プロローグ ぬるま湯、邂逅。解けていく。
かなりテコ入れしました。
前の話は主人公があやふやで(私はシャルロットが主人公のつもりでしたが……。)シャルロットのいる意味がないのではないか?というご意見があったので、もっとしっかりと設定を考えなくてはと思い、このたび一からの書き直しとなります。なので元のお話と全く違うものとなるかも知れません。それに、私自身もこの数年で大分変わったと思います。作風が別人?みたいなこともあり得ると思います。
とても暖かいぬるま湯に浸かっているような感覚だ
何でこんなところにいるのかは分からない
でも、とても心地よかった
とても幸せだった
数分か数時間か、どれくらいたったか分からなくなった頃に変化が起きた
子供の無邪気な笑い声、男の子のようだ
遠くの方から、小さいが確かに聞こえていた
そして、何故だかとてもよく聞き覚えがあった
「お父さん、上手に出来たよ!」
小さな男の子が手に持っている人形を親らしき人物に突きだしていた
その子の表情は嬉しげで、どこかボールを取ってきた子犬にも見えた
「本当か!?流石俺たちの息子だな!!!」
突きだされた人形を見て驚いたあと、その子供と同じかそれ以上に笑っている父親らしき人物
「はしゃぎすぎよ、あなた。
……でも本当ね、上手に出来てるわ。」
大騒ぎを聞きつけて奥からやって来た母親らしき人物は苦笑していたが、やがて人形をみているうちに驚きを口にた出していた
思い出した
小さい頃に、作ったゴーレムの出来がよかったから大急ぎで両親に見せたんだった
今まで作ったどれよりも上手に出来たゴーレムは、辛口の両親からも満点をもらった
その事が嬉しくて嬉しくて、それからいつもそのゴーレムと一緒にいた
完全に思い出した瞬間、目の前にその光景が現れた
手足の長さから目鼻の僅かな窪みまできれいに作り込まれていて、いまの俺からみてもいい出来だと分かるゴーレム
それを大事そうに抱える小さい頃の俺
そんな俺をみて破顔する両親
とても幸せな光景、なのに何故か悲しかった
もうこの光景は見られないのだろうと分かっていたから
両親は、幼い俺を残して消えてしまった
俺の目の前で、ゴミクズのように殺された
ふと、なにかに気づいて視線を上げた
視界には幸せそうな家族
気になった俺は記憶にある景色といま見ている景色を見比べて……
"「手足の長さから目鼻の僅かな窪みまで目鼻の僅かな窪みまできれいに作り込まれていて……。」"
おかしい
俺はいま、この家族を真横から見つめている
そして、当然子供は人形の両脇を抱えている訳だ
なのに何故人形の顔か見えるのだろうか
普通は横顔が見えるのではないのか
何故目や鼻がくっきり見えるのだろうか
何故、人形はこちらを向いているのだろガランガランー
突然鳴った大きな音に驚いた俺は、跳ね起きて音のした方へ視線を向けた
どうやら客が来たようだ、まったく驚かせやがって
と言うわけでさっさと帰って欲しい、今は機嫌がすこぶる悪い
どういう風に対応するか自分でも分からないのだ
自分を驚かせた不埒ものをどうしてくれようと考えていると……
「おでこが赤いですけど、もしかして寝てました?
起こしてしまったのなら、すみません。」
どうやら俺は寝ていたらしい
そして寝起きのせいで機嫌が悪いだけだった