7.
ホランドルは荷車を引いてバイキナルの城……ではなく、ジャムピエールの城へ向かった。ジェイムスは、ホランドルにローレパンネルの姿を見かけたら眠らせて連れてくるように言ったのである。
「ジャムピエール様、ローレパンネル様をお連れしましたよ」
「おお、よくやってくれたね。ありがとう!」
ジェイムスは、商人であるホランドルをあえて近付かせることで、ローレパンネルは危害を加えないと思い込ませて、警戒を解いたところを狙おうと考えていたのだ。
「もう、無茶振りは勘弁ですよ!」
ホランドルは城を出た。それと入れ替わる形で、気を失っていたメロリーヌは目を覚ました。
「うう、ここはぁ?」
「大丈夫だ、ここはジャムピエール城だよ。ケガはどうだい?」
メロリーヌは周囲を見回した。すると、横たわっているローレパンネルの姿を見付けた。
「あ、お姉ちゃ…ウウッ!」
メロリーヌは立ち上がろうとしたが、鞭で打たれた箇所の痛みはまだ取れず、うずくまった。
「まだ痛むようだね。今日はもう休んだ方がいい」
ローレパンネルはアンパルスたちが連れて行き、メロリーヌの部屋で寝かせることになった。メロリーヌはソファーで横になったローレパンネルから片時もそばを離れなかった。被害を受けても、姉のローレパンネルに対する思いは変わらなかったのだ。
「お姉ちゃん、早く目を覚まして…」
その夜、ローレパンネルは睡眠薬の効果が切れ、目を覚ました。
「うう…ホランドルの奴、今度会ったらボコボコにしてやる…ここはバイキナル城か?いや、違うぞ。ここは、どこだ……」
ローレパンネルは周囲を見回してみると、いつもと違う光景に戸惑った。更に、ここがバイキナル城であれば絶対にないものが目に入った。
「なっ!メロリーヌ。どうしてここに……ああ、あああ…」
すぐ近くには、メロリーヌがベッドで横たわっていた。ローレパンネルは体が震えた。
「すまない、メロリーヌ。私は姉でありながら、お前に危害を加えてしまった。きっと恨んでいるだろう。もう二度と会うことはない。さらばだ!」
ローレパンネルは部屋の窓に近付き、開けようとした。
「うう~ん…ローレパンネルお姉ちゃぁん」
ローレパンネルが窓の取っ手に手をかけたその時、メロリーヌは目を覚ました。ローレパンネルはその声に反応し、動きが止まった。
「お、お姉ちゃん…どうしたの?」
「あ…ああ……」
メロリーヌはベッドから飛び起き、ローレパンネルに駆け寄った。そして、背後から思いっきり、抱き締めた。
「お姉ちゃん。行かないで!ずっとここにいて!」
「メロリーヌ……私は敵対関係に身を置いているのだ。そんな奴を入れていいのか?」
「何言ってるのよ。お姉ちゃんはここで産まれたんでしょ?だったら一緒にいてもいいじゃない!」
メロリーヌはローレパンネルから離れなかった。ローレパンネルはメロリーヌの行動に困惑した。
「お前、私がお前に何をしたか分かっているのか?私は鞭をお前に当ててしまったんだぞ。お前は自分に危害を加えた私と、一緒にいられるか?」
メロリーヌは、ローレパンネルの体の向きを変えさせた。
「私にお姉ちゃんがいて、突然いなくなったって話は、パパやお兄ちゃんたちから聞いてたの。それでね、いつも神様に、いい子でいるから、お姉ちゃんに会わせてくださいってお願いしてたの。だから、今こうして一緒にいられるのがすごく嬉しいの。もうどこにも行っちゃやだ!私のそばにいて!お姉ちゃん!」
ローレパンネルは心が揺らいだ。
「少し、考えさせてくれないかな…」
「じゃあ、私が城の中を案内させてあげる。こっち来て!」
メロリーヌは、ローレパンネルの手を引いた。
「お、おい。メロリーヌ…」
ローレパンネルは突然のことに慌てていた。メロリーヌはお構いなしにローレパンネルを部屋の外に連れ出し、あちらこちらと案内した。廊下には警備兵がうろつき、ローレパンネルの姿に警戒したが、メロリーヌが止めた。
「曲者じゃぁ!」
「だめ!私のお姉ちゃんなのよ。いじめないで!」
「ははっ!失礼しました」
城の中は閑散としていた。警備兵以外の人物に会わない。二人がいるのは、一家の居住区画である。
「誰もいないな。みんなどうしているのだ?」
「みんな仕事で忙しいのよ。ここは朝と夜か、休みの時ぐらいしかいないわ」
「そうなのか…」
そして、二人は大広間にたどり着いた。入り口は重厚なドアで閉じられている。
「じゃあ、開けてみて!」
「えっ、私がか?」
「うん。きっと、びっくりするよ」
ローレパンネルはメロリーヌの振りに戸惑いながらも、大広間のドアを開けた。すると、そこに思わぬ光景が目に飛び込んだ。
「うわっ!これは…」




