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~4~

あけましておめでとうございます

「はっはっは!僕たち暁に任せておけば大丈夫だよ」


1人のチャラそうな男がラヴィとフォルテの2人に声をかけてきたのである。


今は国からの依頼でカルトの森へワイバーンを捕獲に行く最中なのだ。

今回、ダグラス達『碧の旅人』が荷物持ちとして随行していくパーティが『暁の塔』声をかけてきた金髪の男がリーダーを勤める貴族達の次男や三男が中心であるAランクパーティと『深紅の象徴』と名乗る全身、深紅の鎧をまとったパーティである。


「いつもながらウザいねぇ、この男は」


「うん、顔は良いけど頭悪そう」


そんなフォルテとラヴィの言葉にも気にする様子もなく声をかけてくる間を全身を深紅に纏った鎧が割り込むように前進していくと振りむく。


「貴様ら!我らの邪魔だけはするな」


その言葉を発すると、そのまま集合場所である協会の正面へと進んで行ったのでした。


「さて、俺らも行くぞ、みんな」


「だな」


「まってよ~ダグ」


「私を置いていくつもりなのかい?」


『碧の旅人』のメンバーも歩いて行き、その軽口を叩いていた男も首ねっこを他のメンバーに掴まれると引きずられるようにと歩きだし、支部長であるロイの説明を受け荷物を馬車に積み込む。


『暁の塔』は全員で30名ほどのパーティで、その中でも精鋭を集め8人ほどで今回は行動するようである。

『深紅の象徴』は全員で10人ほどで今回は5名が参加のようだ。


「おやおや、深紅の方々は、ほとんど顔も知らないし謎ばっかりのメンバーだけど5人だけですかい?」


フォルテがリーダーである人に声をかける。


「フォルテか、他のメンバーは用があってな我々だけでは不安だと?」


「いえね、ウィルフィ様の強さは存じてはおりますが、あちらさんは納得されてるのかと」


低い声の男と思われる細身の全身鎧を纏った者が『深紅の象徴』のリーダー、ウルフィである。


「あぁ、今回は、あいつらが8人、こちらが5人で良いだろうと話はつけてある」


「そうですかい」


元々、狐族のフォルテはウルフィにパーティに入らないかと、ずっと言われていたこともあり多少は会話をする仲なのでありました。


「それより、お前らは大丈夫なのか?我らと奴らの荷物持ちとは」


「あぁ、うちのリーダーはプライドなんてものが全くもってないのだよねぇ」


「未だに、お前が我らよりも、あちらを取ったのが理解できんがな」


「あたしゃ面白い方が良いさね生きるときも死ぬときも」


「そうか」


会話は終わると荷物をチェックしダグラスに報告へと向かう。


「ダグ、あちらさんの荷物は協会規格の箱が10だとさ」


「ありがとうフォルテ」


あっちではラヴィが『暁の塔』の副長であるランドルフと話しているようだ。


「さっきは、うちのリーダーがすまなかったねラヴィ」


「うぅん、別に良いけど」


ランドルフは、この小さな兎族のラヴィを本当に可愛がってくれているが、それは先の戦争で体の弱かった妹が療養していた屋敷が襲撃され無残に殺されてしまったことによるものが大きいようだ。

彼の妹の面影があったラヴィを妹と間違えたことから仲良くなったのだが、この青年は貴族の三男で何とか一人で身を立てるために、このパーティに入ってから頭角を現し今では副長をしている。


