22、僕の思考がなんで間違っている?ーランキング決戦 後編ー
1位になるための作戦、咄嗟に考えろといわれてもまったく思いつかない。もともと男の僕に姉さんみたいなエロメイドはできないし(できたとしてもやる気はない)今日から新たなキャラ、例えばさなえさんの猫メイドをパクって犬メイドとかも今更すぎて返って今までの客をうしないそうだ。
いっそのことワイロを送るとか? 姉さんみたいに投票を入れてくれたらなんらかしらのサービス券をつけるとか? いやいや、それは僕のプライドだったり人格に関わってくるので却下だ。
「うーん 」
働くわけでもなく策を練るために考えているとなかなか名案が浮かばずうなり声が出る。そのときに不意に後ろから肩を叩かれた。
「なにしてるのすば・・ちゃん。変な声でてたけど大丈夫? 」
振り返るとコトだった。店の表なのですばくんと呼ぶことはできず、すばちゃんは新鮮だった。すばくん以外の呼び方で呼ばれたのは何年ぶりだろう。
ってそんな感動に浸っている場合じゃなくって・・・・・・。
「あのランキングのことは聞いた? 1位を狙いたいんだけど姉さんやさなえさんが手ごわくて何かいい名案がないか考えていたところなんだけど 」
「そんなの考える前に真面目に働く! すば・・ちゃんは真面目にはたらいてこそすば・・ちゃんなんだから。真面目に働いていたらすば・・ちゃんならきっと1位を取れるから! 」
いちいち「すば」と「ちゃん」で間が開くのは気になるがそれでもコトの言うとおりだ。あれこれ考えて下手に動くよりかはいつも通りしっかりと。
「いやいや甘いよコトちゃん。何も特別なことをしないいつも通りで1位を取れるほど簡単じゃないよ。あのいつも1位の店長に加えて今回はあのエロエロお姉さんがいるんだから。確かにスバスバは何もしなくても可愛いけどもう一押しほしいなぁ 」
コトのおかげで邪念は払えていつも通りしようと決めたところに芽衣からの反撃。あろうことか僕を説得したはずのコトが言いくるめられたようでうんうん頷きながら必死に考え始めた。
「具体的にはどんなのかなぁ? 私まだメイド喫茶についてそこまでだし・・・・・・ 」
「そうだねぇ・・今のスバスバにエロを求めてもだから・・・・・・いっそのことワイロとか? 」
「なるほどねぇ 」
コトはメイドの先輩である芽衣に助言を求めたのだがそれで出てきたのがまさかの僕と同じ思考。さらにコトは信じきっちゃてる。少しは不信感を抱いてもいいんじゃないの? うーん、メイド喫茶にはまだな暦っていないから許容範囲にするか。
「却下で他にはないのかな? 」
笑顔で次の策を尋ねる。
「そうだね・・・・・・視点を変えて脅迫するとか。『おい、こらランキング入れないとぶっつぶすぞ。こう見えても喧嘩は強いんだからな』みたいに。実際男で強いでしょ。見せしめに一人実際にやるとか 」
おいおい、どこのチンピラ? メイドを名乗ってる分、性質が悪いぞ。脅迫だけじゃなくて実際に一人やっちゃうのは警察くるかも。その前に脅迫だけでも来るか。ってゆーか喧嘩やったら100%負ける自信しかない。
「まったくすばるちゃんは本当に馬鹿だわ。馬鹿でしかないわ。大事なことに気づいていないのだから。こうは思わなかったの? お姉さんが1位になれば家計は問題ないと。あっ別に芽衣ちゃんとかコトちゃんは馬鹿とは思ってないよ。もちろん気づいていて言わなかっただけだよね 」
自分から策を考えようと言っておいて芽衣のネタが切れてきた頃ちょうどお嬢様の相手をしてきた金井さんが僕に喧嘩でも売るかのようにそう言う。
こればっかりはいつもの金井さんで僕だけへの罵倒だが金井さんの言うことはもっともだ。どうして僕が1位になろうと姉さんに勝とうとしていたのだろう。家族の姉さんが勝てば万事解決だ。
「その礼言うのおかしいけどありがとう 」
「あっそ。愚民に礼を言われても嬉しくないわ 」
「結果発表! 」
「どんどんパフパフ 」
1週間が過ぎてついに開票作業に移る。これでこの1週間の姉さんの努力がすべて現れるのだ。投票箱は開かれまず1票目。ちなみに開票係は僕。
「地獄の帝王ハドリアヌス 」
「誰だよ!! 」
まじで誰? 客がふざけて書いたのか? 中にはそんなやつがいても不思議ではないが1票目からこんなのがくるなんて運が悪いな。気を取り直して2票目とさらに紙に手を伸ばそうとすると。
「さすがだね、お姉さん 」
ふと僕のすぐ右側、性格には芽衣のほうから聞こえてきた。えーっとどういうことかな?
