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私は兄の大声に飛び起きた。
肩にかけられていた毛布を隣の椅子において、目を擦りながら時計を確認する。
ウソ、もう夜中じゃない!たしか7時には起きていたのに……わたしったら、こんな大事なときに寝ちゃってたの?……ウソでしょ……⁇
ダンッダンダンッダンダン……
ところでオーリンはいったいなにしに来たのよ?
とりあえず床を踏み鳴らすのと、「シェイラ!おい、無視すんじゃねえ!」とか「わざわざここまで呼びにきてやったんだぞ」とか部屋の前で叫び続けるのをやめてほしいんだけど。
やれやれ、なんでうちの男達ってみんな声がでかいわけ?
そうぶつぶつ呟きながら、私は右手の親指と中指をつまんで空をきる。
すぐに鍵が外れ、扉が外向きに開いた。
オーリンはあやうく扉に激突するとこだったのに、見事にひょいと避けてみせた。
……残念、運動神経だけはいいんだから。
つづいて指を交差して鳴らす。ぱっと、部屋全体に明かりがついた。
オーリンは乱雑に置かれた本の山と本棚の隙間を縫ってテーブルまでやってくると、ゆっくりと腕を伸ばして大欠伸している私をみて、呆れたようだった。
「おい、お前さっきのわざとだろ。まあそんなことは今どうでもいい、……ていうかなんだよ、わざわざこんなとこまで来てやったのに、お前はのんきに寝てたのかよ?
はぁーー、もうすぐひいひいひい叔母さんのお目覚めだっていうのにか?」
私はついハッと顔を上げてしまった。
えっ?ウソ、イブ様がもうすぐ目を覚まされる!? 私、なんで寝てたの?バカなの!?
オーリンはぐるりと目を回してみせた。
私は一度コホンと咳をすると、内心の大興奮を悟らせないように、肩をすくめて言った。いかにも興味なさげにみえるように。
「……さすが勢いよく突撃してくる扉を避けるなんて朝飯前ですわね、ラグビー部の大将様。ですがその件には絶対に関わらないって、もう何度も言ってるじゃありませんか。
……はぁ、それに健全な十六歳はとっくに寝てる時間なの」
オーリンは両眉を釣り上げて、戯けたように言った。
「はっ!そんな不健全な16歳、お前だけだよ。いいから来いって!」
それからニヤっと笑い、「ほらな」とテーブルの上のペーパーを拾い上げた。
「そんなこと言って、興味あるくせに。せっかく目の前で世紀の大事件が起きようとしてんのに、一ヶ月も前の記事なんて読んでてどうするんだよ。ほんと、お前って頑固だよな。それとも、本気でこんなとこで寝ようとしてたわけ?」
私はオーリンを睨みつけた。
「……あーもう!わかったってば。それで?なんであんたがそんなこと知ってるのよ。手術は無事終わったの?」
しょうがないから聞いてあげるって感じの、さりげない風を装って聞いたのに、オーリンはまたニヤニヤしだした。
やっぱりムカツく!
オーリン・キラノー シェイラの兄、史上最悪の悪ガキ。これからこのオーリンがいろいろやらかします。




