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第5話:魔王軍の絶大なる力を見よ!

 私は魔王ルシス。今宵月が綺麗な半月で美しく夜空を彩る真夜中で私が作り上げし魔物であるギャレンの偵察結果を聞く事となった。


「報告申し上げます。魔王様に指示されイグナイテッド城を調べていく内に、この城を近い内に総攻撃を開始するとの情報を得ました」


 ほぅ。やはり、この大陸全土に置いて中心地に立ち絶大的な位置に君臨するザルバトーレ王は私の城に土足で総攻撃を仕掛けるつもりか。

 ふはははっ! 全く、マナーすら無いとは哀れな奴よ。そこまでするというのなら私にもそれなりの考えを持ってしてお前達を無能に晒して上げてくれる!


「私が自ら出陣して奴等を灰のように燃やし尽くすというのは非常に容易い。だが、そんな簡単な事をしても芸が無いと言える。だから、今回お前が報告した一件で私が進化させたスライムの真の性能を見せてから奴等を地獄の底に送り届けようでは無いか!」


「さすがにございます。では魔王様が作り上げたスライムはどちらへ?」


 私が渾身の思いで強化したスライムはただの武器でやられる程に弱くなく口からどんな物も溶かしてしまう液体を発射したりする事が可能な最強の力を施している。

 しかも、スライムには従来には無い私独自の機能も組み込んでいる。それは……

 

「魔王ルシス様。スライム、ここに参りました」


「ご苦労。早速で悪いがお前には大陸の中心を支配する都イグナイテッドに向かってもらう」


 このスライムには生物に擬態するという機能を付けさせている。つまり機能を上手く使えば王様に仕える兵士に擬態して、惑わす事など容易く出来るという点を考えれば今回の作戦ではスライムは大抜擢。


「任務はイグナイテッド王国で俺達の城を沈めようとする行為の妨害。お前の擬態機能を上手く駆使して兵士を欺かせるのだ」


 今回の作戦に置いて実力で迎え撃つのでは無くスライムを使っての妨害工作を図る。

 スライムの擬態機能でイグナイテッドの兵士を散々に混乱させてとどめに私の最高の一撃を送って哀れな兵士達を地獄の底にご案内して差し上げよう。

 だが、念には念を入れてスライムがしくじった時に対処する要員も向かわせておくとするか。


「ギャレン。お前は引き続きイグナイテッド周辺の偵察を続行せよ。なお今回の作戦に向かわせたスライムも可能な限りサポートに勤めつつ時間があれば私に遠隔魔法で報告せよ」


「はい、承知しました」


 これで後はスライムがどのように動いているのかギャレンを通して情報を拾い上げる。

 もし、上手く計画が進みそうに無い場合は私が逐一案を提案すれば良い。


「さぁ、大陸全土を支配するザルバトーレ王よ! お前達が決起する力を私に全力でぶつけて来い!」


 そして思い知らせてやる。いかなる力があろうとも魔王として君臨し同胞の力を増強させる事に成功させた私に愚民に勝てる術は一切無いとな! 

 高鳴る計画を実行した私はそれからしばらくしてからスライムを通してギャレンが報告する内容に口を出す。

 例えば内部に侵入を果たしどのような妨害を行えば良いのかという相談。

 この質問に対してスライムから得た内部の部屋の状況を聞いてから私は武器倉庫にある大量の大砲を故障させる為に内部にスライム自身から出る液体を入れ込めとの提案をした。

 その次に私から作戦決行の直前に行われるであろう決行会にて、注がれる飲み物に体調を悪くする薬を混ぜろという提案をした。

 スライムがばれないように見張りの目を掻い潜って城の地下にある倉庫を調べるように指示を下した。

 その結果、作戦決行の直前に注がれる樽のような物が置いてあったとの事なので私が独自に作り出した劇薬を同胞であるリザードラゴンの配達をスライムの手に見つからない無いように手配しておく事に。