「では、我々の荷物はこれだけだ」


「分かったよランドルフ」


荷物の説明が終わるとラヴィはダグラスの元へと向かい先に2つのパーティは先行して出ていき残された荷物を積み込むことと運ぶことがダグラス達の仕事である。


「よしと、これだけだな?」


「おう」


「じゃ、俺達も行くぞ」


スレイが、ほとんどの荷物を軽々と積み込んでしまうと荷物の隙間へとラヴィは乗り込み後ろではフォルテがヒジを馬車の持ち手へとつけながら煙管で煙草をふかしている。


そして彼らを追いかけてダグラスが運転する馬車で彼らを追いかけるのであった。


□ □ □


バキッ


フォルテが魔法で造り出した水球が植物の魔物に当たり枝を折る。


「ふぅ、面倒だねぇ馬車にからみつこうとするのがウヨウヨ居るよ」


旅人を枝にからみとり精を吸い取る魔物が馬車を止めようと近づいてくるのをフォルテが鬱陶しそうに払いのけていく。


「ラヴィあんたも働きな!」


「だって私、近接攻撃しか出来ないもーん」


「風の魔法使えば良いだろうに」


「えーーー魔法疲れるもん」


「まったくアンタって子は」


愚痴をこぼしながら悪態をつきながらも指先で水球を造り出すと飛ばしていく。

フォルテはダグラスと同じ17歳ではあるが産まれたときから水の精霊に愛されて産まれ呼吸を吸うように水を自在に操る水属性の使い手でした。


ラヴィは風を操る使い手ですが遠距離の魔法を不得手とし近接戦で使うダガーの刃を自在に伸ばしたり自分に風を纏わせる魔法が得意なのである。


スレイの土魔法は直接地面に触れないと使えないしダグラスの電撃も相手に触れることで力を発揮する。

それでも短弓を使うダグラスがスレイと馬車の運転を変わり、さっきから弓をいってはいるが効果はあまりないようだ。


「やっぱり私が居なくちゃいけないんだねぇ」


呆れた風に悪態をつくが、それも思っていることの裏返しだってことは、みんな知っているから笑っている。


「一体なんだって言うんだい!」


「別に~」


いつもからかわれているお返しなのかラヴィはニヤニヤとして嬉しそうにフォルテを見ていると鼻を鳴らしながら少し顔を染めフォルテは指先で水球を造りだしている。


その後、森を抜けると草原が現れてくると野営の準備をしている2つのパーティの姿が見えてきた。


「スレイ、ありがとう苦手なこと任せちゃって」


「まぁ、こういうときは、しょうがないさ」


スレイは体から何か出ているのか周りの動物などを威嚇してしまうようで馬車の操縦などは馬を緊張させてしまって上手くいかないのだ。


「よっと、お前らも疲れただろ」


馬をねぎらって水をなどを与え馬と荷車の連結部分を外してやると解放されたことから彼らから力が抜けていくのを感じる。


「さてと野営と警護も僕らの仕事だからね僕とスレイは暁さんの方で夜警するから、そっちは頼んだよ」


「うん」


「あいよっ」


ダグラスは自分の簡単な装備を確認すると必要な分だけ荷物をおろしながら準備を始め、スレイは彼女達の方の準備を手伝う。

男同士なので雨さえ降らなきゃ野宿だがラヴィとフォルテには簡素でもテントを張ってやりたいという気持ちをスレイは汲んでくれているしスレイは元々、旅から旅へのハンターだったので野宿のほうが合っていると以前言っていたのをダグは知っている。


「あれ?ラヴィちゃんとフォルテちゃんは?」


「すいません今日は、こっちは僕らなんです」


「なんだとぉぉぉ!」


悲しそうな顔をする暁のリーダーをズルズルとランドルフは一礼すると引きずって行く。

彼らは、いつも、こんな感じだが騎士団とも交流があるせいか指揮も高く装備も一流の物を揃えているし連携も取れていることから察するにリーダーとしての器はあるんだろうなと思っている。


