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第1話:物語の幕開き

魔王がいつも悪い立場ゲームとかに立たされているので、魔王にも勇者を倒す理由があるんだ! と言う理由で始めた物語です。

 一応勇者にも見せ場……作ってます! まぁ、色々挫折とかありますが広い目で見ていただければ(^_^;)

 

 今作は列車使いません。携帯も無い本当のRPGに仕上げている(つもり)です。最終回は二つ用意しています。


 

 永遠の楽園と呼ばれしエデンの里。

 父ルシファーは魔物を家族のように丁重に扱い、人間という種族と分け目を隔てた北国で魔物だけが住む都を立派に作り上げた。

 しかし魔物と人間との間に差別の壁がある現在では、今は良くても……いつかは魔物を本格的に滅ぼす作戦が人間の間で始まりかねないと予知していたルシファーは魔物達の気持ちを代弁する代表者としてサターン大陸を9割支配するイグナイテッド王国という大きな都へ護衛も付けずに単身で足を運ぶ。

 

 目的は魔物と人間の共存。

 

 父は毎日毎日争いが絶えない魔物と人間の醜い戦闘に飽き飽きしていた。


「お願いです。どうか魔物と人間の共存を認めてください!」


 これでもかと頭を下げる父に冷ややかな目で嘲笑うイグナイテッド城の兵士。

 そしてその提案に鼻で笑う王はルシファーに指を指す。


「我々は魔物を恐れているのだ。あのような気持ちの悪い生物を残しておけば人間の害を及ぼす。それに魔物は人間の事も平気で襲い掛かるでは無いか! よって腐った魔物に生きるという選択肢は永久に無い!」


「しかし! 元はと言えば、この世から生物の発展で突然変異を受け入れなかった貴方達にも責任があるのです。魔物にも、それ相応の意見を持ち合わせているのです? だからこそ、公平な目で!」


 引き下がらないルシファー。一方で魔物という生かしてはならない害悪の生物に気持ちがあるルシファーに腹が立って仕方が無い王は指を天井に上げる。

 すると今まで冷ややかな目線を送っていた兵士達が一斉にルシファーの首元に武器の矛先を向ける。


「ルシファーよ。お前の愚かな過ちを後悔しろ……魔物に気持ちがある人間など、気持ちの悪い魔物と一緒だ」


「そ……んな。私はただ、いつまで絶えない戦闘を終わらせる為に平和の条約を持ち合わせたに過ぎません!」


「魔物の肩入ればかりしおって。お前はもしや……平和条約という物を提案しながら魔物を束ねる王として我々人間の存在を永久に消滅する算段を企てているのだろう? 何と恐ろしい奴だ。今すぐ民の前で斬首を実行しろ! 魔物に肩入れする反逆者としてな!」


「御意!」


 天を仰ぐ王にルシファーは兵士に引きずられながらも精一杯に声を荒げる。

 しかし、魔物の完全消滅を目論む王には一切を持って耳に聞こえない。

 斬首台に連れていかれたルシファーは己の為す目的が遂げられなかった事に酷く苦悩しながらも魔物に肩入れする反逆者として犯罪者のような目線で見送る民に最後まで魔物の気持ちを代弁する。


「聞け! このままでは、いずれ人間と魔物はお互いに滅んでしまう。今ここに、その恐ろしさを痛感出来る者は私の代わりに人間と魔物が互いに寄り添う条約を作って欲しい! お願いだ!」


 喉が枯れるまで必死に叫ぶルシファーの首が固定される。そして天高く刃物を最大限に上げて、斬首するタイミングを後ろに居る王様の合図で待つ兵士。

 ルシファーの言葉を聞き届けた民。やがて、ざわめきが次第に大きくなり最終的には民全員が小中大それぞれの形を持った石を勢い良く人を殺しかねない威力で投げつける。

 

「魔物に肩入れしている時点でお前は人間じゃねえんだよ。さっさと跳ねられろ!」


「そうだ! そうだ! さっさと逝ってしまえ!」


「恐ろしや。恐ろしや」


「王様! この男に裁きの鉄槌を!」


 人間は魔物を共存など最初から誰も受け入れていない。その事に深く深く絶望しながらルシファーの首は王様の気紛れの判断によって地面に転がっていく。


「魔物に成り下がった人間をこの世から消した。次は魔物が集まる場所を我が推薦する勇者に討伐にしてもらう! 世界と秩序を築き上げる為に魔物は根絶やしにするのだ!」


 兵士や民が沸き上がる盛大な歓声。ルシファーが人間と魔物の共存という戯れ事を持ち掛けた瞬間、本格的な魔物退治の火蓋が切られる! 

