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29、僕が膝枕で休息タイム!-文化祭編 E-

「ふぅ・・ごちそうさまでした 」

 サンドイッチをあーんされ続けること十数回。そこまで食べたはずはないのに腹は満腹になっていた。

 最後のほうになってくるとずっとあーんをされっぱなしで手が疲れてきたりとかいい加減飽きていないかなどと心配になったが本人も嫌ならやめていただろう。それにコトも自分の分は合間合間にちゃんと食べていたようなので問題はない。


「じゃあご飯も済んだから次行こうか 」

 そう言ってベンチから立ち上がろうとする僕の左袖をコトに掴まれる。


「あ、あのねご飯食べた後にすぐ動いちゃ駄目なんだよ。だから、その・・・・スバくんがよかったら横になってもいいよ 」

 何かと思いきやコトは照れくさそうにそっぽを向きながらそんなことを言う。心なしか頬も赤い。

 ちょっと待て。横になるって単にベンチで寝転がるという意味じゃないよな。このコトの恥ずかしがりっぷりとデートという状況をかんがみればつまり・・膝枕!?

 あのプニャりと柔らかそうな純白の上に頭を乗せて良いのか? 良いんです!! 何せ僕たちはカップルなんだ。愛しのコトにあーんをしてもらったかと思えば次は膝枕ってどんなご褒美タイムだろう。


「じゃあ遠慮なく 」

 僕はゆっくりと頭を下ろしていきついに僕の頭は柔らかい感触を味わう。あぁ家にあるクッションなんかよりも柔らかくてフィットしている。もちろん顔はコトとは逆方向に向けて寝ているがそれでもコトの甘くてとろけるような匂いが漂ってくる。晴天から降り注ぐ暖かい日差しが直気持ち良い。

 この上なら寝ようと思えばすぐにでも寝られそうだし寝たらいつまでも起きることはなさそうだ。一応付け足しておくと寝てる間に殺害されて永眠という意味ではないからね。


「休めそう? 」

「うん十分 」


「あのさずっと聞きにくかったけど雪前さんのことってどう思ってるの? 」

 横になってすぐコトはそんなことを尋ねてくる。どう思ってるとはどういう意味だろう。いや聞きにくかったことといってる以上友達としてどうとかそういうことを聞いてるのではないと思う。おそらくは恋愛的な意味でどう思ってるのか。


「確かにほのかにはほのかの良いところがあるけど前にも言ったとおり僕は君のことが君のことだけが好きだ。永遠に好きだよ。だからほのかのことを恋愛対象としては見ていない 」

 これは紛れもない僕の本心だから素直に何度だって言う。僕はもうコトしか見ない。コトを不安にさせてはいけない。


「それは前にも聞いてスバくんのことは信じてるよ。でもさ雪前さんのほうはどうなのかなって。ほら転校してきた日にはすぐにデマだって分かったけどスバくんと付き合ってるなんてこと言ったらしいし・・。それ以外にも二人でどこかに行ったり満更でもなかったように思えるんだよね 」

 なるほど、確かにコトの指摘は正しい。ほのかは僕のことを好きだった。それは紛れもない事実でコトと付き合うまでは猛アピールをしかけきたものだ。


「本当に雪前さんがスバくんのことを好きだったのなら雪前さんは大丈夫なのかなって思って 」

「コトが気にすることじゃないと思うよ。たとえほのかが僕のことを好きでもコトは正々堂々としたわけで何も恥じることはない。ほのかもいずれは気持ちの整理もつくと思う 」

「うん罪悪感とかはないよ。でも最近の雪前さんってどこか不自然と言うか無理してるような気がするんだよね・・・・・・ 」


 それについては同意する部分もあった。ほのかが僕たちの恋を応援しようとしてくれているのは分かるがそこには違和感があった。まだ僕のことを少なからず思っていてくれて心からは応援できていないのだろうか。僕にはどうすることもできない。


「・・まぁいいや。さぁさぁ十分休んだことだし続き見て回ろうっ! 」

 急にテンションを切り替えて立ち上がろうとする。うぅもう膝枕のサービスタイムが終わっちゃうよ。名残惜しいけどこのままずっとというわけにもいかない。またいつか機会があればやってもらおう。




