物語の「場所移動中こいつら何してんの?」問題に切り込んでみた
タケシは街を歩いていた。
一見すると平凡な青年だが、彼はある殺し屋を追っていた。
そんな彼の前に、同世代の男が現れる。長めの髪を、茶に染めている。
「よぉ、タケシ」
「……ヒデユキか」
茶髪男はヒデユキという名前だった。
「お前が来たってことは……」
「ああ、殺し屋“火炎竜”の情報を掴んだ」
「本当か! お、教えてくれ!」
「ここじゃまずい。どこか店に入ろう」
「分かった」
カフェに入った二人。
タケシがコーヒーを飲みながら問う。
「で、火炎竜は?」
「奴は今、日本にはいない」
「……!」
――場所を移動してから、会話に入る。
よく見る光景である。
しかし、気になったことはないだろうか?
場所を移して、会話を始める。この間、彼らは何をしているのか、と……。
ここで少し時を巻き戻してみよう……。
***
「よぉ、タケシ」
「……ヒデユキか」
茶髪男はヒデユキという名前だった。
「お前が来たってことは……」
「ああ、殺し屋“火炎竜”の情報を掴んだ」
「本当か! お、教えてくれ!」
「ここじゃまずい。どこか店に入ろう」
「分かった」
二人ともきょろきょろする。
タケシが言う。
「どこ入ろうか?」
「重要な情報だし、落ち着いて話ができる場所がいいよなぁ」
「じゃあ、喫茶店でも入るか」
二人が少し歩くと古風な喫茶店があり、ここに目星をつける。
ところが、看板を見ると――
「コーヒー……1000円!?」タケシが目を丸くする。
「いい豆使ってるんだろうが、ちょっと高いな」
「ああ、今月そんなに余裕ねえよ……」
ヒデユキがスマホで検索する。
「少し歩けばあっちにチェーン店のカフェがあるから、そこに行かないか? 俺そこのポイントカード持ってるし」
「そうだな、そうしよう」
5分ほど歩いて、二人はカフェに到着した。
街のあちこちや大型商業施設内にもあるような大人気カフェである。
中に入ると、席は八割ほど埋まっていた。
「やべっ、席取っとかないと」
「そうだな」
二人は慌てて持っていたバッグや腕時計などで場所取りをする。
そのままレジへ向かう。
「ご注文は?」
「ブレンドコーヒーのMサイズ二つで。支払いは別々でお願いします」
ここでタケシが思い出す。
「そういやお前、ポイントカード持ってるって言ってたよな」
「ああ、そうだった。ええと、どこだっけ……」
ヒデユキが財布の中を探し始める。
「あれ、どこだ……?」
「ホントにここのポイントカード持ってるのかよ?」
「ああ、あるはず……」
「早くしろよ~」
「焦らすなって!」
ようやく見つけた。
「あ、あった! すみません、ポイント付けて下さい!」
「かしこまりました」
トラブルもありつつ、どうにか会計を済ませる。
コーヒーは出来上がり次第、席に持っていくとのことなので、タケシとヒデユキは先ほど取っておいた席に座る。
一息ついたタケシが言う。
「じゃあさっそく、火炎竜の情報を……」
「うーん……まあ、コーヒー来てからの方がいいんじゃないか?」
「それもそうだな。話してる最中にコーヒー来ちゃうと、店員さんに会話聞かれるかもしれないし」
コーヒーの到着を待つことにした二人。
「……」
「……」
気まずい沈黙。
それもそのはず。二人は年こそ近いが、友人関係というほど親しくはなく、共通の話題もさほどないのである。
「今日は……いい天気だな」とりあえず話題を振るタケシ。
「あ、ああ」返しようがないヒデユキ。
「……」
「……」
二人とも「早くコーヒー来てくれ」と願う。
少しして、コーヒーが届く。
両者、露骨に「待ってました!」の顔をして、店員にぎょっとされる。
タケシがコーヒーを飲みながら問う。
「で、火炎竜は?」
「奴は今、日本にはいない」
「……!」
――決して描かれることはないが、場所移動の最中にもこれだけのやり取りがある。
彼らも結構大変なのである。
おわり
お読み下さいましてありがとうございました。




