エピローグ
ジャムピエール家に再び平穏な日々が戻った一方で、ローレパンネルがいなくなったバイキナル家は、事態が大きく急変した。長年、バイキナル家を支援してきた富豪が突然、支援の打ち切りを告げたのである。これにより、バイキナル家は貴族としての存続が危ぶまれた。しかし、居間から支援元を探そうにも見付けられそうにない。
「これで、もう終わりだ…」
「だったら、あたしはここにいる意味はないわね。実家に帰らせてもらうわ」
それだけではない。急に外が騒がしくなり、外に出てみると、外には部下と領民たちが集まっていた。
「これは、何事だ!」
人々は全員、眉間にしわを寄せ、手には武器や農具を構えていた。長いこと、バイキナルの悪政に耐えてきた不満と、機械のように働かされていた部下の不満が一致し、暴動を起こすこととなったのだ。
「何てことだ!皆の者、こいつらを追っ払え!」
しかし、部下は全員外にいるのだから、その声に反応する者はいなかった。
「ハフヒーホ・バイキナル。お前の時代は終わりだ!かかれぇ!」
「おおーっ!」
部下と領民の連合体は一気に城内に攻め入り、瞬く間にハフヒーホとドーキンズを囲んだ。
「ちょ、ちょっと。あんまり乱暴なことしないでよ!」
「わ、分かった。降参する。わしの負けだ!」
ハフヒーホとドーキンズは部下に捕えられ、小さな無人島に流されることとなった。こうして、バイキナル家は国家統一の夢を果たすことなく、没落したのである。
「はぁ、わしはこれから、どうすれば良いのだ」
「何落ち込んでるのよ。ここであたしたちの国を作ればいいじゃない」
「ってことは、お前…」
「もう諦めたわ。ここにはあんたとあたしの二人しかいないんだもん。あんたに付いていくことに決めたわよ」
「ドーキンズ…よし、俺、頑張るぞ!」
その後、この二人がどうなったかは、これといった資料がなく不明である。
ローレパンネルがいなくなって二年後、ジャムピエール家の末娘、メロリーヌも十五歳を迎え、叙任の儀式を経て騎士としての称号を得た。あれから厳しい訓練を受け、泣き虫ではなくなっていたのだ。
「メロリーヌ。これでお前も騎士の仲間だ。兄たちと共に、平和を保つよう努めてくれ」
「はい、お父様」
メロリーヌは愛馬に跨り、城下の街の見回りを行った。メロリーヌが騎士になった頃、決闘などの大きな闘争は起こっていない。
「よしっ、今日も平和ね。帰ろうっと」
メロリーヌは城に戻る途中、愛馬が疲れを見せていたので、休憩を兼ねて湧水がある池の近くに腰を下ろした。
「そういえば、ここでお姉ちゃんと会ったんだよね…」
二年前、メロリーヌはこの場所でローレパンネルに出会った。その後、アンパルスとの決闘を辞めさせようと間に入ったが、ローレパンネルが放った鞭が自分の体に当たり、気絶した。そして、訪れた別れ…メロリーヌは目を閉じて思い出していた。
「お姉ちゃん、今どうしてるんだろう…お姉ちゃんのことを忘れなければ、いつかはお姉ちゃんに会えるんだもんね」
すると、どこからか誰かの声が聞こえた。
「やっとお前も騎士になったんだなぁ」
「えっ?誰?」
メロリーヌは周囲を見回した。しかし、姿は見えない。
「どこ?誰なの?」
「こっちだ。こっち。何だ、声でどこにいるのかも分からないようじゃ騎士として失格だぞ!」
メロリーヌは耳を澄まして声のする方向を特定した。
「あっ…!」
メロリーヌの視線の先に、一番会いたがった人物の姿が見えた。そして、勢いよく駆け込み、抱き着いた。
「お前も、この二年で成長したな」
「会いたかったよ…お姉ちゃん……」
(終わり)