「あ、知らなかった? 私のここでの名前は地獄の帝王ハドリアヌスだよ 」
なに、そのどっかのラスボスみたいな名前。いくら緊急参戦したからといってもう少しまともな名前にできなかったのか? 好感度下がるよ。
「つ、次。さなえちゃん 」
「当然だな 」
「次、僕 」
これ以降もつつがなく開票作業は進行されていく。そして最後の一票。現在奇跡的にも姉さんとさなえさんが同票。僕は2人に16票差で3位が確定している。
「じゃあ最後の1票あけます。えーっと・・・・・・地獄の帝王ハドリアヌス! ってことで姉さんが1位です。パチパチパチ 」
『パチパチパチパチ』
「いやーさすがやわ。さすがすばるちゃんのお姉さんってとこやなぁ 」
「おぉスバスバのお姉さんすごい 」
1票の僅差戦を制したのは姉さんだった。まさか飛び入り参戦が1発で1位を取るなんて。恐るべしエロパワー。
他のみんなもその結果にひがむことなく拍手を送る。否、一人だけ拍手もせずにギシギシと歯軋りをするものがいる。
もちろんさなえさん。確かに1票差は悔しいかもしれないがそこは店長らしく祝福してあげようよ。あっこの店長に店長らしさを求めるのは間違ってたっけ。僕としたことが、ついつい忘れちゃう。テヘペロ。
「よく聞け、これは店長からのお言葉だ 」
おっもう復活したのかな? さなえさんが拍手をも制して大声でそう言う。ここで姉さんをちょっとでも褒められればかっこいいのだが。
「こいつはこの地獄の帝王ハドリアヌスは知ってのとおり面接も無しでいきなり入ってきた不届きものだ。せっかく1位になったところ私としても心苦しいがちゃんと雇われていないものに給料を渡すことはできない。よって2位の私こそが給料アップの資格を譲り受けた。異論はないな 」
いやいや、異論ありまくりです。雇うときはあんなにも無責任だったのに己の無責任さにつけ込んで給料は払えないってことにするなんて。
今回のさなえさんの反論自体はものすごく正当だがさなえさんという人間が間違っている。もう店長やめろよ、本気でそう思うほどだった。
だがここにいる全員で反論仕返せばいかにさなえさんといえど引くしかないだろう。
「あの菊さん。雇おうとしたのはさなえさんですし今更それを駄目なんて駄目ですよね 」
まずは1番まともそうな菊さんから。
「あのねすばるちゃん。世の中にはどんなに間違っていると思っても黙っておかなくちゃいけないときがあるのよ。そうやって歯向かうものはリストラにあう。これが社会の実態よ 」
えーー、まさかのここで社会の実態を突きつけられちゃったよ。しかもみんなうんうんって頷いちゃってるし。麻衣ちゃんとかとりあえずお姉ちゃんに合わせておこうノリで頷いてるだけだよね。
くっ次は当の本人の姉さんに。
「姉さんはやっぱ給料欲しいよね 」
「うーん、もともと明日には帰る予定でまともに働けなかったし店長がああいう風に言うのなら諦めるわ。そんなことより一杯どうっすか店長。もちろんおごってくださいよ 」
「おぉっし。今から飲み会だ。高校生以外は全員参加だ 」
「いいっすね飲み会 」
「行きましょうか 」
ここにいる全員が僕に賛同してくれることはなくいつしか話は飲み会になる。
あっれれー姉さんってこんなにもアッサリ引いちゃうの? 無理矢理ランキングに参加してエロまでしたのに?
結局高校生は帰り大学生以上は飲み会へと行った。




