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第2話:殲 滅 完 了

 私は魔王ルシス。長い時間を経てようやく人間の殲滅に力を入れる事が果たされる今日。

 兼ねてから始めていた思考実験を繰り返す事で通常の魔物が数倍の実力を増す事に成功を納めた魔物が生誕する。

 今回はあくまでも実験として数体分しか作り上げていないが私の力と強化された魔物が入れば勇者が離れた村など数分で滅ぼせるだろう。


「これが……私と同様に作り上げた物ですか?」


「物ではない。これは親を殺された仇を取りたいというスライムそしてゴブリンなどが自ら実験の協力に願い出たの私が受け入れて与えた力だ」


「なるほど」


「カリス。お前はこれから各地に散らばっていた同胞の統制を図れ。それが私がお前に初めて下す指令だ」


 頭を下げるカリスは私の指令によって、すぐさま後にする。姿が消えたのを確認してから集いし同胞達に労いの言葉を掛ける。


「よく私の実験に付き合ってくれた。早速で悪いが私と共に現在勇者が留守をしている村を攻め落とす。平和ボケしている愚民共に私達の怒りの鉄槌を存分に発揮するのだ! 良いな?」


「よっしゃ、この力で母さんの無念を晴らしてやる!」


「俺の妻。殺したあいつらを絶対に生かして帰すものか!」


 待っていろよ、人間。今日を持ってしてお前達が築き上げてきた全てを壊してやる! 小さい頃に黙って見送る事しか出来なかった私の快進撃を嫌と言う程味合わせてやるよ。ふはははっ!


「行くぞ! 魔王ルシスと共に私達の怒りを根こそぎぶつけるのだ!」


 フェザードという鳥型の火を得意とする魔物に乗り込む私は目的地まで空から降り掛かる風を大いに楽しむ。


「ふはははっ、まずは私達からのターンだ。父を殺した王は後で最後にじっくりといたぶってやる!」


 優雅に空を舞うフェザードは鳴き声を上げると私は醜い人間が住まう地上を眺める。

 空が高過ぎる影響でここからは余り良く見えないが人間が粒々に見えて仕方が無い。


「上から見たら、本当に人間が住んでいるのか怪しくなるな」


 同胞達は村の監視が無い場所で待機している。後は私が手を下せば平和ボケしている村は瞬く間に滅びと向かっていく。

 一ヶ所に集まる同胞の近くに降り立った私は息を殺して先頭に立つ。

 これから始まるのは人間が私達に一方的に殴り殺され蹂躙される死闘。私が直接下すからには子供であろうが何であろうが一切の容赦はしない。

 ただ平和に暮らしたかった魔物をめった切りにした私達の無念……思い知るが良い!


「行け、同報よ! 村人を一人残さず血祭りに上げるのだ!」


 号令に基づき一斉に村へと走っていく同報。私はその光景を遠巻きに眺めながらも後から村へと歩き出す。

 数分掛けて、歩いた門の先では村人の悲鳴が辺りに響き渡る。生きたいと願い敵である魔物に命を乞いながらも殺される者。

 あるいは襲い掛かる魔物をひたすら武器で対抗した挙げ句に骨ごと喰われる者。

 そして魔物が村に入り、もはや未来は無いと悲鳴を上げて生涯を終える者。

 魔物が村を蹂躙していく光景に逃げ惑い村の警鐘を鳴らした村人のお陰でしばらくして余所から駆け付けてきた兵士がやって来た。


「な、なんだ! 一体何が!」


「残念でした。もう、この村は私達魔王軍によって蹂躙される! 貴方達の平和は私の手によって崩壊するのです」


 背後からの奇襲に成功した私の手により一人の兵士の首は村人の死体の方へと転がっていく。

 悲惨な現場に馴れていないのか何人かの兵士は口を押さえそうになるも刃を私に震えながら差し向ける。


「貴様が、今回の惨状を起こした張本人か!」


 せっかくの良い機会だ。ここは魔王軍の頂点に君臨せし私が直々に挨拶をしてやろう。


「私は魔王ルシス。亡き父ルシファーに代わり私が同胞と共に人間の裁きを始める! お前達が過去に仕出かした罪に後悔し懺悔しながら滅んでいけ!」


「魔王だと!? ふざけた名前をしやがって。貴様は人間の癖に何故私達人間に仇なす真似を犯す!?」


 こいつら。あの忌々しい出来事について知らないのか。どこまでも愚かな。


「惚けるな! お前達が5年も前に北国に住む私の同胞を皆殺しにした前科……それが、私を動かさせた原因だ!」


「私達人間に仇なす魔物を一気に片付けられるという最大の機会に王は優秀な判断を為された! 魔物などという人間を襲う化け物など殺してしまうのが一番なのだよ! 化け物に生きる道など無い!」


 化け物だと。私の家族をそのような言い方で済ませるなよ……愚民風情が。

 もう、こいつらと話すだけ時間の無駄だ。後は俺の手で全員死の地獄に送り届けてやろう。 

 私の手によって裁かれる事にこれ以上無いくらい感謝するが良い!


