍の首にザルバトーレ王は息を飲む。

 しばらくして考え込むザルバトーレ王に私はとどめの一撃を加える。


「貴方も私と同じくした王だ。王ならば深く考え込まずに勇気ある決断をするのが務めなのでは無いかな?」


「やってくれるな」


 私を蔑むような目線で見ようが全くの無意味! むしろ余裕なのだよ!


「さぁ、王であるザルバトーーーレ! 良い加減に決断を下せ。私が一番に望んだ条件を快く飲むのだ」


「くっ、魔王ルシス。お前は私に屈辱を味合わせるというのか」


「屈辱ねぇ。貴方の傲慢な考えで父を殺し、一人残された私は屈辱すら超越した気持ちが胸の中で締め付けている。何なら、ここで私の最大限の恨みである貴様を殺したい気持ちで一杯だ! ただ、私も大人として貴方の置かれている立場を考慮して条件を出しているのですよ?」


「だが……断ーー」


 年老いている爺だけあって考えを強情に変えつもりは無いらしい。しかし、ここまで追い込めたのだ。

 後もう一押しでこいつの頑固な考えを変えさせてやる!


「さぁて、どうしようかな?今から同胞を呼び寄せて、この街に住んでいる愚民を血祭りしてやろうか。なるべく手っ取り早く済むように火で街中を燃やしてから状況が落ち着き次第同胞達の奇襲で跡形も無く片付けるよう命令してやるとしよう。無論小さな子供やご年配そして新たな命を宿そうとしている女であろうともな」


 さぁ、さぁ! 折れろ折れろ! 私の言葉に屈服し考えを変えるのだよ!


「うぅぅ。分かった……条件を呑もう」


 遂に考えを改めさせ人間の代表であるザルバトーレの考えをねじ曲げる事に成功を収めたぞ! 

 ふははははっ! ありがとう……アストラル。お前の無用な間抜けな顔をしている生首のお陰で提案がスムーズに進んだぞ。

 

「ザルバトーレ。お前は魔王である私に負けた。その事を死ぬまで忘れるなよ、老いぼれの爺風情が」


「貴様!」


 我慢出来ないか。そうかそうか。ならば、じっくりと遊んでやろう。お前の悲鳴が泣き止むまではな。


「よせ。お前達では相手にならん」


 老いぼれの王様のお陰で運良く命拾いしたな。良かったじゃないか。


「では、詳しい詳細をここで決めていくとしましょう」


 ふっ。笑いが止まらんな。今まさに私のサイクルで動き出した世界!もはや、人間の時代は終わりを告げて新たなる世界が紡がれる。


 魔物がより良く暮らしていく素晴らしき楽園の世界がな!

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