蛇女と二人旅を。 ~一日目前編
二週間後の土曜日、辛木鉄道、辛木駅。
「んじゃな、着いたら電話しろよー」
「たっぷり楽しんできてねー♪」
雷電の車に送られて、皐月と霞は―今は人間の姿に化けている―駅前に立っていた。霞はいつもの着物ではなく、この日のために買ったという洋服を着ていた。服選びは弥生がやったらしく、いつ蛇女の姿に戻ってもいいよう、スカート姿である。なお、今まで霞が外出する際は、弥生の服を着ていた。身長は二人とも160センチ前後と似通っているのだが、胸のサイズは霞のほうが大きいため、胸がきついと文句を言っていたりした。
ともあれ、普段と違う霞の姿は新鮮だった。
というか、凄く可愛い。家ではまじまじと見つめたうえに赤面してしまい、雷電と弥生からさんざんからかわれた。
「では、皐月、行こうか」
「うん。えっと……元山駅でJRに乗り換えて、来栖でもう一回乗り換えかぁ」
雷電に書いてもらった乗り換えメモに目を通し、忘れないように復唱する。霞が当てにならない以上、電車の中で寝過ごす訳にはいかない。
「ややこしいのぅ。頼りにしておるぞ、皐月」
「……うん。寝てたら起こしてよね」
「うむ。任せておけ」
霞は胸を張り、皐月の手を取って駅舎に歩きだした。最初のうちは手をつなぐのも抵抗があったのだが、最近は少し恥ずかしいだけになってきた。とはいえ、やはり一緒に歩いてたりすると非常にドキドキするのだが。
とりあえず元山駅までの切符を二枚買って、一枚を霞に渡す。
「……皐月、これはどうやって使うのじゃ?」
「あぁ、これはそこの改札口に入れるんだよ。こんなふうに」
皐月は自動改札口に切符を差し込み、改札を抜ける。それを見た霞も、改札に切符をおっかなびっくり差し込んだ。
「ひゃっ!?」
一瞬で改札の中に切符が飲み込まれたのを見て、霞は思わず声をあげる。突然の声に、周囲からの視線が集まっていた。予想通りの展開だ。
「あー、やっぱり……。霞、出てきた切符取って、こっちに来て」
皐月の手招きで、霞はおずおずと改札を抜ける。小さな笑い声が聞こえてきて、なんだか恥ずかしい。
「ふー、びっくりしたぞ……。指が挟まるかと……」
「うん、それはわからなくもないけど……。レールバス来るのはこっちだから、ついてきてよ」
駅のホームに向かう。第4土曜日の昼過ぎというせいか、ホームにいるのは制服姿の高校生が何人かだけ。おそらく部活帰りだろう。
「霞、荷物重くない?」
二人分の着替えが入った鞄を持っているのは霞だ。こういう場では、男のほうが荷物を持つべきじゃないだろうか。
「ううん、大丈夫じゃ。着替えしか入っておらぬしな、あまり皐月に負荷をかけるのも悪かろう」
「別に、それぐらいどうってことないんだけど……」
皐月がそこまで言いかけたところで、霞は皐月の言葉を止めた。
「わしも何か仕事をせねば、悪いからのう」
「そこまで言うんなら、別にいいけど……」
女性に荷物を持たせるのは男としてどうか。皐月はそこが引っかかり、仏頂面になっていた。
皐月の心境に気付いたのか、霞が皐月に耳打ちする。
「……ふふ。皐月のそういうところは、好きじゃぞ」
「っ!?」
寝耳に水の言葉に驚く皐月。霞から好きと言われるのは悪い気分ではないが。
「……もう、人前でそんなこと言うなよな……」
誰も気にしていないとはいえ、恥ずかしいことにかわりはない。霞から好きと言われること自体は嬉しいが、人前で好きと言われるのには抵抗があった。
「ふふ、すまぬすまぬ」
霞は悪びれる様子もなく、悪戯っぽく笑う。どうすればいいかわからず、とりあえずレールバスの時間を気にする皐月だった。
「あ、キサ君じゃん」
聞いたことのある声。振り返った先には、クラスメイトの深雪がいた。さっきの光景は見られてないだろうか。
「……あ、白雪さん」
「どうしたの? 用事でも?」
深雪はとことこと歩み寄ってくると、首を傾げて問いかけてきた。この様子だと、先程の光景は見られていないようだ。ほっと一安心。