 これで地味な妨害工作は成功した。


「後はお前達愚民の敗北を高らかに笑うだけだ! ふはははっ!」


 始めから勝ち戦の試合に私は腹を抱えながら一人で部屋中に笑いを巻き起こす。

 そんな中で過ぎ去る1ヶ月。いよいよ勝ちが確定した試合が幕を切る。


「闇の城に接近する敵勢力を確認。我々の城を沈める為に持ってきたであろう武器を苦しそうな表情で運び込む敵を確認しました」


「ご苦労。総員、私の指示があるまで城の出口に待機。号令を私が下したら一斉に血祭りにしてやれ」


「はい、承知しました!」


 ふはははっ、奴等はどうやら素直に私達の策に嵌まったようだな。体調が悪くなるように作り上げた劇薬の影響で敵の兵士達の顔が全員死んだ顔を浮かべているぞ。

 まぁ、もうすぐ私達の同胞の手によって本当に死ぬのだがな。


「掛かってこい。お前達の無様な試合を私の圧倒的な勢力で踏み潰してくれよう!」


 やがて、苦しんだ表情を浮かべる部隊長のような奴の号令で私達の城の総攻撃を開始。

 全く気合いの無い覇気が地上に小さく響き渡ると敵側の兵士は弓を使って地上で待機している同胞に照準を合わせて発射する……が! お腹を痛めたお前達が弓という小賢しい遠距離武器を使った所で無意味なのだよ。


「ふはははっ、やはり私の作り上げた劇薬に苦しんでいるようだな。お陰で城門近くに待機している同胞に攻撃すら当たらない始末」


 そして次に仕掛ける大砲の攻撃も作戦が始まる前に執行していた妨害で無惨に失敗。

 さてはて、お前達の攻撃はこれで終了かな?もう何も策が無いのであれば後は一方的な攻撃でお前達を散々に殺してやろう。


「敵勢力、後が無くなり部隊長共々に突進攻撃を決行。しかし妨害工作の影響で馬に乗っている兵士の何人かが脱落しています」


 では、遊びも終わりにして……ここからは私達が華麗に始末してやるとしよう。


「同胞達よ! 勝利は私達の手の中にある! 全員、憎き人間なる存在を血祭りにしてやるのだ!」


「「おおー!」」


 士気すらもはや微塵も感じないゴミの集まりを掃除するように跡形も無く同胞達が始末していく。

 次々とやられながら悲鳴を上げる事すら出来ずに死んでいく兵士。

 計画が何かも順調に進んでいる中で別方向から猪のように勢いを掛けて突進していく別動隊が垣間見えた。

 さすがは大陸全土を締め上げるイグナイテッド王国。


「そう簡単に私達の勝利を授けてはくれないか」


「全軍、このアストラル将軍に続いて突き進め! 目標は魔物と城の主! 我が力で我々人間の存在を脅かす元凶を討ち滅ぼし世界に平和を取り戻すのだ!」


 ほざけ! 世界を破滅にせんとする存在は紛れもなくお前達だ! 魔物だからと勝手な判断で決めるお前達の方が……悪だ!


「怯むな! 進め、進め!」


 アストラル将軍の実力を侮っていたか。さすがにこのままだと奴の覇気に同胞達が押されてしまう。

 世界を私達の物だけにする野望を潰す事だけは何としても阻止せねばならない。


「リザードラゴン部隊、出撃! 城に向かってくる敵兵士を根絶やしにて燃やせ!」


 10匹以上のリザードラゴンは空を舞い上がり、地上で優勢に事を運ばせるアストラル部隊の殲滅を実行する為に一斉に口から炎を放射すると大勢の兵士は馬ごと燃え上がり灰と化していく。

 一方で、私が出撃させたリザードラゴンの攻撃を喰らってもなお突進していくアストラル将軍の姿勢にはある意味感銘を受けそうだ。


「ならば、私が自ら総大将を根絶やしにしてやろう」


「あれが城主か! 自ら赴く事には好都合! 私の持つ剣で切り刻んでくれる!」


 愚か者が。お前の方が私の持つ魔法と力によって天に召されるのだよ!


