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第11話:踏み出そう。第一歩を

 俺は勇者ジャスティー。アリーゼの両親の元で一晩世話になり、寝心地の良いベットで安らかに眠るも翌朝の早朝でふとした物音に目覚める。

 するとそこには村を荒らす巨人型の魔物とスライムの軍団が蔓延っていた。

 一宿一飯の恩身と喉かな村を無惨にも破壊しようとする最低最悪の外来種である魔物を追い払う為、俺とアリーゼは互いに武器を構えて殲滅へと向かう。


「うちの村に土足で来たからには手痛い一撃を喰らわせてやるっすよ!」


 身軽な動きで巨人型の魔物の動きを立ち止まらせる。アリーゼは見切りを付けた所で大きく跳躍。

 顔面の高さに行き届いた所で並々ならぬ一閃を振り下ろして巨人の魔物を見事に圧倒する。

 魔物ハンターの職であれど、このような大物を倒すというのは骨が折れると言わしめられている現在に置いてアリーゼをハンターにして置くのは何だか勿体無い気がしてきた。

 願わくば俺の元に来て欲しいのが願望になるが果たして。


「余所見は感心しないっすよ、ジャスティー」

 

 おっと何匹かのスライムに背後を見事取られてしまったか。だが、しかし勇者である俺がこんな場面で無惨に死ぬのは絶対にあり得ないぜ。


「そらそら! くたばりやがれ!」


 緑の液体を鱈腹垂らしてカタコトながらも無念の想いを口にするとスライムは原型を無くして消滅。

 それを大いに笑うのは人知れぬ所で笑う俺だ!


「くはははっ、どうだ魔物! 無惨に死んでしまえ!」


「えぇい! 人間共め。私達が潰してくれよう」


 巨人型の魔物は両手を大きく振り下ろして、地面を砕く。砕かれた地面は見事なまでにひびが張り裂け辺り一帯に振動を送る。

 直撃を何とか避けるも振動に足を取られた俺とアリーゼに対して巨人型の魔物は追撃を掛ける。

 どうにか直撃を喰う訳にはいくまいと武器を正面に構える。

 しかし、巨人型の魔物の手が俺達人間の何十倍もの大きさを誇る事から威力は相当で俺は地面を何度も転がされるはめになる。


「ジャスティー、生きているっすか?」


 馬鹿言え。こんな所で信じてしまったら、あいつらに顔を会わせられねえよ。

 それに故郷を奪った魔王をこの手で果たさない限り俺は死ぬ無い!

 だから、如何なる状況であろうと俺は立つ。魔王が存在し続ける限り、平和に暮らす人達が俺のような悲惨を送ってしまうかもしれないから。


「ご覧の通り、ピンピンと生きている。まだまだ、そう簡単には死ねないからな!」


 剣先に魔力を大きく込める。すると巨人型魔物は剣を潰そうと足を踏み出す。

 アリーゼは俺の込める魂の一撃を阻止する為に妨害行動に移り出す。


「さぁ、今の内に暑い技をお見舞するっすよ!」


「任せろ」


 こいつで仕舞いだ。暑き炎を纏いて永久に悶え死んでいけ!


「炎舞龍王ーー斬!!」


 天を掲げし摂氏の温度を誇る炎を一気に振り下ろすと巨人型の

魔物は身体全体に火だるまを覆いて存分に苦しみ出す。

 やがて強力な状態を保持する炎に対して耐えられまいと何度も何度も武器を乱暴に振り回して抵抗を働くも、その意味は全く為さない。

 そうして身体全体は灼熱の地獄を浴び続け原型を留めずに灰と化す。

 

「はっ、どんなもんだ」


 あの時は邪魔をされてしまったお陰で、奈落の底に落ちるという事態に陥ったが今度は何とかなったぜ!


「後はスライムだけっす」


「よし、半分ずつで始末するぞ」


 巨人型の魔物という大きな司令塔を亡くしたスライム達は強気で村を壊そうとする行為から一転して逃げ惑う。

 しかし、村を罪無き人達が住まう場所を容赦無く荒らすお前達に逃げ場など無いと知れ。

 スライムの片付けがそう時間の掛からない内に終える事が出来た俺達は安全な場所に隠れていたアリーゼの家族に無事に終了した事を告げて安心させる。

 しばらくは警戒しておくのが良いかもしれないから、アリーゼは家に待機させて置いた方が身の為だろう。

 また一人旅に戻るというのは辛いがあいつらとは直ぐに再会出来るだろうし。


「じゃあ、俺はここを去ります。そろそろ仲間や困っている人達を助けに行かないといけないので」


 部屋からある果物や簡易式な食料などの余り物を有り難く頂戴し、玄関先でお見送りをする家族達に別れの挨拶を告げる。


「ありがとう、このお家を守ってくれて。君には感謝しきれないよ」


 他の場所は荒らされてしまったが、このお家だけでも守れた良かった。

 自分達の住まう家が魔物の理不尽な行為で奪われるというのはどれ程悔しいか、考えただけでもおぞましい。


「いえいえ。俺は当然の事をしたまでです」


「そうっすか。次はどこを目指すつもりっす?」


 行く宛が余り無いが地形をアリーゼの父に確認して貰った結果、南下して歩いていけばどうにかカリスが牛耳る南の都ゾルダに辿り着けるだろう。

 無論道中には沢山の魔物が蔓延っているから簡単に羽を休ませるという事が出来ないかもしれないが。

 けど、弱音を吐いた所でどうしようもならない。今は一刻も早く合流するという事を念頭に置かなければ。


「都ゾルダを目指して頑張りたいと思います。途中ではぐれてしまった仲間とも再会出来ると良いんですけどね」


「大丈夫! 君なら絶対に出来るっすよ!」


 そう言われると何だか出来てしまうような気がしてきた。よし、俺ももっと頑張らないとな!