「さてとっ準備はOK」


「悪いな一人で準備させて」


「準備って言ったって椅子と火の用意ぐらいなんさスレイ」


夕暮れが草原を照らし真っ赤に燃えるような夕日がダグラス達を包み込んで絵のように綺麗な風景が、そこにはあるのでした。


□ □ □


<どうした最近、元気がないが>


「うぅん、何でもないよ、ばろん」


<あの人間が恋しいのか?>


「そんなことないけど久しぶりに、ばろん以外の人と話して一緒に過ごしたから>


強がっていても、まだまだナターシャは子供なのである。


「また来てくれるかな?って」


<我はどちらでも構わないが来ると言っていたな>


「そうだよね・・・」


<・・・>


バロンは、どう声をかけていいのか戸惑うと一つの提案をする。


<ナターシャが我の持つ魔法を一つ覚えたら雪がとけたら連れて行ってやっても良い>


「えっ!?本当?」


以前からバロンが思っていたことであったが身を護る手段を教えるのも良いが体を持たない彼が剣術などを教えることは敵わない。

だが簡単なことではない神と呼ばれる存在の欠片であるバロンは人間達の世界で言う上位魔法を普通に使え、その習得には人間ならば10年はかかるのだ。


<では、まずは【光の障壁】を覚えてもらおう>


「うん、頑張るわ!ばろん」


バロンが使える中で一番レベルの低い技ではあるが特性が光でなければ使うことが出来ないし何かに夢中にさせることは良いだろうと思っている。

使えなければ使えないで良いのだ、その気持ちを他に向けさせることが出来るのなら。


家の中でバロンが、それを出現させると、ほぼ透明だが魔力で創造された、ほのかに光る膜が彼の目の前に現れたのである。


「わぁ、何だか柔らかいし暖かいように感じるわ」


<魔力を感じる、それが理解の第一歩である>


触ると自分の中から何かが流れていくのをナターシャは感じると、びっくりしたように手を遠ざける。


「これがマ ホ ウ?」


<そうだ、どうだった?>


「えっとね私の中から何か出てきてジワーっと吸い取られた気がするの」


<ほう>


どうやらナターシャには魔力が開花してはいないがあるということが分かった。

いくらバロンでも、そこまでのことは分からない。

魔力を使う者であれば、その力も外から分かるのだが使えない者が魔力があるのかどうかを判断するのは神と言えども分からないし、その人間に魔法を使えるかどうかなど知ったことではないのである。


<お前には、どうやら魔力はあるようだな>


「じゃあ、私、魔法使いになれるのね!」


<それは分からないが出来なければ連れていけない>


「私がんばるから!」


バロンはナターシャに近づき胸の辺りに光が触れると僅かな僅かな魔力を少女の中に流し込み流していく。


「ばろん、くすぐったいわ」


体をくすぐられるような感覚に感じて笑い転げてしまう少女。


<魔力をコントロールすることから教えようというのに>


「あははははは、ごめんなさい、ばろん」


でも、くすぐったくってと笑ったときに出てしまった目頭の涙を拭うと自らバロンへと近づいていく。


「もう一回、もう一回、ね?ばろん」


<御意>


もう一度、ゆっくりと僅かな魔力を流していると、くすぐったいのを我慢する少女は体を震わせながら口をつむいでいる。

数分後、両の、てのひらに魔力が集まると、くすぐったいというよりもジワーっと温かくなってくる不思議な感触に目を輝かす。


「これが魔力なのね、ばろんっ」


凄いわ凄いわっと、はしゃぐナターシャからバロンは離れて、まず一人で、それが出来るようにと少女に言うとナターシャはキッチンにある椅子に座り集中する。


「んー?全然できないわ」


<時間はかかるだろうな>


それが人間にとっては、とても難しいことをバロンは知っていたが敢えて言わず見守るように宙に浮いていた。


「んーーーんーーーーっ」


一向に先ほどバロンから感じた魔力を自分の中で見つけることが出来ず、それでも一生懸命している様子に、どうにか気を紛らわせたなとバロンは思っていた。


少女が魔力を毎日集める練習をしていると何かがジワリと動くのを感じる。


(これかしら?)


良くも子供のくせに飽きぬものだと思ってはいたが、ここまで早く、それが目覚めることにバロンは驚いた。


「もうすぐよ、もう少し」


おへその下辺りで、何かがモゾモゾと動くのを感じると、バロンがしてくれたみたいに体の中を通すようにするが中々、上へと流れていってくれないことに、かんしゃくが起きそうになるが我慢したのです。


すると1週間もしないうちに徐々にではあったが魔力を動かせるようになり2週間が経つ頃には、このハードルを越えてしまったのでありました。


「やったわ!ばろん出来たの!出来たわっ」


キャッキャと嬉しそうに喜ぶ彼女を見ながら深くなる冬の日を見ながら少女と神の欠片であるバロンは過ごしていくのでした。



楽しんでいただけたら幸いです

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