転校してきたときに隣の席だった縁を含め、皐月と深雪は仲がいい。小学6年生といえば、同年代の女子と話すのは気恥ずかしい年頃である。しかし、深雪はほとんどの男子から女子扱いされていなかった。それはボーイッシュな外見のせいか、はたまた男子っぽい趣味―テレビゲームやカードゲーム―のせいか。皐月も例外ではない。どうしても深雪のことを異性として見ることができなかった。
「まぁ、そんなとこ。白雪さんも?」
「うん。大海城のお爺ちゃんとこに」
「そっか。オレはS県の親戚のとこまで」
霞と温泉旅行だなんて、言えるはずがない。ちなみに、皐月と霞が付き合っていることを知っているのは弥生と雷電だけ。世間体としては、皐月の従姉妹という設定になっている。
「ところで、隣のお姉さんは?」
「皐月の従姉妹の、霞と申す」
従姉妹と称するとき、霞の表情は少しだけ憮然としている。彼女としては、恋人同士ということを誇りたいのだろう。皐月はそう推測している。恋人同士ということを胸を張って言える日は来るのだろうか。
「……あぁ、どもども、従姉妹さんですね。ちとっちゃんから聞いてますー。あたしは白雪深雪って言いまーす。よろしくっ」
「うむ、こちらこそ」
霞と深雪は互いにお辞儀を交わす。
「ちとっちゃんから聞いてたけど、確かにキレイな人だね。うらやましいぞ、このこの」
深雪はからかうような表情を浮かべて、肘で小突いてきた。千歳と深雪はいつも一緒に遊んでいるが、いつの間に話したんだろうか。内容も少し気になる。
「何がうらやましいんだよ」
「またまたー。美人の親戚とか、みんなに自慢できるじゃない」
「……まぁ、確かに、霞はキレイ、だけど」
なんだか言ってて恥ずかしくなってきた。レールバスの到着が気になるフリをしてそっぽを向く。
「何じゃ、照れておるのか?」
「……ホントだ、キサ君赤くなってるー♪」
心底嬉しそうな霞と、なんだか楽しそうな深雪。
皐月はふと、最近読んだ漫画にあった「四面楚歌」という言葉を思い出した。
霞が喜んでくれているのは嬉しいが、深雪にネタを与えてしまったと思うと、なんだか憂鬱になった。
そうこうしているうちに、レールバスが到着。辛木駅は始点であるため、中には誰も乗っていない。
適当な二人掛けの椅子の窓側に座って、荷物を足下に置く。霞がその隣に座った。深雪は皐月達の後ろに座っている。
「……のう、先程のことは本当なのか?」
霞が耳打ちしてきた。深雪に聞こえないよう、小声で。先程のこととは、霞が美人かどうかという話だろう。
「……うん。ウソついてどうするのさ」
ちょっと恥ずかしいが、同じく小声で返事をする。すると、霞は満面の笑顔を浮かべて。
「……ふふ、ありがとうな」
なんて呟いて、皐月の手を握るのだった。相変わらずの柔らかくてひんやりしている手。霞から触られるのは好きである。もっとも、冬場になっても同じ事を言えるかどうかはわからないが。
ふと後ろに目をやってみれば、深雪は携帯ゲームに興じていた。カートリッジはよく見えないが、おそらくは最近流行っている育成型対戦ゲームだろう。皐月と弥生も持っていて、たまに姉弟で対戦するが、いつも弥生をボコボコにして終わる。弥生は本当にゲームが下手だ。そして皐月も接待プレイをしない。
車掌のアナウンスの後、レールバスは発車した。霞の様子を窺ってみると、なんだかそわそわしている。ひょっとして―。
「……霞、窓側、替わろっか?」
「よいのか!?」
やっぱり。
窓からの景色といっても、広がるのはなんてことのない、ただの田園風景である。黄金色の稲穂が広がっている光景は壮観と言えないことはないが。
だが、霞にとっては新鮮な体験なのだろう。自分も初めて電車やバスに乗ったときは景色を見たがったものだ。
「じゃ、替わるよ。あんまりはしゃがないでね」
「いやいや、すまぬな」
元山駅までは20分ほどだ。嬉しそうにしている霞と席を替わり、通路側に座る。
途中で停まる駅はどれも無人駅。乗り降りする人もまばらで、レールバスは淡々と走っていく。
「白雪さん、何やってるの?」