「えぇ、やだやだ! もっと遊びたい!」


 そういや、昨日の晩しか遊んでやれなかったな。本音を言うともっと遊んでやりたかったのだが致し方無い。


「こらこら。我が儘を言う物ではありませんよ」


「ごめんな。兄さん、どうしても行かなければならない用事があるんだ。それにこんなにも淀んでしまった世界を守るという使命がある以上俺はこの場所にいつまでも留まる事は出来ないんだ」


 名残惜しいが仕方無い。俺になついていてくれた子供達に何とか説得して後ろを振り向くと最後にアリーゼの母は旅の無事を言い残す。


「どうか、お気をつけて。願わくば貴方に旅の無事を」


 アリーゼは……どこかに行ったのだろうか? 後で別れて家にしばらく籠って探してみても居なかったし。

 まぁ、どうせ俺の目に届かない場所で見送っている事だろう。


「さて、どうにかして再会を果たさないとな」


 場所の見当は一切付いていない。しかし、適当に南下して行けば自ずと道は開かれる筈。俺はそう信じ込みながらテクテクて足を早める。

 周りにはあるのは朝日が豊かな緑色の葉っぱに覆い被さった森林。時々どこかから吹いてくる風に気持ちよさすら感じる。

 だが、どんな所に居ようとも魔物は空気を読む事無く立ち塞がる。

 薄汚い魔物を両断する為に俺は立派に栄えた剣を振るって、戦闘態勢に入ると野生の魔物は何かを呟きながら襲い掛かってきたので問答無用で迎え撃つ。

 力は俺の方が圧倒。数は魔物の方が圧倒的に有利で体力の消耗は自分の方が激しい。


「くそっ、数だけは一丁前か」


 どうする? この場は何とか最後の力を振り絞って逃げ切ってやろうか? 

 いや、多分数に追い込まれて袋叩きにされる可能性が高い。


 今や魔王の力のお陰で力が倍増している気がしてならない魔物に。


「憎き人間よ。覚悟せよ」


 人間が憎いだと? ふざけんなよ……逆に憎いのは人間の方だ。お前達外来生物に好き勝手に暴れたお陰で罪無き人達が死を招き、幸せに暮らしていた人達に大きな災いをてめえから起こしている事を深くしりやがれ!


「てめえらは魔物は殲滅してやる! 勇者ジャスティーの名に掛けてなぁぁぁ!」


 怒り任せに剣を振るって四方八方に集まる魔物を有象無象に凪ぎ払う。

 数だけで押しきろうと作戦を練っていた魔物達だったが、俺の実力に膝をつく。

 俺相手に数で迫ろうとするのは中々良い小細工だった。

 しかし、勇者であり最高峰の力を備え持つ俺に掛かれば楽勝であるという事に変わりは無い。


「さて、終わりにしてやる。地獄の中で永久に蔓延っていろ」


「まだだ……我々はそう簡単にやられん!」


 上からだと!? くそっ、木々の幹に隠れていたとはな。


「隠れ機能を備えるステルスモンキーを潜ませておいて成功だったな」


「はっ、どうせ実力は俺の方が明らかに上! 弱音を吐けない位に叩き潰してやるよ!」


 と息巻いたのは良かったが、先程放ってしまった一撃の消耗で身体に疲れがどっさりとのし掛かる。

 やばい、このまま決着が付かないと逆に殺られてしまう。


「魔王様が与えて下さった闇の力を有り難く頂戴するが良い!」


 数に追い込まれ、情勢が大きく揺れ動く戦況。

 魔物相手に息巻いてはみたものの、ステルスモンキーの尋常に無くすばしっこい動きと数の多さに疲れが出始め遂には……


「へっ。逃げ場無しか」


 周囲全体に魔物。このままだと滅多刺しにされてご臨終か。

 こうなったら、ある程度の魔力は犠牲にしてでもぶっ潰す!


「ぐはぁぁ!」


 有り余る魔力を込めて最強の一撃を放とうと決意を固めたその時。

 風の揺らぎと共に突如魔物の背後から短刀で素早く始末する小柄な女の子が意気揚々と駆け付ける。


「救援及び参戦っす!」


 この妙に元気のある声はアリーゼか! 取り敢えずは助かった! 後は俺とアリーゼで終わらせる!


「よしっ、切り開く!」


 その後はアリーゼと共に魔物を散々に叩き潰して何とか事無きを得る事に納める。

 アリーゼが居なかったから、魔力の大量消耗で身体がやられていた所だったぜ。


「それにしても、こっちに駆け付けてくれるとはな。家族の方に行ったのかと思っていたぞ」


「魔王を倒せば魔物ハンターに献上される報酬金を考えると寧ろやらない手は無いっすからね。それに……」


 俺の顔に何か付いているのか? いや、何も付いていないな。


「さぁ、行くっすよ! まずはジャスティーの仲間と合流を果たすっす!」


 何か言おうとしていた雰囲気だったが。まぁ、いずれにせよアリーゼが同行してくれるのなら頼りになるな。

 回復兼補助役のミストそして兼制役のハワードが居ない分、かなり戦力になる。

 ここから、どんどんと下っていけば都ゾルダに南下する筈。さて、頑張っていくとしよう!


「何かにやにやしていて怪しいっすね」


「にやにやしてねえ。それよりも、さっさと目指すぞ。来たからには俺のペースに合わせて貰う」

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