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1.

 ジャムピエール家の長男アンパルスは、城下の街に異常がないかを見回っていた。


「よし、今日も異常なし…と」


 アンパルスは街が平穏であることを確認し、愛馬に跨り、住まいであるジャムピエール城に戻ることにし、深い森の奥に進んだ。しかし、愛馬の息が荒く、疲れを見せていたので、途中で休むことにした。


「お前に無理させるわけにはいかんからな」

 アンパルスは、湧水がある池の近くに腰を下ろした。その瞬間、アンパルスはあることを思い出した。


(あいつは今、どこで何してるんだろう…無事でいてくれれば良いのだが…)


 今から十三年前、ジャムピエールの城からアンパルスの妹が行方不明になる事件が発生した。何者かが寝ているところを狙って侵入し、誘拐したものと考えられているが、門番や城内にいる者も被害に遭っており、誰一人ともその様子を目撃した者はおらず、未だに発見の連絡はない。生きていれば十五歳になっており、騎士の称号を得ているであろう。


(んっ?)


 アンパルスは、背後から何者かが近付いてくるのを感じた。振り向くと、そこに白馬に乗った女性騎士の姿があった。


「アンパルス…だな」

「お前は、何者だ?」


 女性騎士は顔を白布で覆っていた。手には鞭を構えている。白馬から降りると、アンパルスに数歩近付いた。


「私の名は、ローレパンネルだ」


 女性騎士は白布を外した。風になびく金髪。顔が見えた瞬間、アンパルスは驚愕した。


「ローレパンネル!?」


 アンパルスの目の前に現れたのは、十三年前に失踪した妹、ローレパンネルだった。アンパルスは、失踪した妹のローレパンネルが自分の背後から現れたことをまだ信じられずにいたが、妹との奇跡の再会に笑顔を見せた。


「お前、生きていたのか。家族みんな心配してるんだぞ。さぁ、俺が城まで案内するから付いて来なよ」


 アンパルスはローレパンネルの手を引こうとした。その時である。


“ビシュッ!”


「うわぁっ!何をする」


 ローレパンネルは手にしていた鞭を振った。アンパルスは間一髪、鞭を避けた。


「アンパルス、お前を倒す!」

「な、何を考えてるんだ…はっ!?」


 アンパルスはローレパンネルの胸元の紋章を見た。そのマークを見た瞬間、ローレパンネルが失踪してから今まで何をしてきたかを察した。


「お前、まさか…うわっ!」

「止まっていると、本当に地獄に行くことになるぞ!」


 ローレパンネルは絶え間なく鞭をアンパルスに振り続けた。アンパルスは腰に付けていた剣を差し出す間もなく、鞭をかわすことしかできなかった。


「やめるんだローレパンネル!俺とお前は血を分けた兄妹だ。こんなことが許されるとでも思ってるのか?」

「うるさい!お前は私の敵。黙って地獄に落ちろ!」


 ローレパンネルはアンパルスの言う事に耳を貸さなかった。アンパルスは剣を構え、迫ってくるローレパンネルの鞭を防御した。


“パシッ!”


「わっ!?しまった!」


 ローレパンネルの鞭はアンパルスの剣を捉え、アンパルスから払いのけた。剣は土に刺さり、アンパルスは無防備になった。このまま剣を取りに行くと背中を狙われるのは確実なので、その場から動かなかった。


「剣を取りに行かぬとは、抵抗しないのか?」

「兄妹同士で下手に血を見たくないからなぁ」

「ならこっちから攻めるだけだ。大人しく地獄へ行け!」


 ローレパンネルは鞭を高く上げ、振り下ろそうとした。するとその時、馬が駆ける足音が近付いてきた。


「アンパルスお兄ちゃぁん!」

「メロリーヌ!」


 アンパルスの元へ妹のメロリーヌが馬に乗って駆け付けた。アンパルスの愛馬がジャムピエール邸に駆け込んだので、異変を察知したメロリーヌが様子を見に来たのである。


「お兄ちゃん大丈夫?…あっ!」


 メロリーヌはアンパルスと向き合う女性騎士に戸惑っていた。ローレパンネルも、突然姿を現した少女に戸惑っていた。


「あなた…誰?」

「お、お前こそ…何者だ?いきなり現れやがって!」


 二人は互いに見合ったまま動かなかった。そこにアンパルスが口を割って入った。


「そうか、お前、こいつを知らないんだな。こいつは、俺の妹のメロリーヌだ。つまり、お前の妹でもあるんだぞ!」

「な、何…だと?」


 ローレパンネルは自分に妹がいることなど全く知らなかった。


「ここで俺を殺したら、メロリーヌはどう思うだろうなぁ」

「あ、ああ……」


 ローレパンネルは頭を抱えた。


「ローレパンネルお姉ちゃん…なの?」


 ローレパンネルは我に返り、白馬に乗り込むと、後ろを振り向かず走り去った。


「クソッ!」

「あっ、待ってぇ!」

「行くな!メロリーヌ」


 アンパルスはメロリーヌの体を押さえ、去っていくローレパンネルの後ろ姿を見続けた。


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