24、ホームルームが文化祭で盛り上がってます。
一回完結させたのに続きを書いちゃって本当に申し訳ございません。忙しかったりで書く目処がつかなかったので完結にしましたがまた1週間に1話ぐらいでなら投稿できるのでしばらく続けます。
もちろん別作品でもよかったのですがせめて10万文字にはということです。もしそんな作品でも読んでいただけるのなら幸いです。
「何かやりたいのがある人はいますかー 」
一日の授業が終了しホームルームとなった。教壇に我がクラスの委員長の花沢 海人が立ちそう尋ねた。
彼は成績は学年1位、スポーツも陸上部のキャプテンで全国大会にも出場するほどのまさに文武両道のやつだ。おまけに性格も思いやりのあって、またみんなをまとめる力いわゆるリーダー力もすばらしいので満場一致で委員長となった。
さて花沢がみんなにやりたいことを尋ねたが、今こうして文化祭のクラスの出し物を決めているのだった。
「俺はやっぱ男のロマン、世界一怖いお化け屋敷がいいぜ。いやぁーあのお化け屋敷のスリルはたまんねぇからな 」
「僕はせっかくやるのならそんな単純なものよりもっと凝った劇とかのほうがいいと思うけど。ほら、少しでも凝ったほうがクラスが一致団結するから 」
今意見を述べたのは順番に純と宅哉で二人とも僕の親友だ。お化け屋敷はいかにも純らしい意見だったが、意外だったのは宅哉のほうである。一見真面目そうで生徒会にも入っている宅哉だが一致団結とかは言わないようなタイプだと思う。
僕からすれば優しさ20%、腹黒さ80%の成分でできている宅哉だからこそ何か裏がありそうで恐い。
「私も劇がいいわ。せっかくの文化祭だもんね 」
「そうだな 」
「クラスが1つになってってやつだな。なんか楽しそうだ 」
宅哉の意見にほのかが賛成すると次々と賛同する声が増えていく。もはや投票の前に決まったも同然だ。恐るべし宅哉の発言力と一致団結パワー。人間はどうしてか一致団結とかみんなで1つのことをするとかそういう言葉に相変わらず弱い。
「んじゃあ意味はないかもしれないが一応手を挙げてもらおう。まずお化け屋敷がいい人 」
「よっしゃぁー、もうお化け屋敷しかないっしょ! みんな手挙げて 」
まったく空気が読めてないというかただ単に頭が悪い純はほぼ宅哉の意見に決まってることなど分からず一人でそんなことを叫んでる。しかしそんな純も周りが誰も手を挙げず冷ややかな視線を浴びせられてることに気がついたのか
「あ、あれ・・みんな怖いのとか無理な系? 」
と直も間違った解釈をしつつシュンとなって手を下ろす。
「よしお化け屋敷が一票だけだったから自動的に劇で決まりだな。じゃあ次はどういう感じの劇にするのか、それとそれぞれの割り振りを考えていきたいと思う。劇の内容だがこれもなんか意見のあるやつはいるか 」
花沢がそう言った途端クラスは騒がしくなる。
「定番でよくね 」
「でもさ定番って他の学校でもよくやってるよな。それよりかはオリジナルの俺達だけの劇のほうが楽しそうじゃねぇか 」
「私もそれ賛成!! どうせならラブストーリーがいいわ」
「ラブストーリーかぁ。純愛ものはトキメクよね 」
「作るのならすごくいい話にしたいわ 」
個人個人が勝手に意見を出し合い、結果そのまま劇の内容はオリジナルのラブストーリーにすることにした。その後は監督が発案者ということで宅哉が、台本担当が頭がいいという理由で花沢に決まってその日のホームルームは終わった。
「ねぇスバくん、スバくんのクラスは出し物何になったの? 」
放課後、いつものごとく僕とコトはともにバイト先のメイド喫茶「ゆーりん」に向かっている。どうして男の僕がメイド喫茶でバイトをしているのかは簡単に説明するなら叔母に無理矢理働かされたとなるが現在は女装をしつつ楽しくやらせてもらっている。
「劇をやることになったよ。ラブストーリーをやるらしいけど 」
