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第13話:宜しい。ならば戦争だ

 味方同志の乱闘。魔王に休憩する時間は無さそうです、、

 私は魔王ルシス。今宵洞窟に戯れる魔王討伐団などという世迷い言を宣うグループは同胞達の力を借りて瞬く間に殲滅。

 しかしながら、最後の最後に私の障害となって武器を構えてきたハーツという人物の気迫に逃げる事もせず私は正々堂々で張り合う。

 一瞬の息使いも死を招かんとする緊迫した攻防戦。私の命を狙うハーツという手練れの男性の実力は相当の物だと確信した。

 願わくば私の右腕以上の存在として思う存分に振るって頂きたい。


「さすがは魔王。そう簡単に仕留めらないか」


 腐っても魔王なんでな。まだまだ、これからであろう時期に殺されてしまっては全てが水の泡となって消え失せてしまう。

 次に降りかかる災害を完膚無きまでに払い除けなければ安心して大陸を完全制圧出来ない。

 その為にも今は戦力となり得る駒が1つだけであろうとも欲しい。

 父の無念とあの日無惨に消え去った同胞の苦しみを何としても晴らす為に。


「なら、こちらの力を嫌と言う程味合わせてやる」


 奴め。いきなり分身してから取り囲んで来たか。ふっ、数だけ増やせば私を簡単に倒せるとでも思ったら大変甚だしいと思わせてやろう。ふははははっ!


「邪王獄龍斬……私の最高峰の力によって惨たらしく死んでいけ」


 解き放つ紫の残光。向かって行った視線の先にあるハーツは落ち着きを払った表情で見事に払い除ける。

 どうやら、私のお気に入りの技も難なく排除するらしい。全く、これだけ手間を掛けさせてくれるとは。

 少々私の手を煩わせてくれる障害が来たようだな。

  

「面白い。益々、私の片腕以上の存在としてお誘いしたい物だ」


「ふざけるな。俺はお前の首を捌いた金で自分の命を……後数ヵ月しか持たない心臓を何としても守る為にも」


 ほぅ。こいつは心臓に病を持っているのか。ふっ、良い考えを今さっき思い付いたぞ。

 私が目の前で武器を構えるハーツを仮の心臓で命を持たせる。その代わり、代金として魔王軍に置ける新たな中心の一角として存分に発揮して貰う。

 ふははははっ、我ながら何とも素晴らしき提案。さすがは魔王軍の主として君臨する私だ。

 さてはて、本来ならこの場で是非彼を私の手元に招き入れたい所だが、実際にやった所で睨まれるのは必然と言えるだろう。


「私の手元に入ればお前の望むままに叶えてやる。しかし、まだ予断が許されない大陸全土にお前みたいな力が絶対的に必要。だから、君には今日からでも私の片腕として君臨して頂きたい」


「断る。悪の塊でしかないお前の言葉に素直になるなど、信用に値しない」


「ふっ。そうやって仮面を作るな。お前は何よりも命の再生を望んでいる……ならば、私の言葉で再生するという言葉にしがみつく無いだろうに」


 実際、ハーツの心臓を再生するとなれば私が二日単位で作成可能な仮の心臓を移す。

 こうする事で一ヶ月の範囲であれば何とか命は助かる。だが、永久に長く生きたいのであれば話は別。

 まぁ、勇者ジャスティーのような屈強な戦士の血と心臓さえもぎ取ってしまえば……ハーツは目的を為し遂げられるだろう。

 それに私の目的にも理に叶ってしまう。ふふっ、自分の才能とやらがここまで天才だと笑いが止まらんな。


「黙れ黙れ! 貴様の妄言に従う程暇では無い! 今日ここでお前の心臓を貫き、都の報酬金で俺の僅かな心臓を再生させてやるんだ! その為なら」


 素直になれないとは何とも哀れな奴だ。こうなってくると私の力で嫌と言うほどに分からせてやる他無い。

 

「そこまで宣言するなら、やってみせろ。魔王として頂点に立つ私が今まで以上に全力でお相手をしてやろう」


 紫の色の長刀の刀身からこれまで以上の邪気が放出。対して相手は青を基調とした大剣から、計り知れぬ波動を身に纏い刀身をこちらに突き付ける。

 

「楽に死ね。魔王ルシス!!」


「ふははははっ、悪いがそう簡単には死ね無いのだよ!」


 響き合う剣劇。剣と剣が互いに交じり合いそして交錯する一戦に決着など付く筈が無い。これは、かなりの長丁場に持っていかされそうだ。

 そろそろ洞窟の外側に向かわせている同胞達の進行状況も良い加減に知っておかなければならない。

 こいつとの乱闘もさっさと終わりにしてやらないと不味いな。


「どうした? さっきよりも切れ味が悪そうだぞ?」


 凄まじいぶつかり合いが影響して長刀本体に痛みが発生したか。こうなってくるといよいよ厄介。ここは上手く払い除けて退散するに限る。

 いずれ、ハーツを誘う日はどこかで訪れる。今日は運が悪かったと思っておけば良い。

 

「邪王獄龍波!!」


 連続で飛ばした斬撃はハーツの横をすり抜けると壁に大きく直撃。奴の気を紛らわしている間に天井に向かって斬撃を飛ばすと、一気に天井に張り付いていた岩が真下に降下して行く手を上手く遮断する。

