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33、文化祭が明日で盛り上がってます。-文化祭編 I-

「えーっと・・何のようかな 」


 ほのかを待たせまいと急いで服を着替えると体育館裏にやってきた。案の定そこにはほのか一人がいてなんだか心臓がドキドキする。

 こんなところに呼び出した限りは他の人に聞こえさせたくないような秘密の話なのだろう。少なくとも僕自身では大して思いつくことはない。唯一思いついたのは今日の僕のドレスの着こなしが変だったとか。それで僕に恥を欠かせないようにここまで呼んで指摘することにした。うん、それならありえるかも。そしてもしそういうことならしっかりとアドバイスを聞き入れたい。女子力向上は大事だからね。


「変な前置きもなんだし率直言うね。あのね・・私ね・・すばっちのことが好きなの 」


 何の用件かと思って尋ねてみれば唐突にそんな告白をされる。うん、心の整理をするのでしばらく待って欲しい。

 まず、ほのかは数ヶ月前に僕に告った。そして妙な形だったとはいえ結果として僕が振ることとなる。それからしばらくほのかは僕に対してできる限り普通に接しようとしてくれて、しかしほんの少しだがぎこちない。


 とりあえず以上がこれまでの僕たちの関係。もちろん振った振られたの関係だから多少ぎこちなくなるのは当然だ。これが1年や2年してほのかにも別の好きな人が出来れば完全に修復と考えていたのだがそれがどうしたことだろう。

 別の好きな人ができるどころか再度告白をされてしまった。この状況でほのかの性格も考慮すれば冗談ということはない。またコトと別れたわけでもない。

 うぅーん、実際のところ冷静に考えなくても状況は明白だ。ほのかは僕のことを諦めきれず再度告白をしてきた。これ以外に考えられない。というよりも僕がそう考えるのを避けてきただけかもしれない。

 別の好きな人ができればいい、僕にはどうしようもなく後はほのかの問題だ、そう安易に考えてほのかの気持ちを見てみぬフリをしてきたのだ。この前コトにほのかのことを指摘されて僕の悪が見透かされないか内心不安になっっていた。

 でも僕は紛れもなくコトが好きである。だからこそ僕はまだ言ってない言葉をほのかに告げる義務があるのだ。


「ほのか・・僕は・・ 」

「待って、聞きたくない。その言葉はまだ聞きたくない。まだ聞きたくないの 」

 勇気をもってその言葉を告げようとするがそれをほのかに遮られる。正直拍子抜けした部分もあったがほのかは必死で次の言葉を言おうとする。僕は男として次の言葉を静かに待った。


「ふぅ・・あのね私にもう一度だけチャンスが欲しいの。前にも色々すばっちに仕掛けて結局、すばるくんは神凪さんへの気持ちが強かった。でも、でも・・もう一度だけお願い。それで私をもっと知って。私のことを出来る限り多く知ってそれからもう一度すばっちが決めてください。そう、期限は文化祭終了後の後夜祭。そこですばっちの返事を聞かせて 」

 恐る恐るけれど闘志に満ち溢れた目で訴える。


 言い方は悪いかもしれないがチャンスというのは僕にもう一度仕掛けるチャンスという意味で間違いないだろう。

 僕はコトが好きでこの気持ちは変わらないと強く思う。それにほのかが仕掛けてきてコトが快く思うはずがないだろう。しかし、こんな必死に訴えるほのかを退けることなど僕にはできない。それ以前にこの申し出を断る権利も僕にはないと知っている。


「うん、後夜祭だね。分かったよ 」

「じゃあまた明日ねっ 」

 それだけ言うとほのかは正門のほうへ駆け出していく。同時にほのかのカバンにぶらさがるキーホルダーが風で揺れるのを見つけた。それはあのとき買った動物園のキーホルダーで間違いなかった。




「スバスバのクラスはなにをするんだ? 後コトちゃんのクラスも教えて欲しいぞ 」

 凪沢高校文化祭前日。ゆーりんでの今日の仕事も終え帰る前にしばし談笑しているところだった。


「もしかして芽衣ちゃん来てくれるんだっ! うわぁー超楽しみかも! 私のクラスはメイド喫茶でスバくんのクラスは劇らしいよ! 」

 コトはハイテンションでそんなことを言う。

 そういえばまったく関係ない話だが数ヶ月前、そう僕と付き合い始める辺りまでは常にハイテンションだった気がする。それがいつの間にちょっと大人しくなったのだろうか。いや、まぁ今でもたまにテンション高くなることはあるがそれも今のようなときでごく稀だ。


