番外編2、§1芽衣がことわざで馬鹿なアピールを続 §2 初デートがプリクラで良い思い出を
§1、§2とは第1章、第2章みたいな意味です。この区切りで完全に別の話になっております。
§1 ことわざ編続き
「次、井の中の蛙大海を知らず 」
なおも僕と丹沢姉妹によることわざ談義は続いている。どんどん僕がことわざを言って芽衣や麻衣ちゃんが意味を答えていく作業。なんのためにかは決して暇つぶしというわけではなく2人の宿題のことわざについてのレポートの手伝いをしているのだ。まぁ僕にとっては暇つぶしだから間違っていなかったか。
さて、今僕が出した井の中の蛙大海を知らず。言うまでもないが意味は狭い範囲の世界でしか生きていないものはもっと広い世界を知らないみたいな感じ。その意味から実用性は高く様々な場面で耳にすることわざだ。
今度はどんな珍解答を出してくれるのかと、もはや正しい答えを出さない前提で待つ。もっともレポートとしてはそちらのほうがよいのだが。
「かわずってなに? スバスバ 」
「なんだ麻衣、そんなこともわからないのか。古典の授業でやったばっかじゃん。交ふっていう四段活用の動詞に打ち消しのずがついて交はずだよ。これでも古典は得意分野だからね甘く見ないで欲しいよスバスバ! 」
「いやカエルのことだから 」
「ぬ、ぬぁんだと!? 」
ここまでは予想通り。逆に答えられては驚きのあまり土下座をして「ははぁー芽衣様」とか叫んでいたかもしれない。
それと確かに芽衣は珍しく古典はできるようだが言葉の文脈的に考えてもここに動詞がきて井の中の交はず大海を知らずとかおかしいでしょ。
「それで意味は? 」
「んんっとねぇ・・・・・・分かった! ずばり井戸の中では大会を開催してくれない、だね。いやぁ井戸の外の川辺とかでは大会が開催されてるんだねぇ。どんなのかな? ジャンプ大会とか、徒競走とか? 」
「麻衣、今度見に行きたい! 」
「おし分かった。今度の連休でもいくか 」
「おぉ! 」
まだ芽衣たちをおとしめるトラップが潜んでいたとは。こいつら大海を大会だと思ってやがる。
それにしてもカエルの大会か。もし本当にやっていれば面白そうだなぁ。運よく大会が開催されてたら川辺に大量のカエルがいて走り回ってるのか?
「芽衣、たいかいってその大会じゃなくて大きな海と書いて大海。OK? 」
「わ、分かってたよ。麻衣をからかってただけだもん 」
今更意地を張らなくても。もう芽衣たちが馬鹿なことは分かっているから。
「そんで意味は? 」
全部の単語の意味が明らかになったところで再度聞きなおす。ここまで言っちゃえば間違いの解答を出すほうが難しいと思うけど。
「うーん・・・・・・うーん・・・・・・・分かった!! 豪邸育ちのお嬢様やお坊ちゃまは悪の世界を知らないでしょ 」
そうですなぁー、ある意味あってるかもだけど具体化すぎるというかその具体すらどこか違うというか。まぁ、これでもよく考えたほうなのかな。
次の問題を出そうとことわざを考えていると休憩室の時計が鳴り時刻は18時。こうやって話していると時間の経つのも早い。さて、休憩時間も終わりなのでがんばるぞ。
§2 デートはショッピングセンター
「ねぇ似合うかなぁ? ちょっと派手かも 」
コトは売り物のワンピースを着て試着室から出てきた。そのワンピースは真っ赤で裾がひざよりも上のふともの露出の多いもの。
コトの言うとおり派手ではあるがどこか大人の印象。普段の差に服だけでこれほど印象が変わるのかと驚きつつ可愛さに見とれる。こういうコトも好きだな。
「似合うよ。大人の印象でそういうコトもいいと思うよ 」
「そ、そう? むっ、ふとももばっか見てない? 」
うっ、コトの洞察力は鋭い。確かに見ては駄目、見ては駄目と思っていてもどうしても目がいく。
「くすっ・・許してあげる、彼氏ですから。でも他の女の子は駄目なんだからね 」
小さく笑ってそういう。こんなこと言われると改めてあぁ付き合ってるんだと実感できて幸せになる。うん、これでよかったんだ。
僕たちは今初デートの真っ最中。場所はショッピングセンターでコトの服選びにつきあってるところだ。
「じゃあこれを買ってくるね 」
「あ、僕が出すよ 」
コトはもう一度試着室に入りそのワンピースを脱いだ。そしてそれを持って一人でレジに並ぼうとするのを制し、男らしく僕が払おうとする。いくらお金がないからってこれぐらいは買うべきだ。
「うーんそれじゃあ初デート記念ってことで買ってもらおうかな。でも無理しちゃだめだよ、スバくん 」
「分かった。買ってくるよ 」
「次はゲーセン行きますか。ここの5階だよね 」
「うん 」
服をしっかり買って5階に行こうとする。歩くと時々浴びせられる視線が心地よくどこか誇らしい。僕もコトと付き合う前はリア充死ねとかしょっちゅう思っていたがまさか僕がリア充になる日が来ようとは。リア充生きろ!
「うわぁ! あれ可愛い 」
ゲーセンについて早速コトがはしゃいで指をさす。その先はUFOキャッチャーのケースに入ったクマのぬいぐるみ。
ここは僕が取ってあげてさりげなく渡すのが鉄板だけどお金ないしなぁ。仕方ない。100円で絶対に取ってやろう。これにはコトの好感度とお金がかかっているんだから失敗は許されないぞ。
無言で100円硬貨を指定の場所に投入。狙いを1番取りやすそうな真ん中のに決めて横に動くレバーを動かす。続いて前方へ動くレバー。震える手で慎重に動かす。
よし、これで。レバーはクマのぬいぐるみにむかってゆっくりと降下してゆく。開いていたアームが閉じて今度は上昇。クマを捕らえたアームは不安定ながらも移動してドキドキしながら行方を見守るしかない。
『ボトン』
見事にクマは指定の落とす位置に落ちて成功した。
よっしゃー! 心の中でUFOキャッチャーで初めて成功したことに感激しつつクマのぬいぐるみを取り出す。いやぁ人間はいざというときに底力を見せるものだよ。
「はい、これ 」
「ありがとう。初デート記念が二つになっちゃったね。スバくんにも何か・・・・・・そうだプリクラとろうよ! 」
ということでプリクラコーナー。ここの区域って完全に女子の領域って感じで入ったことすらないな。とにかくこれで携帯とかに貼るとカップルっぽくて良いのでこっそり提案しようと狙っていたがコトから提案されるなんて。
さっそく小さな機械の中に入る。
「設定は私がするね。友達と撮ったことあるから分かってるし 」
「よろしく 」
経験者に設定を任して僕は横からその様子を眺める。パッと見ている限りハートの枠だったりで可愛いというかカップルっぽいのにしてくれている気がする。胸を躍らせてまっているとほんの数十秒もしない間に設定は完了したようだ。
「ほら、もっとこっち 」
並んで立ってシャッターを切られるのを待っているとコトが肩と僕の二の腕を引っ付けて、僕の肩にちょうどコトのほっぺ。ほんのりコトの髪のにおいが漂う。近い、近い!
『パシャリ』
そうやって顔を赤くしているうちにシャッターが切られた。
後日談というのでもないがそのプリクラはしっかりと生徒手帳に貼った。




