2-1 初めてましては、真っ昼間の、図書室で
次の日の朝。
結局、私はあれから一睡もできずに朝を迎えた。
ベットの上でゴロゴロ寝転びながら、昨日の出来事
ーーもちろん、史上最高級にアホな実の兄とその仲間たちの全世界リアルタイム配信事件の方じゃなくて、パパの『"彼"の様子はどうだ?話せそうか?』という発言について考えていたから。
あれは、単なるパパの言い間違いだろうか?
もちろん、その可能性もある。
だってここ最近、忙しすぎて全然寝れてないはずだし(あの目の下のおっきいクマがその証拠)、そうでなくても今自分家に全世界の注目が集まってて、連日連夜ニュース番組で特集されてるなんて、とんでもない状況だもん。
それに、あのイヴ様が目をお覚ましになっただなんて、大の大人でも気が動転するにきまってる。
もちろん、自分のご先祖様でもあるわけだし。
それとも、私の聞き間違いっていう可能性は?
いや、これはない。
だって、あの場にいた5人全員が同じ反応をしていた。
昨日、ていうか今日の夜中、あれから私たち5人はそろってこっぴどく叱られた。
いや、なんで私まで一緒に怒られないといけないわけ?
こんなのただの巻き込まれ損じゃん!
ユエンなんていつの間にトンズラしやがって!
今度学校で会ったらただじゃ置かないから!あんたの1番大事な120年前のマックブックプロぶっ壊してやる!
私はママが鬼の形相で1時間たんまり説教している間、恨み顔でずっとオーリンを睨んでいた。
もちろん、ママがペーパーでこの珍事件をリアルタイムで報道してた深夜のニュース番組を見せながら、
「あなた達はイタズラのつもりでやってたんでしょうけど、これは機密情報なのよ!機密情報!もしシルビオが風邪を引いて永遠咳とくしゃみをしてなかったら、スピーカーの音がダダ漏れで、あなた達は国家機密漏洩罪で少年院行きでしょうね」
と怒鳴ったときは、すぐさま抗議しようとしたシルビオ以外、あやうく大笑いするのを我慢するのに必死だった。
……というのも、ママが咳とくしゃみだと思ったのは、彼の得意技、超絶下手なボーイズパーカッションもどきなのだ。
空中に拡大されたペーパーから彼の咳とくしゃみーーもといボーイズパーカッションもどきの音声がすっと流れ続けて、最後オーリンが爆笑し初めて、もう駄目だった。
みんなおかしなテンションになって、涙が出るくらい笑って、それでお説教は1時間追加された。
でもシルビオはママに風邪を引いていると勘違いされたおかげで、みんなより早く家に送り帰された。
ズルだ!
そうして2時間こってり縛られたあと、私とオーリン、ズルしたシルビオ以外の2人は家に帰され、残された私たちは引き続きお説教された。
結局、ママが私たち2人を解放したときにはもう太陽が出始めていた。
なんで解放されたのかというと、真っ青を通り越して真っ白な顔のパパが慌てた様子でママを連れて行ったのだ。
私たちは数分後にやってきたソフィーに本邸のそれぞれの自室に戻された。
「なあ、なんかあったのかな?」
ソフィーと説教部屋を出て廊下を歩いていたとき、オーリンが私にそう耳打ちした。
「うるさい。黙ってて」
私が顔を背けても、オーリンはその、本人だけはヒソヒソ声のつもりの、バカでかい声で喋り続けた。
「親父、誰かがいなくなったって言ってなかったか?」
(本人は)忍び声で話しているつもりでも声がデカいのは何もオーリンだけじゃない、パパもだ。
……つまりうちの男ども全員ってこと。
「……はぁ、言ってたけど?それがどうしたの?どうせ今朝の記者会見に誰かが遅れてるんでしょうよ。私、もう寝るから。とにかくこれ以上なにもしないで。なにも!じゃあね。ソフィーもお疲れ様、おやすみなさい」
自室の前でそういうと、私はオーリンの鼻スレスレで扉を閉じた。
バタンッ!