 すぐさま魔物討伐の部隊が編成され僅か一週間で魔物を根こそぎに片付けられる里を手段すら選ばずに問答無用で殺していく兵士。

 そして魔物によって両親を失った過去を持つ勇者は得意とする剣でルシファーの指示で攻撃を行わない魔物を一方的に薙ぎ倒す。


「母さん。そして父さんの無念を思いしれ!」


 里は火炙りによって全てが全焼。もはや、永遠の楽園と呼ばれし光景は嘘のように消え失せる。

 この光景を山方面から観察していた少年は何もしていないのに一方的に殺していく人間に怒りを覚える。


「撲が……僕が山遊びをしている間にこんな事が起きるなんて! どうして、どうして彼らに酷い事をするんだよ!」


 非力で無力な自分はただただ無惨に殺される魔物を望遠鏡で泣きながら見ていくだけ。

 緑色のムキムキの肉体を自慢するゴブリンや岩の形をしながら自由に転がれるデスロック。

 そして、身体全体が非常にゼリーのように柔らかいスライム。

 皆が皆性格が違う優しい心を兼ね添えた魔物達を何の考えも無しに殺す人間が憎くて憎くて仕方無い。


「人間。僕は……絶対にいや必ずお前達の存在をこの世界から抹消してやる。ありとあらゆる方法を使ってでも」


 父ルシファーが別れ際に語った人間と魔物の共存を果たすという言葉。少年はその言葉に期待していた。偶然にも森で怪我をしていた自分に攻撃せずに助けてくれた魔物。

 自分を探してくれた父もその時に魔物の意外な一面を知った。

 そして片言ながらも知る事実。それは彼等は好きで人間に攻撃している訳では無いという事を。

 意外な一面性を知った少年は希望を持った。


 もしかしたら魔物にも人間と同じ気持ちがある。人間と魔物が互いに集まりしっかりと話し合えば共存の道は開かれるのでは無いかと。


 だが、その機会は身勝手な人間に壊された。後もう少しで築き上げる事が出来る橋を叩き潰すという行動に怒りを覚える少年は涙を流しながら事態が落ち着くのを待った。

 もはや昨日まで魔物と夜遅く遊んでいた里は焼け野原。

 少年は一歩一歩ずつ踏み締めて歩く。


「皆、ごめん。僕が必ず君達の無念を払ってみせるから! だから、今は黙って僕の目指す道を見ていてくれ!」


 焼け野原の空高くある幾つかの星を握り締める少年。死んでいった魔物の無念を張らすべく少年は父ルシファーが提案していた人間と魔物の共存を破壊して人間の殲滅に移行する。

 それまで少年は大変苦悩した。父に以前から教わっていた魔法に四苦八苦しながらも学校に身を潜めながら偽名を使ったりして人間を根絶やしにする為の力を着実に自分の物にしていく。

 そうした苦悩が続く中で5年の時が経て魔物が人間に殺されるのを黙って見送る事しか出来ない少年は今や様々な魔法を覚えている上に優秀な魔物を作り出す青年として生まれ変わる。


「ルシス様。いよいよ本日を持って我々魔王軍の再臨が叶います」


 無駄に長かった充電期間は終わりを告げる。ようやく果たせる無念に心を踊らせる魔王ルシスは人間の鎧よりも何倍も硬い紫の装甲と圧倒的な存在を存分に知らしめる赤いマントと威風堂々とした目付きと紫の髪を持ってして城の祭壇に無数の魔物が膝を床に付けて畏まる。

 ルシスは辺りを見回すと拳を強く握めた後に天井に指を高く突き立てる。


「時は来たれり。長い長い時。父とお前達の共そして親であった仲間達の無念を晴らすべく今日を持って我々は動き出そう! 我とお前達が永遠に永久に平和に住める世界を築き上げる為に我々を敵として全力で皆殺しに掛かる人間を一人残さず抹殺するのだぁぁ!」


 沸き上がる歓声。魔物の中心の立場になる魔王ルシスは息を飲んだ。今度は魔物を見殺しにはさせない……自分が居る限り世界は魔王と魔物を中心に周り出す世界が作り上げられると。


「ふひひひ。ようやく、これで人間抹殺の道に進めそうですね」


「まずは我々の存在を世間に知らしめる為に各地の国の戦力を奪い取れ!」


 結束していく力。高らかに宣言する魔王ルシスの言葉と同時に今まで人間には見られないように隠していた地下にある居城は地上へと大胆不敵に姿を現す。

 気は熟したと判断するルシスは手持ちの武器を掲げて幹部の物に魔王軍の旗を掲げさせる。


「まずは、各自でのたまう愚民を思う存分に殺せ!どんな奴等であろうともなぁぁ!」


「おぉぉぉ!」


 一斉に高鳴る団結を見せつける魔物は意気揚々と好き勝手にばらばらと散らばっていく。 

 その光景を楽しむルシスは一人の幹部に後を託すように後を去っていく。


「どこに行かれるのですか?」


「私が新たに作り上げた魔物と共に西にある村を存分に破壊する」


 紫色の輝きを放つ剣を空高く掲げて、数回振り回してから鞘に収める魔王ルシスの顔は尋常に無い程に怒りの表情を浮かべる。


「まずは勇者が住んでいるハデス村を叩き潰して、俺が過去にどれだけの絶望を味わったか後悔させてやる! そして、同時に私の恐ろしさを世界に伝えるのだ、魔王ルシスは本気で人間を滅ぼそうとしていると……な! はははははっ!」


 父と魔物を人間に殺され、深く後悔すると共に人間を殲滅する魔王ルシスの計画は今火蓋を切られる。 


 この物語は魔王ルシスと勇者ジャスティの持つ互いの思想を懸けた永遠に分かり合えない悲しき歴史である。

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