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5.

 その頃、ローレパンネルはアンパルスと最初に出会った草原の広場に来ていた。


「アンパルス…どこだ?出て来い!」


 ローレパンネルは周囲を見回し、アンパルスの姿を探した。しかし、アンパルスはジャムピエール城にいたので姿を現すことはない。


「フンッ!決闘を願い出ておいて、姿を見せぬとは腰抜けな野郎だ。まぁいい。ここで待ってるか」


 ローレパンネルは腰を下ろし、アンパルスが来るのを待った。もちろん、アンパルスが決闘を申し出たのはハフヒーホの嘘であり、いくら待ってもアンパルスは現れるはずはない。


「どうやら私に殺されることに怖気付いてるようだな…しばらく休むか」


 ローレパンネルは体を横にした。それからしばらく待っていたその時、どこからか物音がした。


“ガサッ!”

「だ、誰だ?」


 ローレパンネルは身を起こし、立ち上がって周囲を見回した。


「す、姿を現せ!正々堂々と勝負しろ!」


 すると、奥から誰かが出てきた。それを見て、ローレパンネルは我が目を疑った。


「め、メロリーヌ!」


 木々に身を潜めていたのはメロリーヌだった。メロリーヌは広場に着いた時に、寝ているローレパンネルの姿を見かけ、緊張して木の奥に隠れていた。それから様子をうかがっていたが、体が葉に触れて音を出し、ローレパンネルに気付かれたのである。


「お、お姉ちゃぁん!」

「お、おおお…どうしたのだ」


 メロリーヌはローレパンネルに抱き着いた。ローレパンネルは突然の事に動揺している。


「もうどこにも行っちゃ嫌!私のそばにいて!」

「メロリーヌ…落ち着かんか」


 こうして、メロリーヌは遂に、姉のローレパンネルに会うことができた。二人は池の前に腰を下ろしたが、ローレパンネルはメロリーヌの顔を注視した。


「本当に、お前が私の妹なのか?」

「じゃあ、一緒に見てみようよ」


 二人は、池に顔を近付け、水面に映った互いの顔を見比べた。


「ほら、そっくりでしょ?」

「確かに、目や口が似ているな…」

「ね?だから、私たち、姉妹だよねっ!」


 ローレパンネルは、メロリーヌの勢いに付いていけなかった。それを知ってか知らずか、メロリーヌはローレパンネルから離れようとはしなかった。


 それから、二人はあれやこれやと話をした。次第に互いの緊張は解れていた。


「お姉ちゃん、一緒にいようねっ!」


 ローレパンネルは、バイキナルが言い放った“ジャムピエール一家を一人残さず滅亡させる”との命令が頭の中を渦巻いていた。それには当然、目の前にいる妹のメロリーヌも含まれている。


「う、うう……」


 ローレパンネルの心が揺らぎ、うずくまった。


「お姉ちゃん、大丈夫?」

「ああ、少し目まいがしただけだ。はっ!」


 ローレパンネルは何やら殺気を感じ、立ち上がった。


「お姉ちゃん、どうしたの?」

「お前はここで待ってろ」

「ちょっと、どこ行くの?」


 ローレパンネルはそのまま走り去った。


 その頃、アンパルスはメロリーヌの捜索を続けていた。


「だめだ。全然見当たらないな。ここで見つからないってことは、かなり遠くに行ったか」


“ビシュッ!”


「ウワアッ!」


 アンパルスの目の前を何かが通過した。


「な、何だ?」


 アンパルスの視線の先には、鞭を構えたローレパンネルが立ち尽くしていた。気配を感じたローレパンネルは、アンパルスがいる方向へ走ってきたのである。しかも前に会った時とは違い、表情がさらに険しくなっている。


