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運命の彼女を救えと言われたけど、“ユキ”が何人もいるんだが?ちなみに、失敗したら俺が死ぬらしい  作者: きいろい なつ


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第2話 カノジョの名前は「ユキ」


 俺は高校に入学した。

 舞い落ちる桜を見ながら、あの日のことを思い出す――あの神様との出会いを。


「……あの、神様。質問なんだけど」


 床に体育座りで手を挙げる。


「ある人物を助けてほしいって話。それって……助けるだけでいいのか? どうなったら“助かった”って分かる? 条件はあるのか?」


 気づけば詰め寄る形になっていた。


『分かった分かった! 今説明するから、少し落ち着くのじゃ』


「これが落ち着いていられるかよ!」

 

 命がかかっているんだ。必死にもなる。

 神様はこめかみに汗を浮かべ、両手を軽く上げた。


『んー……仕方ないのう。これを渡しておこう』


 差し出されたのは、金色のリングだった。


「これは……?」


『その子と繋がっておる。これが光ったとき――その身に危険が迫っている合図じゃ』


(……アラートってことか)


 少しだけ現実味が増す。何もないより、ずっといい。


『そして――そのリングが壊れたとき。“救えた”証になる』


「……分かりやすいな」


『じゃが』


 声のトーンが落ちた。


『黒く染まったら終わりじゃ。そのときは――お主の命、もらうからの』


 にやりと笑う。


(とんでもねぇ神様だ……)


「……いや、それならさ」


 思わず口に出していた。


「自分で助けに行けばいいだろ。なんで俺なんだよ」


 神様は一瞬だけ黙り、ふっと眉を下げる。


『……今のわらわには、干渉する力がないのじゃ』


 その一言だけが、やけに重い。


『じゃから、お主に頼みたい。その子はわらわの恩人なんじゃよ。それにな――最近、夢を見たのじゃ』


「夢?」


『その子が、何かに巻き込まれておった。事故か……それとも――』


 言葉を濁す。


「……っ」


 背筋が冷えた。

 思い出す。助けられなければ――俺は死ぬ。


「……神様の気持ちは分かったよ」


 気づけばそう言っていた。


「だから、知ってること、全部教えろ」


『うむ、よかろう』


「その子の名前は?」


『ユキ、という名前じゃ!』


 ――そこで、記憶が途切れた。



 * * *



(あれから1月か……。調べたけどユキなんて俺の知り合いにいないし、どうしたもんかな……)


 癖で頭をかく。今日は入学式。クラスメイトの名前もまだ知らない。

 指にはめたリングを、無意識に親指でなぞる。


(……でも、同じ高校って言ってたよな)

 

『お主、高校はどこにいくのじゃ?』


「桜ヶ丘高校だけど」


『そうじゃ。確かユキも……そこに行きたいと言っておった。だから、おるはずじゃぞ。運がいいのう!』


(……なら、見つけるしかない)


 俺自身のためにも。

 そう思った、そのときだった。

 ドン、と肩がぶつかった。


「あ、ごめん」


「い、いえ……」


 顔を上げないまま去っていく少女。長い黒髪が、ふわりと揺れた。……なぜか気になった。


 席に着いた瞬間、隣の少女に目を奪われた。

 銀色の髪。青い瞳。整いすぎた顔立ち。まるで人形みたいだった。


「あっ。君、これからよろしくね」


「えと……俺、五十嵐光一。よ、よろしく……君は?」


「私? 私は――」


 チャイムが鳴り、言葉が遮られた。

 やがてホームルームが始まる。春の陽気に、思わずあくびが出た。

 コツン。


「……っ?」

 

 こめかみに何かが当たる。机の上には小さな消しゴム。……投げられたのか? ちらりと隣を見る。


「寝たら、だめなんだぞ。光一君?」


 無邪気な笑顔。――さっきまでの“完璧な美少女”とは思えないくらい、子どもっぽい。


(こいつ……)


 カチンときた。

 俺は消しゴムをつまみ、軽く弾いた。

 コツン。


「……っ」


 今度は、彼女の額に当たる。


「なにすんの……」


 むっと頬を膨らませる。青い瞳がじわっと潤んだ。

 ――あ。


(やべ……)


 さすがに大人げなかったかもしれない。

 けど、その表情が妙に可愛くて、思わず視線を逸らした。


 ――その瞬間。

 椅子が、きし、と鳴った。

 距離が近い。ふわっと甘い香りがする。


「……っ」

 

 心臓が、変な音を立てる。


(ち、近いって……!)


 「へへっ」


 楽しそうな笑い声が聞こえた。

 恐る恐る視線を戻すと、

 青い瞳が、すぐそばにあった。

 さっきまで涙目だったくせに。

 銀色の髪が揺れ、いたずらっぽく瞳が細められていた。


(なんだよ、この子……)


 一度早くなった心臓の鼓動は、なかなか

 収まってはくれなかった。

 

 休み時間になると、机の周りにクラスメイトが集まってきた。


「おい光一! お前、あの子の隣とかマジかよ! 変われ!」


「いてて! やめろって!」


「知らないとか嘘だろ!? 雪夜つばさだぞ!モデルやってる!」


 ――雪夜、つばさ。


(……ユキ?)


 神様の声が蘇る。


『名前はユキじゃ!!』


 まさか。この子が、俺が救わなきゃいけない相手なのか?

 さっきの無邪気な笑顔が、頭から離れない。


「……っ」


 胸が、ぎゅっと締めつけられる。


(ふざけんなよ……こんなかわいい子が死ぬなんて、ありえねぇだろ)


 心臓の鼓動が、さらに速くなる。

 ――なのに。

 どこか、引っかかる。

 うまく言えない違和感が、胸の奥に残る。


(……なんだ、この感じ)


 理由は分からない。

 でも――

 嫌な予感だけが、消えなかった。

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