「城から離れる間、この城の守備は任せたぞ」


 城に一応待機させている同胞に守りを任せてからアストラル将軍の元へと駆け込み自らが得意とした紫色の長刀で出迎えると馬と一緒に地面を駆け抜けるアストラル将軍の足は止まる。


「お前がハデスの村を葬った張本人で間違いないか?」


「如何にも。私は闇の城の城主でありながらも大陸全土を同胞達がより良く住める世界を目指していく魔王ルシスだ」


「その紫色の髪に遠くを見据える瞳。お前は人間でありながらも魔物の味方として立つか」


「ならばお前達は人間という私と同じ知識を持ちながらも何故魔物の気持ちを理解しようとしない?」


「愚問だな。魔物は我々を容赦無く襲う化け物であり今もなお数え切れない程の被害を生み出している。そんな状況で魔物は悪では無いと? ほざくなよ」


 魔物と人間が争う始まりは10年前に森をさ迷っていた男が突如虫という概念をも覆した全くの異生物を見てしまった為。

 男はその異生物を魔物と指差して人々に魔物という生物が居たと伝えると瞬く間に大陸全土に魔物の存在が知れ渡ったとされている。

 それからは食物連鎖で続々と魔物が出来上がる最中に人間達は魔物を倒す為に昔から重宝していたとされる魔法や独自に開発した武器を用いて魔物を容赦無く殺す事で人間VS魔物の攻防戦の幕が広がっていった。


「分からないのなら大いに結構。魔物を悪と判断し殺すのを止めない人間は私達が完全に沈黙させてやる。その為にも……まず、お前には偉そうに座っているであろう王様にお前の首を授けてやろう!」


「黙れ魔王がぁぁ!」


 動きが単調。大振りに振るう剣など殺してくれと言わんばかりに隙がでかい。

 しかし、それなりに魔法を使っての攻撃も行うのは中々の技量。だが、魔王であり大陸全土を支配しようと志す私にとって……これくらいの事では早々に死なんぞ。


「うらぁぁ!」


「ふはははっ! あなたの攻撃は手に取るように分かりますよ!」


 いつまでも、こんな奴との遊びに興じている暇など一切無い。さっさとお手製の魔法で終わりにしてやろう。


「邪王暗黒弾」


 掌で形成されし黒き玉を放り投げる事で一気に爆風が広がっていくと剣で守りを固めていたアストラル将軍は勢いを無くして地面に転がり込む。

 私は無様に負けたアストラル将軍を鼻で笑って首元に剣先を突き付ける。

 もはや、勝敗は決した。後はお前の間抜けな首をザルバトーレ王に突き付けて私達魔王軍の恐ろしさを世間に知ってもらうだけ。


「これで終わったと思うなよ。勝敗が何であれ最後に絶対勝つのは……人間である我々! 魔王と魔物は我が勢力と勇者ジャスティーという希望が葬るのだ!」


 黙れ。黙れ黙れ! 魔王であり魔物の力を増強させる事に成功させた私に、どれだけの勢力が刃向かって来ようが圧倒的な力でひれ伏してくれる! 


「悪に染まりし愚民の兵士よ! 貴様達の上に立つアストラル将軍は首だけを残して無惨に死んだ事でもはや……私達の力に抗う術は無い!」


 武器を投げて両手を挙げるとは何たる弱さ。残念だが、相手が悪い。魔王として大陸全土の支配を目標とする私に優しさなど無い!


「さぁ、最後の仕上げとして士気の無い愚民の兵士を全員血の祭りに誘ってやるのだ!」


 慈悲など無い。私の城を攻撃しようと企んだ人間には惨たらしく死んでもらう。それが私に許される唯一の罰なのだよ。

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