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怠惰会話

作者: 陸 海空

 高校三年生ともなると、受験の年である。


自分の将来のことを考え、目標を達成するために、全国の高校三年生は決意と落胆を同時にすることとなるかもしれない。しかし、それは嘘であろう、目標が国立であろうと私立であろうと、上位大学を狙う奴は二年生、あるいは一年生のうちから目標をたて猪突猛進しているやつもいる。まったく頭が上がらない。そんなことをまるで他人事のように発言している僕自身も今年受験生になった。ただし僕には、二年生からの目標も、ましてや上位大学を狙えるような優等生でも無い。ハッキリ言ってしまえば偏差値は四十八だ。五十にも届いていないこんな出来の脳みその出来で、上位を狙うどころか大学に進学できるかどうかもあやしいところだ。

「…ねぇ、話聞いてる?」

「……きいてるよ…。」

「ならいいけど」

面倒くさいのでつまらない嘘をついてしまった。僕の唯一の話し相手で唯一の友達とも呼べなくもない存在、東雲 明日香との会話の一端。

「ねぇ佐原君、佐原君って幽霊とか信じる方?」

「…どうだろう。時と場合によるけど、遭遇したくはないよ。どちらかっていえば苦手なほうだし」

「この学校に出るんだって…、幽霊」

……。こいつはたまに性格が悪くなるような気がする。今のは絶対確認してから会話をはじめたよな。まったく。

「ゆうれいねぇ、出るだろ、幽霊ぐらい、この学校歴史ある分老朽化してるし、そういう噂じみた話の一つや二つでても、別に驚かない」

……。返答がない。なんだろう、すごく睨まれている。いつからにらまれているんだ僕は。

「なんでもその幽霊はね、子供の姿で校舎を徘徊してるんだって。それでね、ひとりでその子と会うと、クイズを出されるんだって」

……。はぁ? 何を言っているんだこいつ。仮にも学年トップの成績を誇る才女がそんなこと言うなよ…、と、一年前の僕だったら言ったかもしれない。

「どんなクイズを出されるんだ?」

「…興味持った?」

「持った」

「ふふ、じゃあしょうがないなぁ、教えてあげる。それはね…」


放課後


「で、どうだった、さっきの怪談、佐原君的には」

僕の顔を覗き込むように佐原は尋ねて来た。

「お前、いつもこんな時間まで残ってんのか?」

「いや、そんなことはないよ。今日は佐原君との話が盛り上がったから」

その盛り上がりのせいでこちらは疲れ切っている。

「それはともかく、興味深かった。クイズを出す子供の幽霊、世の中には変なゆうれいもいるんだな」

「佐原君に変呼ばわりされる幽霊も可哀想だけどね」

こいつは僕のことが嫌いなのだろうか。それならそれで関わらなければいいのに、こいつも変人の分類に入ると思う。放課後の学校というものもいいものだとおもった。沈んでいく夕日に照らされながら下校、しんみりする。なにより生徒がほとんど居ないことが一番良いことだ。

「というかさっきの話は本当なのか?胡散臭すぎるぞ。」

少し溜息をつきながら僕はさっき佐原から聞いた話をした。

「疑いたい気持ちは分からないでもないけど、そうらしいよ。」

「…、あのさ、何で幽霊が二択問題を出すんだよ。」


ぼくがこいつから聞いた話はこうだった。


学校の放課後、正確に言えば誰も居なくなったときにその幽霊は現れるのだそうだ。本校舎の三階、渡り廊下に向かう。渡り廊下の中央まできたら立ち止まり、何でも良いから願い事を地べたに書く、そして、

「逢魔ヶ時の夕刻に、一人禱りしこの者に、紀様の鏡に反映を」と唱える。そのあとにお河童頭の女の子が目の前に現れるのだそうだ。その女の子から

「君は好きなのは白、それとも黒?」と聞かれる。


ぼくが聞いたのはここまで。

くだらないとまではいわないが実に胡散臭い。

「そんなこと私に聞かれても知らないわよ。検証してみれば?」

「めんどくさい。」

食い気味でいってやった

「言うと思った。」

「お前こそ気にならないのかよ、そういうの好きだったよな、たしか。」

佐原はオカルト研究会に所属している。そういう話とか現象が盲目的に好きだ。かくいう僕も所属しているのだが一年間部室に行ってない。もはや未だ退部扱いされてないのが不思議なくらいだ。

「検証しようがないのよ、うちの学校何故か五時以降は校門から準備室に鍵掛けて廊下はシャッター下ろしちゃうから。」

「……。」

知らなかった。普通そこまでやるか?いくら警備に徹底しているといえど、そんなの忘れ物も取りに返れないじゃないか。全く変というより異常で異質な学校だ。

…。

あれ?おかしくないか?

さっきした似非怪談の検証条件、実行条件は放課後に行うことだ。

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