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むしゃくしゃして聖剣抜いたら夫と娘が出来て幸せになった話  作者: くろくろ
むしゃくしゃして聖剣抜いたら夫と娘が出来て幸せになった話
3/23

イライラしたから国から飛び出してやった

ヨウの過去。

女性軽視の発言があります。イヤな方は読み飛ばして下さい。

今まで、幼馴染と比べられることは数あった。

大体、私の悪いところを指摘するためにいわれたんだけど、今言われた言葉は未だかつていわれた中でもダントツに心を抉るものだったよ。

しかも、口に出したのが今日あったばかりだけど、噂を聞いて勝手に尊敬してた一般庶民出身でのし上がって来た騎士団長だったから、余計に堪えた。


「…ハンッ、こっちが手加減してやったのに気付かないようなお嬢ちゃんのおままごとに付き合ってられるか。せめて、アーヤ王太子妃殿下までとはいかなくても、見習ってお淑やかに過せねーのかね。こんなんじゃ、嫁の貰い手…コワッ!?」


聖剣の遣い手…暫定勇者である私の稽古は佳境を迎えていた。だから、現役の騎士団長に手合わせをお願いしたんだけどこの体たらくだ。

いやね?一応は勝ったよ。まあ、接待稽古の譲ってもらった勝利だけども。

確かに、もうあと少しで出立となるのに、暫定勇者のモチベーションが下がったらマズいとは思うけど…本人にいうことか?忙しいのか、慌てて稽古場を去る騎士団長のたくましい背中を眺めながら思う。社会人として、ありえない。

自分が庶民で、騎士団では苦労したから分け隔てなく接してくれて、評価も身分関係なくしてくれるから騎士たちに慕われてるっていわれてたから期待してたのに、彼のお眼鏡にはかなわなかったようだ。平和な日本生まれの豆腐メンタルな私にはキツイよ、トホホ。


「でも、剣の遣い手にお淑やかさは必要ないと思う」


お淑やかにしてれば、自動的に剣が戦ってくれるなら頑張るけど。

私が持つとダウンジャケットよりももっと軽く感じる剣だけど、残念ながら他動により動く。つまり、私が頑張って振らないといけないんだよね。


常に幼馴染と一緒だった私も知らされてなかったんだけど、この世界には魔王っていう存在がいるらしい。そして、よくあるゲームの展開と一緒で世界は危機に瀕してるそうだ。王城にいたら、わからないけど。しかも、幼馴染が怖がるからと情報が制限されてたらしい。

…あれ?もしかして、幼馴染を召喚した理由ってそれじゃないの?

それなのに何故、いつの間にやら王太子妃になってんの!?そしてあんたら男同士!!


恐ろしい事実(男王太子妃の誕生)に驚愕していた私の肩に、たおやかだけど結構力強い手が置かれた。…何故か震えた状態で。


「アハハっ!ヨウは本当におもしろうことをいうねぇ!…あれ(・・)はまぁ、王太子妃に骨抜きにされちまったからね」


ふるふるしてるのって笑ってるからか!どこに笑ってるの、ねぇお姉さん!!


「おもしろいって、だって騎士団長が……って、騎士団長も!?」


まさかの騎士団長の陥落。ヤダわー、この異世界、女に厳し過ぎやしない?いや、女性陣が雄々し……イヤイヤイヤ!?お姉さん騎士たちは自立したカッコいいきゃりあうーまんですよ!!

目から怪光線を出しそうな目でお世話になってる女性騎士たちに見られ、私涙目。


「あれ…騎士団長って確か、ミルお姉の………」

「あんな二心ある男、こっちからフッてやったわ」


「かっけぇ」


間髪入れずに、それでもあっさりとそういった一番仲の良い女性騎士はカラッと笑う。

肩に置いた手を上下して、軽くポンポンした彼女に促されて着替えようと稽古場を後にした私は、さっぱりした後にある悲報を伝えられることとなった。


「王太子殿下がお呼びです」


「…………」


「ヨウ、気持ちはわかるけど、その拳は降ろしましょうね?その侍従は仕事で伝えに来ただけだから、聖剣の柄からも手を放してあげて!!」


…とまあ、ハートフルなやり取りがあったんだけど、そのまま行かなきゃよかったよ。


「喜べ。お前の腹を借りてやる」


「……?」


恋愛脳がついに脳全体を支配してしまったんだと、この国の未来を悲観した。逃げずに魔王討伐しに出掛ける私に掛ける言葉なら、せめて『胸を借り』てほしい。何故、腹を貸す必要があるの?異世界特有のいい回し?


首を傾げると、恋愛脳王子は小馬鹿にした様子で説明し出す。

長々と語っていたけど、メンドクサイから割愛する。つまりは、こうだ。

男王太子妃

子ども産めない

お前産め


何で単語かって?理解したくないからだよ…っ。


「アーヤも我々の愛の営みが実を結ばないと知って、かなり落ち込んでいたからな。貴様は聖剣を抜いた勇者候補であり、うるさくいう身内もいない、そして子どもを作る機能ぐらい持っているだろう?どうせ使わないだろうから、使ってやろうというのだ。うれしいだろう?」


いろいろと、本当にいろいろといいたいことはある。

だけど、鳥肌が立ってしかたない。ぶわっとなった鳥肌、本当にキモいけど、それ以上に目の前にいる生き物がいっている超理論がイヤ過ぎる。

こいつ、聖剣を抜いたせいでそれなりの地位についていて、後ろ盾のない私を利用してやるって上から目線でいってやがる!!自分たちに都合がいいように、そんな便利な道具程度に!!


「可愛いアーヤが悲しむから、彼をたっぷり愛した後に種をくれてやろう。あぁ、戦闘で子どもが流れたら貴様如きに種をまた流さないとならないな。仕方ない、しばらくは旅は延期だ。さっさと孕めよ」


こちらの反応なんて気にせず、いうことだけいって犬でも追い払うかのように手を振る。

いや、もっと悪いか。なかなか動かない私を近衛騎士に引きずらせて追い払うんだから。


気が付いたら、私はどこかの部屋にいて…そして何故か幼馴染を見上げていた。

スプリングがきいたベッドを背中に感じるけど、つまり押し倒されてるって…なんで?


「ねぇ、彼から話は聞いたよね?」


あれが話し…いや、一方的な宣言だったけど。

私自身はあれを『話』だと認めたくないけど、それでも幼馴染は王子と話したと思っているようだ。

だから、幼馴染は…私が幼馴染だと思っていた男は、イヤーな感じで嗤ってこちらの服に手を掛ける。


他人ひとの男を寝取る女なんて、何しても、どう思い知らせてもいいでしょ?だってボク、王太子のお嫁さんだもん」


………………間。


「いいわけあるかー!!!!」

「ほげー!?」


両手をふさがなかったのが敗因だと、いつか穏やかな気持ちで幼馴染にいえる日が来るだろうか?

奇声を上げて吹っ飛ぶ幼馴染をひっくり返ったまま放置して、私はその部屋を飛び出す。…あ、ここまだ王城じゃんか。ヤバイ、早く逃げないと王太子妃暴行容疑でとっ捕まった挙句にいいようにされそうっ。

イヤ、もしかしたら『そんな野蛮な奴の子どもなどいらない!』とかいって話は立ち消えになってそして、不敬罪としてしょけ……。


「あああ、ありえないー!?」


ある意味ありえるか、あの面子だと。そう思うと、一気に血の気が引いた。


「ととと、取り敢えず!ミルお姉にお別れいってからとっととずらかるか!!」


おかしいな、これじゃあ完全に悪役じゃんか私。

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