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それから私はベッドの上でゴロゴロしながら、例の”イヴ様の手帳”を読み返していた。
その手帳には屋敷のありとあらゆる秘密の通路や隠し扉が記されているページや、150年前の屋敷の様子がわかるスケッチが、全て手書きで書き込まれている。
なんでその手帳の持ち主がイヴ様だってわかったかというと、1番後ろのページに彼女の肖像画が描かれていたから。
絵の中のイヴ様は上質なレース刺繍のワンピースを着て、こちらに向かって微笑みかけている。
歳は私と同じくらいで、完璧なプラチナブロンドに、雲ひとつない晴天みたいなスカイ・ブルーの瞳が印象的。
(これぞまさに天使! いや女神!)
つい身悶えて足をバタバタさせてしまうくらい、いつ何度見ても最高に美しいのだ!
さすが私の推し!
(というか、冷静に考えて推しと血が繋がってるとか、私運良すぎでしょ?ルシーダ風にいえば、私ったら前世でどんだけ徳積んだのよ。
教科書に載ってる写真や屋敷の大広間に飾られている肖像画と比べても、この手帳のが1番好き。だって、今すごく幸せ!って感じの、とっても素敵な笑顔なんだもん。
あーー、もしかして、私、本物のイヴ様に会えるかもしれないんだよね?そしたら、こんな笑顔が間近に見れたら、最高だなあ)
私が仰向けになって、イヴ様との幸せな青地図を描いていると、誰かがドアをノックする音が響いた。
「お嬢様。開けますよ」
ソフィーだ。
私はさっと布団の中に手帳を隠して、何事もなかったかのように伸びてみせた。
「おはよう、ソフィー」
「あら、珍しい。お嬢様がもう起きていらっしゃるわ。……と言っても、あれからまだ1時間も経っていませんからね。お嬢様、おはようございます。少しはお眠りになられましたか?」
そう言って部屋に入ってくると、ソフィーはまずカーテンを開けた。
「……うーん、どうかな?あんまりかも」
……ウソ、もちろん全く寝れていない。
開け放たれた窓から入ってくる光が眩しい。
昨日の嵐はどこへ行ったのやら、窓から見えるのは雲ひとつないスカイ・ブルー。
……まるでそう、イヴ様の輝く瞳みたいな。
その清々しさとは対照的に、ソフィーは一つため息を吐くとブツブツとお小言を言い出した。
「昨日はお2人にまんまと騙されましたよ。奥様は大変お怒りで。おぼっちゃまはやんちゃがすぎて困りますねえ。そのせいでお嬢様まで怒られてしまって、お可哀想に。またお休みになられては?と言いたいところですけど、ウィリアム様が食堂でお待ちですよ」
「え?パパが?なんで?」
「それは分かりかねますが、お急ぎのご様子でしたよ。おぼっちゃまもいらっしゃいました」
「えー、オーリンも?てことは絶対また怒られるじゃん」
「それではこのソフィーがウィリアム様をお止めします。お嬢様は全く悪くありませんからね」
「……ありがとう。でもまあたぶん大丈夫。パパ急いでるんだよね?じゃあもう行くね」
そう言って私はソフィーを置いて階下の食堂に駆け出した。
ルシーダ・カウアー シェイラのクラスメイトで占星術やタロット占いが趣味。よく輪廻転生の話をしている。