「へぇーラブストーリーかぁ・・凄く楽しそうだね 」
「コトのクラスはなにやるの? 」
「うちのクラスはその・・メイド喫茶でいつもと変わんないんだけど・・。よかったら見に来てね 」
「もちろんだよ 」
彼氏が彼女のクラスを見に行かないわけないじゃないか。それにメイド服といえど様々なタイプがあるからいつもの「ゆーりん」のメイド服と異なればまた違うコトの可愛さも引き出される。
「後1ヶ月ほどあるけど楽しみで待ちきれないよ。なんたって私達にとって初めての高校文化祭なんだからっ! 去年は客としてきたけど今年は楽しませる番だよ。気合入れて喜んでもらわなきゃね 」
その言葉通り文化祭が楽しみで仕方がないのか顔も生き生きとしていてそういう顔もまた可愛い。その後も文化祭の話で楽しく談笑しながら「ゆーりん」に向かう僕たち。
思えば数ヶ月前までは僕とコトがこんなカップル関係になれるなんて想像もできなかった。あのときは僕の心の中では片思いだった。実際にはコトも僕のことを好きだったのかもしれないが僕にはそんなこと知り得ないのでコトと付き合うなんて夢のまた夢の話だったのだ。
「あっもう着いちゃったんだ。こうやって話してるとすぐついちゃうね 」
コトと同じ感想を抱いていたことにどこか嬉しく思いつつも裏口から「ゆーりん」の休憩室に入っていく。
「やぁすばるちゃんとコトちゃん。今日も仲良くご登校かい? 」
「はんっ! 何が仲良くだ。イチャイチャしやがって。もし客に見られたらどうすんだ 」
そこには店長のさなえさんと厨房担当の今宮さんがいた。僕たちが付き合っていることを知られてから二人で来るとよくからかわれるのは難点だがこれもそのうちに飽きるだろう。それにコトが満更でもなさそうだから無理して止める必要がない。こういうのは「やめてください」と抵抗すればするほど面白がるものだ。
それにしてもさなえさんの「もし客に見られたらどうすんだ 」ってのは案外まともそうな意見だが単純にいちゃついてることに腹がたっているだけでまったく店のことなんて考えていないから要注意。
「ほらっさっさと着替えろ 」
「店長も指図ばかりじゃなくて働いてくださいよ 」
「ふふ私はまだ20分も休憩時間が残っているんだ。それに店長は指図をするものだ、覚えておけ 」
ちょっとした冗談のつもりで言った一言にガチの勝ち誇った顔と口調でそんなことを返される。店長は指図をするものだ、というのは正論ではあるがこの店長が自ら言うとブラック企業にしか聞こえない。
「じゃあ指図の通り着替えてきますので 」
コトは女性用ロッカー、僕は男性用ロッカーに分かれ用意を始める。僕のやるべきことは軽く化粧をしてメイド服を着用、最後に黒くて長いウィッグをつければ終わり。約20分ほどかかってようやく僕は正真正銘のメイドになるわけである。
ロッカーから出るとコトはとっくに仕事に出ているようで、また今宮さんも戻ったためそこにはさなえさんだけが残っていた。そして僕もさなえさんに「早くお前もいけ 」と言われる声で表へ出た。ところでさなえさんもちょうど休憩時間終わってるんじゃ、なんてのは気にしたら負けってやつかな。
「お帰りなさいませご主人様。こちらへどうぞ 」
表へ出てすぐ常連客の岩尾さんがやってきた。ピシッとしたスーツから漂うできる人な感は僕を見て緩んだ口元で台無しだ。そんな岩尾さんを見てどこか誇らしくなりつつ表情は平静を装ってテーブルまで案内する。
「ご主人様、ご注文はどういたしますか? 」
「あぁーいつものを頼むよ 」
「ゆーりん特製ランチAでございますね。かしこまりました 」
さっさと注文をとると厨房の今宮さんに伝える。
「すばるちゃん3番テーブルお絵描きお願い 」
一仕事終えたと一息つく暇もなくチーフの菊さんに次の仕事を頼まれ3番テーブルに向かう。こうして僕は今日も忙しく働いています!