 これにて、奴の追撃は暫く来ないだろう。今の内に退散して次回の戦いに備えておくとしようか。


「出来れば、君の命が尽きるまでには出会いたいものだな。では、さらばだ!」


「待て! 魔王ルシス! まだ俺との決着が……付いていないぞぉぉ!」


 人の言葉に素直に聞く耳を傾けるほど私は暇では無いのだよ。今は先に出口に向かわせている同胞達の状況をこの目で確認しておかねば。


「……!? 魔王様、よくぞご無事で!」


 やれやれ、少しは増援に来てくれれば良かったものを。まぁ、さっき洞窟で乱闘していた人数が随分減っているのと身体の疲れが何となく察する事が出来る状況下。

 皆が頑張り散っていた戦況下でで誰よりも上に立ち誇る私でも、口を挟むなんて事は出来ないのだがな。

 彼等は本当に良くここまで導いてくれた。後は無事に帰投を果たして戦力の立て直しに力を入れなければなるまい。


「ご苦労。早速だが、身支度を済ませて本城に舞い戻る。疲弊した残存勢力も無理を来たさぬよう私に付いてこい」


 洞窟の外に横たわる人間共と同胞達の悲しき遺体を見上げながらも私達は本城である闇の城へと足を進めていく。

 道中では独自の生活を取り組む同胞達が私達の姿を見るや否や礼を交わされ、敵として認識している人間は偶々悪ふざけで遊びに来た子供達でさえもキバジャガーという肉食動物が研ぎ澄まされた牙で根こそぎ食らい付くし商売道具を馬車に詰め込んで平坦な道を進む商売人を食べ尽くす。

 全く持ってして、非常に爽快感溢れる光景で実に良い気味である。私達の命を弄ぶ人間に何とも素晴らしい末路と言っても差し支えない。

  

「そろそろ夜か」


 戻るにも時間を喰ってしまった。疲弊した同胞達もさっきより顔が青ざめているような気がしてならない。

 さっさと入って身体を休ませて置きたい所……だが、様子が微妙におかしい。

 どうも、私が当初指定していた配置とは随分と違う。おまけに各員の配置さえも。

 誰かが配置を摩り替えたとしか考えられない。あんな前門付近にパワー重視の奴と撤退していく敵を一瞬で落とすキバジャガーが何体も居るという事を考えると。


「誰かが城を侵……いや、待てよ。寧ろ誰かに乗っ取られたと図るべきか」


 その場で止まっていると、眼鏡を掛けて常に杖を持ち歩く男性が城の頂上にある外にゆっくりと歩き出して私を見つめる。

 なるほど、今回の一連は……レンゲルが図ったのか。さすがは緊急時に置ける戦略担当。

 いつも蔑むような目線で私に対してはゴマをするお前がいかにも考えてそうな事をしてくれる。


「ルシス。人間でありながら魔王などと名乗る矛盾の塊……貴様に帰る場所など無いとしれ!」


 ほぅ、ブレイドも買収したか。大方私が魔王となれば、更に良い立場と報酬を与えてやると囁いたのだろう。

 ブレイドは私が幹部に任命する辺りから上を狙う傾向にあったからな。

 そういう点でレンゲルとは関わらせないように遠くに離して様子を伺うようにしていたが失敗したようだ。

 ふっ、こいつらの開発を手掛けた私がここまで裏切られるとは。

 緑色の髪を乱雑に散らかしているレンゲルはありとあらゆる資材の調達役と戦略の提案等で役立ってはいたが……こんな事になるのなら、さっさと秘密裏に始末しておくべきだったか。


「魔王ルシス。これからは魔王レンゲルとなり、世界を闇に染め上げてくれます」


「良いのか? そんな事で一度私に刃を振るってしまえば、後戻りが出来なくなるぞ?」


 とは言っても、青髪を長く伸ばしたブレイドには通用しない。こういう奴は一度決めた事には非常に忠実だからな。

 おまけにレンゲル派に従っている同胞達が前門からじりじりと迫ってくる……ここは退くのが吉か。


「ふははははっ、宜しい! ならば戦争だ!! 裏切り者のブレイド、並びに魔王という名前を奪いながら今も私を見下げる大犯罪者レンゲルには手厚い報復をくれてやる! 覚悟しておけ!」


「やれ! 人間でありながら我々の立場に入るルシスを絶対に逃すな!」


 全く……私はお前達の理想。そして人間が同胞を魔物と呼んで無惨にも殺す非情なる世界に君達の王として君臨し、人間共を全員殺して我々だけの理想となる世界を築き上げようとするのが私の一番の目的だと言うのに。

 どうやらレンゲルを作る際に少々悪い知恵を授けてしまったな。

 まぁ、適当に乗り込んでからお前は私に作り上げられたのだと言ってしまえば発狂して勝手に死んでくれると思うが。


「動けるか、お前達?」


 体力がかなり消耗しきっており、動けるのは僅か三割弱。戦力としてはそれなりに残っている。

 動けない者には悪いが、その場で死んでもらうしか無いのが非常に辛い所。

 だが、身体が弱りかけている同胞達は私こそが魔王であると確信。

 犯罪者レンゲルを討ち取ってくれる事を期待して前に進む。


「この場は我々が。魔王様は急ぎ脱出を!」


「すまない。お前達が私の為に犠牲にするその命は決して無駄にはしないぞ」

 

 機会がある時にレンゲルの呪術で操られてしまった同胞を救い出さなければならない。

 その為の機会はいずれ訪れてくる……何故なら私は逆境を逆手に取って最後に完全勝利を為し遂げる魔王! だからな。


「逃がすな! 追えぇぇ!!」


 だから、あぐらをかいて悠々と待っているが良い。私の理想に仇なすお前達にはそれ相応の報復とやらを……


「悲鳴も上げる事無く味合わせてやる」

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