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1-8

 結局、私たちがリアルタイム配信の現場、地下室のちょうど真上にあたる部屋に着いた時には、もう夜中の1時を回っていた。


 ちなみにもちろん、私たちは全身びしょ濡れ。

 しょうがないから浴室からバスタオルを持ってきて頭から被った。


 その部屋は普段使われることもなく放置されていた防音完備の音楽室で、埃っぽく、真っ暗で、どうやら階下の音を盗み聞きするための金属製の謎装置がスピーカーに繋がれている。


 スピーカーからは複数人の聞き取れないほど小さな話し声、雑音、心電図のピー、ピー、という音が絶え間なく続いていた。音が小さすぎるのと、シルビオのボイパが邪魔して(まだやってたのか!)、ここからだとよく聞こえない。


 ペーパーからの光が部屋に残っていた3人の顔を青白く照らしている。


 私は配信用と思しきペーパーを見つけるや否や、すぐさまそれを燃えるような赤髪を持つ目つきの鋭い、チンピラじみた男ーーボイパ(?)をやめないシルビオの手からぶんどって配信を停止した。


「おいコラ、なにすんだよ!……ィッデッ!」


 ついでにゲンコツでシルビオの頭をブン殴ってやった。

 シルビオは殴られた頭を抱えてうめいている。

 

 ……そこの3人、なに「おっかねえ女」「やべーこいつ」みたいな顔して見てんのよ。

 いやいや、あんたたちの方が数百万倍やばいから


 オーリンは突然のリアルタイム中継中断にぶつぶつ文句を垂れている。


「せっかく実況者が戻ってきたっていうのに……」

「この女が!……」


 シルビオは何か続けようとしたみたい。

 でも私が拳を振りかざすと一瞬で口を閉じた。


 オーリンはシルビオを、残念な生きものを見るような目で一瞥してから、(一応、彼なりの)小声で状況を確認した。


「……で、とりあえず今どうなってんだ?」


 4人の中で一応頭脳担当(?)の栗色の髪に焦茶色の瞳のウェイジーンがスピーカーから少しだけ顔を上げて答える。


「ああ、30分くらい前にイヴが蘇生したみたいなんだ。もうすぐ目覚めるはずだってさ。……でもさ、さっきから、なーんか変なんだよなー」

「変って、なにが?」


 聞きながら、私はウェイジーンの体を押し退けて、スピーカーに耳を押し当てた。


『……いやでも、……は本当に……。もしそうなら、イヴは……』


 雑音がうるさすぎるし、声も小さすぎて大事なところが全然わからない。位置を変えたり試行錯誤してみたけど、駄目。

 さすが鉄製冷凍室、盗み聞きなんてハナから無理がある。


 私は右耳をよりスピーカーに密着させて、左耳でウェイジーンの説明を聞いた。


 「……それがさ、解凍自体はうまく行ったみたいなんだが、なんか手違いがあったらしいんだよ。その内容がよくわかんねーんだけどさ。さっきから、おっさん達があーだのこーだのうるせーんだよ」


 え?手違いですって?……イヴ様に何かあったってこと!?


「ところで今、地下の冷凍室には何人いるんだ?」


 オーリンが問いかけると、それまで黙って事の様子を傍観していたセオーー金髪で耳に大量のピアスを付けているーーが初めて口を開いた。


「おそらく、イヴ本人と、医者のおっさん1人と、責任者ーーお前の親父だけ」 

「ふーん。その医者、たぶん俺の母親の兄貴だぜ」


 さっきの声は、パパとエドガー伯父さんのだったのか。全く気づかなかった。

 分厚い鉄製の壁越しだからか、普段と違う感じに聞こえたのだろうか。


 そのとき。

 

 スピーカーから一際大きな音ーー慌ただしい靴音と、明らかに興奮した声が飛び込んできた。


『……ウィル。……目覚めたぞ!』


 そう言うエドガー伯父さんの声だけは、部屋中に響くほど大きかった。

 男達4人が一斉にスピーカーの元に集まる。

 

 その後の声はよーく耳を澄ませないと聞き取れないほど小さかった。


『……エドガー、声が大きいぞ。びっくりするだろ!……"彼"の様子はどうだ?話せそうか?』

『……すまん、つい慌てて。わからんが、お前が……』


 その先は雑音にかき消されて全く聞こえなくなった。


 その場にいた全員が目を合わせる。

 

 シェイラ、オーリン、シルビオ、ウェイジーン、セオ。


 5人は目を見開いて、驚愕の表情で、そっくり同じ、素っ頓狂な驚きの声を上げた。


「……彼?????!!!!!」


 つぎの瞬間ーー

 

 廊下から尋常じゃなく怒りに震える女の人の甲高い怒鳴り声が聞こえてきた。


 ……もちろん、私はこの声の持ち主を知ってる。そしてオーリンも。

 ……嫌な予感しかしない。


 みんなの顔からサーっと血の気が引いていく。5人は再び顔を見合わせた。



  バァァァァァァァァァンッ!!!!!!



 その爆音と共に、音楽室の扉が乱暴に開け放たれた。


 そこに立っていたのは、仁王立ちで金属バットを握る、シェイラとオーリンの母親。

 

 ……普段は艶やかで完璧なスタイリングの黒髪も、最近、いや今夜ばかりはボサボサ……いや怒りのあまりに逆立っている。


「……やべ。母ちゃんじゃん……みんな、とにかく逃げろ」


 そう震える小声で言う兄を横目で睨んで、シェイラは舌打ちした。


「……チッ(なんでこんな時までこんなにバカなの?出口なんて一つしかないじゃん!)」

とりあえず一章終了です。長かったです。

いろいろ謎だらけで終わりました。……ところでユエンはどこへ消えたんでしょう??

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