「ローレパンネル!お前…」

「アンパルス、今日こそ決着を付けようじゃないか」

「バカ言うな!血の繋がった者同士がなぜ争わなければならないんだ!?」

「黙れ、いつでも私との決闘を受けると言ってきたのはお前だろう?」

「俺はそんなことは絶対言わない!お前は、バイキナル家に騙されているだけだ!目を覚ませ!ローレパンネル!」

「うるさい!地獄へ落ちやがれ!」


 ローレパンネルは鞭を構えた。アンパルスはやむを得ず剣を構えた。


「命果てるまで止めないからな。覚悟しろ!」

「兄妹で殺し合いなどしたくなかったが、やむを得ん。行くぞ!」


 二人が戦闘態勢に入ったその時、両端からアンパルスを呼ぶ声が聞こえた。


「兄上!」

「兄貴!」

「ショクパネフ、カレリアス!」

「何奴!?」


 ショクパネフとカレリアスは、アンパルスの前に割って入り、ローレパンネルと向き合った。


「あなたのようなお美しい方が、鞭を構えるなど、似合いませぬよ」

「ケッ!なんでこんな時に女を落とそうとしてんだよ?オイ貴様!何者か知らんがなぁ、アンパルス兄貴に手を出す奴は、このカレリアス様が黙っちゃおけねえぜ!」


 ローレパンネルは、二人のに鼻で笑った。

「な、何がおかしいんだよ?」

「お前たちも実の妹に殺されたいか?」

「何だと?」


 二人はローレパンネルの突然の発言が理解できなかった。


「そいつが、十三年前にいなくなった、ローレパンネルだ!」

「こ、こいつがかよ!?なんでバイキナルの紋章が付いてるんだよ?」

「そういえばメロリーヌに似ているが…」


 ローレパンネルは、一息付いて話した。


「フッ、先に邪魔者を処分するか」


 ローレパンネルはショクパネフとカレリアスに鞭をちらつかせた。二人は剣を構えた。


「やめろ!二人とも。そいつは俺たちの妹だぞ」

「兄上に、ケガを負わせるわけにはいきませぬ」

「兄貴にとって危険極まりない存在は、俺たちで消す!」

「フン!二人揃って先に処分してやる!」


 ローレパンネルは鞭を二人に振り飛ばした。その勢いの良さに思わず飛び退いた。


「うわっ!な、何だ今のはよぉ!?」

「思った以上に強力な鞭。ただ者ではなさそうだ!」


 ローレパンネルは二人に鞭を振り続けた。二人はアンパルス同様、手出しできずにいた。


「くそぉ!鞭にしては強えや」

「本当にあれは鞭か?なかなか攻撃できない」


 その後もローレパンネルとの一進一退の攻防が続いた。二人はだんだんと後方に追いやられ、アンパルスに並んだ。

「三人まとめて地獄へ叩き落してやる!覚悟しろ!」


 ローレパンネルは、鞭を横に構え、一直線上に振った。


“パシィ!”


 鞭は何かに接触した。ローレパンネルは、アンパルスら三人に当たったものと思っていた。しかし、ローレパンネルがまぶたを開くと、予想しなかった光景が映っていた。


「はっ!」


 草の上に倒れる緑の服、紛れもなくメロリーヌだった。


「メロリーヌ!」


 三人はメロリーヌに駆け寄った。ローレパンネルとアンパルス、ショクパネフ、カレリアスは決闘に気を取られ、誰もメロリーヌが近付いて来たことに気付かずにいた。不幸なことに、ローレパンネルの後を追って止めに入ったメロリーヌに鞭が当たり、草の上に叩きつけられたのだ。


「大丈夫、気を失っているだけだ。ショクパネフ、急いで城へ運んでくれ!」

「承知しました!」


 ショクパネフはメロリーヌを馬に乗せ、ジャムピエールの城に急いだ。ローレパンネルは、自分が冒した事実を受け入れられずにいた。


「貴様ぁ、俺たちの妹に…メロリーヌになんてことしやがったんだ!?」

「くっ!」


 ローレパンネルは白馬に跨がり、広場を立ち去った。


「あっ!待てこの野郎!」

「止めとけ、カレリアス」

「クソッ!いくら生き別れの妹だからって、許さんからな!」

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