「元よりお前達との話し合いなど不要。既にあの時に父と同胞を潰した時点でお前達に人間には死以外の方法は無いのだから!」


「この野郎、ふざけやがって」


 始めに飛び掛かってきた兵士を人差し指で軽く頭を弾き飛ばした後に続けて飛び掛かる者に右手だけで腹の中を空洞状にしてみせると案の定さっきまで息巻いていた連中が地面に尻をつくという哀れな光景を拝む事になった。


「ひぃぃぃ、お助けを!」


 助けだと? 同胞の助けにも答えずに殺したお前達の命を魔王である私が人間などを助けるとてでも思っている事が浅はかなのだよ。

 私の無念と後悔を散々に嫌と言う程に味合わせてやろう。この手が織り成す最高の刺激を受け取るが良い!


「お前達は私の手によって、あの世で深く後悔するが良い! ふはははっ!」


 腰を低くする哀れなる兵士に壁まで最大限に詰め寄ってから片手だけ頭の部分を持ち上げる。

 その際に村の対処に迫っていた兵士共が異様な光景に駆け付けるも村の家の屋根から奇襲するゴブリンの金棒が容赦無く身体を貫く。

 悲鳴を上げて死んでいく兵士。その光景に涙を浮かべる兵士は私の手を振りほどこうと懸命に頑張ろうという殊勝な構えを見せつける。

 しかし、既にさいは投げられた。お前の首が私の手によって固定されている時点で地獄行きの切符は約束されたような物。


「うわぁぁ、嫌だ! 嫌だ! やめてくれぇぇ!」


 良いぞ、良いぞ。もっともっと私の前で泣いて喚け! そういう表情を見せつけてくれた方がもっと残酷に楽しめる!

 だが、このまま掴んでいてもつまらないからさっさと終わらせよう。


「あばよ」


 私の一声で血が辺りにポタポタと床に溢れ出すと同時に顔が無くなった身体はぐたりて倒れ出しやがて地面にばたりと倒れる。

 その後、散歩のように遺体が転がっている地面を歩きながらもどこからか駆け付けてきた兵士の後片付けを続けざまに執行すると同胞達が報告を兼ねて私の元に膝を付く。

 スライムは残念ながら足という物が無いので無駄にぴょんぴょんと跳ねまくるしか無い。


「魔王様、この村の掃除が粗方完了しました。次の指示をお願いします」


「ご苦労。最終確認は私が直接下す。私からの合図が出たら、この腐った村を跡形も残さず塵にしてやれ」


 同胞を下がらせてから私は遺体が転がっている村にて一つの一つの建物を入念に調べていく。

 すると、ある家のタンスの方から微かに子供のような幼い声が耳に入る。


「はぁはぁ、早く行ってくれよ」


 あぁ。すぐにでも去ってやるよ……お前達の命を奪い取った後にな!


「おいおい。こんな状況でもかくれんぼとは大した度胸を持っているじゃないか」


 声が漏れているタンスを遠慮無く解き放つとタンスに隠れていたであろう子供達が姿を見せる。

 しかし、私の格好に恐怖になる子供達は魔王の私を人目見ただけで走り去ろうとしていた。

 危うく私は子供達の前に回り込んで二人の幼い子供の顔面を壁に叩き付けてよろよろと立ち上がりそうになった瞬間に私は二人の子供達の身体を火やぶりにすり魔法を解き放つ。

 みるみる内に焼きこがれ苦しんで悲鳴を上げる事しか出来ない無力な子供達に私は笑みを隠さずにはいられない。


「ぎゃああああ!」


「ママ! ママ!」


「ふはははっ! 苦しんでもがきながらあの世の果てでママと一緒に地獄を味わっていけ!」


 二人の肉体は真っ黒となり、家の床で喋る事無く死んでいく。

私は彼等の真っ黒になった肉体に不適な笑みを溢しながらも家を後にして準備が良い加減に整ったであろう同胞達に裁きの鉄槌を下すと瞬く間に村は丸焼きとなって身体に悪い煙が空高く登っていく。


「これで勇者が住まう村は見事に消滅。まずはお前の故郷を奪い取ってやったぞ!」


 当初の目的はこれにて達成。緊急事態に基づき帰投を果たした勇者の矛先は私に向けられるであろう。

 だが、それだけでは準備不足。後は魔物の未来を守る立場である魔王となった私が大陸全土で魔王の宣言を高らかに歌い上げる。

 そうする事で国は私を殺す為に全勢力をぶちこんで来るだろう事は目に見える。

 

「楽しませてくれよ。お前達が弱すぎたら私の本気を見せ付けられないからな!」


 特に勇者。お前はそう簡単に死んでくれるなよ……大陸全土で一番の実力を誇ると国に言わしめられているお前がそう易々と死んでしまえば私が理想を掛けて手に入れた力を存分に発揮出来ないからな。


 最後の最後に一人残らず焼き付くされた村にほくそ笑みながら、魔王として人間の殲滅を誓う私は同胞達を引き連れて何とも素晴らしい光景を後にするのであった。

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