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~エピローグ~

「ふぅ、やれやれ退屈だな」


誰に聞かれることもないところからリディルを見下ろしていたのは、この大陸の神であるルシルヴァであった。


彼はリディルでは悪魔と呼ばれる存在だったが、そんなのは彼らが決めたもので自分が決めたわけではない。


ふと目を伸ばした先には幼い少女が必死の姿で数人の男達から逃げているのが目に止まったので暇つぶしに、その一部始終を眺めていたのである。


「人間とは愚者だが、あいつらの思考は善と悪が入り乱れ善の中に悪、悪の中に善が滞在している愚かだが面白い生き物だな」


どうやら少女を追う男は奴隷商の下っ端らしく高く売れそうな戦争孤児などを見つけては連れ去っているようである。


「我には関係ないがアレは面白い色をしているな」


ルシルヴァが泣きながら怯える顔で必死に逃げる少女を見ていると彼女からは光が見える。


その光は、いつの時代も世界に数人しか存在しないと言われる稀な存在、ルシルヴァを楽しませてくれる存在であった。


「このままではアレは死ぬな」


見たところ、かなりの出血をしている様子、このまま連れられてったとしても粗悪な環境に放り込まれれば死ぬしかないのである。


「はぁ、やれやれ我が介在したくはないが、せっかく楽しませてくれるかもしれない物を手放すのはおしいな」


ルシルヴァは人差し指を顔の目の前に立てると何やら唱えだし小さな光の粒が目の前に現れる。


「あやつを見守り助けてやれ過剰な干渉は避けろ行けっ」


すると地上に光の粒が降りていくのだった。


それは小さな小さな神の化身ルシルヴァの分身のようなもので形があって形がないもの普通の者には見えないのである。


「見えない物に守られるか、さてアレの行く末でも見ているか」


彼にとっては一瞬の出来事なのかもしれない。


それでも、たまにしかない娯楽のようなものである。


嫌になったとき大陸と共に自らが滅べば良いのだ変わりなんて、そのうち産まれるのだ。


そして視線を、ゆっくりと降ろすと無言のまま見続けている神の姿があった。


□ □ □ □


「きゃあっ」


「うへへへ待て待て~お嬢ちゃん」


3流の役者のような口調で面白おかしく少女を追い回す男、彼にとっては金鶴である少女は生きるために必要なこと、それに趣味でもあったようで。


(どうして、あの人は私を捕まえようとするの?)


意味も分からず連れていかれそうになったところを逃げ出した少女は天涯孤独な身の上であった。


リディルでは数十年という長い間に大陸の覇権争いにより戦争が起こっており彼女の両親も、それに巻き込まれて死んだ。


それからは他に身よりがなくなった少年や少女達は自然と集まり、その日暮らしの日々が続いていたのである。


その中で、たまに、あんな男に連れ去られて行く子供達が居たのだった。


少女は目に涙を溜め必死に逃げ回って荒廃した路地裏から森へと入ろうとしたときに、とうとう捕まってしまったのである。


バシンッ


男が少女を掌で叩きつける音が森に響き渡る。


「げへへ俺を手こずらせるんじゃねぇよ、これからお前は売られるんダゾ楽しみだろう?」


男は少女を叩き続けながら下卑た笑みを浮かべている楽しくてしょうがないという様子である。


「痛いっ痛いっ」


少女は何故、自分が叩かれているのか売られるのか理解出来ていなかった。


「あーーーあんまりやって死なれると金にならねぇからな」


顔をアザだらけにして腫れた顔で気絶した少女を麻袋に入れ肩に担ぐと男は奴隷商の元へと向かうのでした。


ドンッ


空から何かが歩く男の後ろに落ちるような音がし男が振り向いたが、そこは何もない森が広がっていた。


「何だ脅かしやがって」


ドンッ


再び音がし男が振り向くと自分の右足が空間ごと消えているかのようになくなっていた。


「・・・いでぇぇぇぇ俺の右足ガァアァァアア」


男は少女が入った麻袋を地面に落とすと転げ回るように、のたうちまわる。


「血がぁぁ」


男の手には真っ赤な血で染まる。


「誰だぁぁぁ誰だぁぁぁ」


ドンッ


次の音がすると男の体は大きくエグられバタリと倒れたのである。


そして何もないはずなのに少女が入った麻袋は空中に浮くと、そのまま移動を始めた少女が目を覚ましたのは、それから数刻の時間が経ったときでした。


少女が目を覚ますと、まだ夏の暑さが残る明るい光が木々の隙間から射しこむ森の中で自分が怖い男に追いかけられていたことを思いだしガタガタと震える。


「私っ・・私・・・どうして」


周りを見ると男の姿はないが自分が何処に居るのかすら分からない。


<大丈夫だ>


突如、何者かの声がすると目の前には少女の拳ほどの光が見える。


「誰なの?」


<我が見えるのか?>


ぼんやりと光る球体を彼女は見つめながら頷いた。


<ふむ、我が姿が見え声が聞こえるとなると>


光は宙に浮かんだまま時間が経って行き辺りは森の音、鳥の声以外は聴こえない静寂に包まれ少女は不思議な光を見つめていた。


<我が名はバロン、汝を守る者なり>


長い間、静寂が包まれると声が再び発せられた。


「ばろん・・・・さん?」


<あぁ、何か求める物はあるか?>


すると少女の腹からキュウウウウという音がする。


「お腹すいた」


彼女は食べる物も満足になく体はやせ細り、放っておいても死にそうな体になっていたのです。


ボトリッ


目の前に死んだ鳥が一羽落ちてきた。


<これでいいか?>


「このままじゃ食べれないよ火がないし、それに・・・」


孤児たちの中には年長の者がいて彼らは食べ物を盗んだり体を売ったりして稼いだ金で、みんな支えながら生きて来て彼女だって料理の一つぐらいは出来たのだが、そのままでは食べれないことも知っていた。


ボウッ


火が空間に産まれる。


「マホウ・・・」


<お前らは、そう呼ぶな>


その火で鳥を焼くと、よほど腹が減っていたのか、むしゃぶりつくように食べる少女、神の分身と少女の不思議な共同生活が始まったのである。





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