「次は爬虫類コーナーだね。あそこの建物だよ。早く早く 」

 昼食休憩を終えてすぐコトに引っ張られるようにして爬虫類コーナーの建物に入る。爬虫類の特性上薄暗い建物内じゃなければ駄目らしい。


「まずはあのまだらの蛇さんね。あの子の名前はシマウマっていうの。ほらまだらだからシマウマね 」

 やはりコトの名前解説も再開する。まだらの蛇というのはシロマダラという蛇で色合いとしては黒と褐色系の色のまだらである。少なくともシマウマのような白と黒のまだらからはかけ離れている。

 それに動物の名前に他の動物の名前をつけるセンスは健在というしかない。「お父さん僕シマウマが見たい」って言った子供が蛇の前までつれてこられた悲しさを考えてやれよ!


「でこっちはわにの鶏肉。ワニって食べたら鶏肉の味がするかららしいよ 」

「そうなんだ、おいしそうだね 」

 もうコメントの仕方も分からない。流石においしそうだねってコメントは頭がおかしいか。それにしてもワニを食べる国もあるとは聞くけど鶏肉の味がするんだ。とても食べようとは思わないけど。


 さてその後も順番に僕らは回っていき午後4時ごろになってようやくすべてを見終えた。名前をつけた人のセンスは最後まで理解することができなかったがこうやってコトの説明を聞きながら見るととても面白かった。ほのかと来た時も楽しかったが今回とはそれとはまた違った楽しさがあった。


「それでは当初予定していたとおりキーホルダーを買いましょう。まったく同じってのもあれだから前スバくんがつけてたのとは違うやつにしよっか 」

 僕たちはお土産屋に入っていく。それにしても違うやつを買おうと提案してくれてよかった。あのままほのかとお揃いで買ったものをコトともお揃いで買う羽目になったら二人ともに申し訳ない。


「これなんかどうかな? 」

 キーホルダーのコーナーに行きパッと目に付いたものを手に取った。ゾウとキリンが描かれたシンプルなキーホルダーだ。僕にはキーホルダーのセンスなんて分からないがこういうのは運命的な出会いのものだと思う。それならばパッと目に付いたものがいいのではないだろうか。


「うん、ピノちゃんとヤシノキさんだね。どうせならみんないるのがいいけどそんなのないしこれでいいよ。ピノちゃんもヤシノキさんも可愛いからオッケー!! 」

 そういえばこのキリンの名前は見た目の特徴からヤシノキって名前だっけ。この名前が一番まともなやつだったように思える。

 とにかく僕の選んだキーホルダーはコトからOKをもらってそのまま会計を済ませて店の外に出た。


「僕は学校のカバンにつけることにするよ。コトもカバンにつける? 」

 そうコトに尋ねながらコトのほうを見ると先ほどのキーホルダーを眺めながら満足げに笑っている。どうやら僕の声も耳に入っていないらしい。


「コト? どうかした? 」

「えっ? あっあぁごめん。そのさ、こうやって身の回りのものがスバくんとの思い出のものに変わっていってこのまますべてのものがスバくんとの思い出の品になったらなぁって思ってて 」

 女の子らしいロマンチックなことを考えていたらしい。そのように喜んでくれたらなけなしのお金で買う価値がある。唯一つ残念なことといえば今の僕には身の回りすべてのものを買うお金などないからあくまでロマンで終了してしまうところだ。ホントごめんね。


「大丈夫だよスバくんにはそこまで期待してないから 」

 うぅっ完全に心の中を読まれてしまった。彼女に期待されてないって堂々と言われる彼氏ってどうなのかと思う。


「絶対に明日にはつけてきてよ。一生外したら駄目なんだからねっ! 絶対だよ 」

 妙に念を押してくるがそんなことぐらいは理解している。おそろいで買ったものを次の日つけていくといって忘れるなんて彼氏として一生の不覚である。今日帰ったらすぐにつける、1時間後とにちゃんとついてるか確認、ついでにその予定自体忘れちゃ駄目だからスマホの予定表に書いてアラームを鳴らそう。これで忘れるのなんて純ぐらいだ。


「じゃあ帰ろっか 」

 僕の言葉で動物園の出口へ向かう。こうして僕たちの動物園デートは幕を閉じた。


「帰るまでがデートなんだよ 」

 またもや心の中を読まれてしまった。

今年もよろしくお願いします。

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