「ちょっと聞きたいことがあるんやけどコトちゃんってたまにテンション高くなるときあるやん? それってどっちが本当のコトちゃんなん? 」

 ちょうど僕の思っていたようなことを椎名さんが聞いてくれた。まったくもって偶然であるが、こうも被ると感動してしまう。


「つい最近まではずっとテンション高い状態でしたよ。僕も今疑問に思ってたとこなんだけど理由があったりするの? 」

「いや・・これは・・その・・ 」

 急にコトは言葉につまり心無しか顔も赤い。そして横目にこちらを見てくるのは一体なんなのか。うん、僕にはその理由と今モジモジしている理由をどうしても繋げることができない。


「ご、ご想像にお任せしますっ! 」

 たぶんこの数秒の間にコトの心の中では言うか言わないかの葛藤があったのだろう。そして一番無難な言葉を選んだ。正直、その理由を知りたかった面もあるが人それぞれ言いたくないこともある。それにテンションがどうであろうとコトはコトで変わりないのだから僕には問題ない。


「なんや、言わへんのかいな。まぁええわ。で、話戻すけど文化祭にみんなで行ってもええかなってことやねんけど。ほら午前中なら大丈夫やろ 」

 話を戻すと言ったから芽衣が来てくれるんだーって流れになると踏んでいたのにみんなが来るって!? そんな話初耳だぞ。どこに話を戻したらそんなことになるのやら。


「もちろん私はいくぞぉー! 」

「麻衣もお姉ちゃんと一緒 」

「へぇーコトちゃんのメイド喫茶は見たいし芽衣ちゃんたちが行くのならいっても良いけど。ま、まあ劇とやらもついでにいってもいいかな 」

「もちろん私はいかない 」

この場にいるメンバーのさなえさんを除く3人(芽衣、麻衣ちゃん、金井さん)が同意する。


「よーし、それやったら児子さんとさなえさん以外は全員参加やね。あっ安心してな、今宮くんと菊地さんにはちゃんと聞いといたからな 」

 ここでこの話を始める前から他の皆とは打ち合わせていたようだ。まったく来るのならなら来るで早く言っておいて欲しかった。来てくれる分にはむしろ嬉しいのだから心の準備とか、もっとしっかり練習をしとけばよかったとか。いや、もちろん今まで練習を手を抜いていたわけじゃないからね。


「まぁ一応ありがとうございます。是非楽しんでいって・・ 」

 忙しいだろうに僕たちのために時間を作ってくれるのだ。気恥ずかしいところもあるが礼を言おうとしたときふと一つの懸念が頭に浮かんできた。


「あのぉ・・みんなが僕たちのためん来てくれるのはありがたいんですが、このメイド喫茶を知ってる生徒が皆を見かけちゃったら芋づる式に僕のこともばれないでしょうか 」

 つまり、ここのメイド喫茶で働く皆が僕のために来たとなれば自然と僕自身がこのメイド喫茶と関わりがあるのではないかと疑われるのではないかということである。そうなれば後は簡単。名前がスバルで一緒であることや顔から僕がスバルちゃんだとばれるわけだ。


「まぁその辺は大丈夫やろ。皆にはあくまでもコトちゃんに会いに来てスバルちゃんとはほぼ面識がない風を装えば問題ないて 」

 なるほど、この辺りもちゃんと策を考えていたのか。確かにコトならメイド喫茶で働いていることを隠しているわけではないのでどうってことはない。なんか、知り合いなのに無視されるってのもいじめられている感じがするがこの際仕方ない。


「じゃあまた明日やな、じゃあねぇ~ 」

 こうして談笑も終え次々と帰っていく。そして、残るは僕とコトだけとなった。


「皆来てくれるんだから明日はお互い頑張らなくちゃね 」

「うん、そうだね 」

 もう明日が非常に楽しみだ。高校初めての文化祭。コトと回る文化祭。皆も来てくれる文化祭。こんなに楽しそうなことがあるだろうか。


「あ、それとちゃんと明日スバくんを見に行くからね 」

「う、うん。そうだね 」

 いや、そういえばまだ僕の女装劇のことがコトに知られていなかったのを忘れていた。なんかうまくコトには伝わっていないみたいだ。

 ゆーりんの皆と僕が関わりがあるってのも知られちゃいけないし、ほのかの件もあると考えると色々憂鬱なこともある。


 なにはともあれ明日は文化祭なのだ。めいいっぱい楽しめばいいじゃないか!!

余談ですがコトってあだ名が少しめんどくさいんですよね。というのも例えば「ゆーりんで働くスバルちゃんとは僕のことだ」って打とうとしたら変換でことがカタカナのコトになってしまう。そうすれば完全に別の意味になっちゃうんですよね。

ってマジでどうでもいい話ですね。とりあえずことがコトになってしまってるをはじめとする誤字があれば教えていただけると助かります。チェックはさらっとやっているので大分前の話でも誤字を見つけたりするんで。

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