暇なので、背もたれ越しに深雪に話しかけてみる。深雪はゲームを止めて、顔を上げた。
「ん? ブリードヒーロー。やっとレベル60まで上がったよ」
「60!? 早っ! オレはまだ50いってないよ」
予想通りだった。
ブリードヒーロー。巨大ヒーロー、戦隊ヒーロー、変身ヒーローといった個性的なヒーローから一人を選び、育てていくゲームである。携帯機の利点を活かした対人戦が最大の魅力であり、戦略性の高い戦闘は高い評価を得ている。
「キサ君もやってるんだ。何使ってる?」
「ジャスティスマン。白雪さんは?」
「ジャスティスレディだよ。素早さ高いから使いやすいんだ」
しばらくゲームの話に花を咲かせる二人だったが、元山駅に着いたことで会話は終わった。元山駅は終点であり、全員が降りている。
「あ。霞、着いたよ」
「うむ。知らぬ町を眺めるのは面白いのう」
「へぇ?」
「知らぬ町にも、人は住んでおるのじゃな。当然の事じゃが」
霞の感想はわかるようなわからないような。
ともあれ、荷物を取ってバスから出た。JRは同じ構内の別ホームであるため、辛木鉄道の改札を抜けてから陸橋を渡る。
「じゃ、キサ君、ここでお別れだね。また今度、対戦しようよ」
「うん、またね。じゃ、月曜に学校で」
「ではな、深雪。気を付けるんじゃぞ」
大海城方面行きの電車はもうすぐ到着する。深雪は小さくお辞儀をすると、慌てて切符を買って、改札に駆け込んだ。
「深雪、間に合うのかのう」
「どうだろ。結構足速いからね、白雪さん」
「……それにしても、深雪とは仲がいいんじゃの」
「はい? まぁ、そうだけど」
霞の口調は不機嫌そのものだった。思い当たる節は、やはり深雪しかない。
先程、深雪とばかり話していたのがいけないのだろうか。
「……あの、さっき、白雪さんとばっか話してたの、怒ってる?」
「……」
霞は無言でそっぽを向いた。
「……ごめん」
怒ってる。皐月は素直に頭を下げた。
すると、頭を軽く叩かれた感覚があった。ちょっとだけ頭を上げると、そこには笑顔の霞がいた。
「ふふ、別に怒っておる訳ではないぞ。まぁ、羨ましくなかったと言えば、嘘になるがの」
「うー……」
なんだか気まずい。ちょっと目を伏せて、切符を買いに行く。
「何じゃ、可愛い表情をするんじゃの」
いきなりの一言に、皐月は思わず100円玉を落とす。霞がそれを拾い、皐月に渡した。
「ふふ、皐月のそんな表情を見れただけで満足じゃ。怒ったフリをしておったのじゃが、まんまと引っかかってくれたのぅ」
先程の不機嫌な姿は、どうやら演技だったようだ。ほっとすると同時に、なんだか複雑な心境になる。
「……もう、演技なら演技って言ってよ。本気で焦ったじゃんか……」
ため息をつきつつ、切符を買って、霞に渡す。
「あんまりそんなことしてると、もう案内しないからね?」
「む、むう、それは困るぞ……」
「演技でも、霞を怒らせるのは嫌だからさ」
本心を述べたが、霞の反応を見るのが恥ずかしいからそっぽを向く。
特急の切符を買って、改札をくぐる。霞の様子を窺ってみると、おっかなびっくり改札に切符を差し込んでいた。無事に通れたようで、にんまりとしている。
「霞、急ご。もうすぐ電車来るから」
「うむ、こっちでいいのか?」
「うん、いいみたい」
ホームに移動して、到着した電車に乗る。来栖駅までは一駅しかないので、座るのもなんだと思い、立っていることにした。
「皐月、座らぬのか?」
「うん。すぐ着くからね」
霞はベンチシートに座っている。荷物を隣に置いていたので、網棚に移した。
「む? 荷物はそこに置くのか?」
「うん。隣に座る人の邪魔になっちゃうでしょ?」
「……なるほど。確かにそうしたほうがいいのう」
少しして、電車は動き始めた。霞は再び窓の外に目をやる。その様子はなんだか可愛くて、思わず笑顔で見つめる皐月だった。
来栖駅までは10分もかからなかった。来栖駅はこの地方の交通の中心地であり、ホームの数は多い。
「霞、ついたよ。次の電車まで時間ないから、急ごう」
「……広いのう。どこに行けばいいのやら……」
霞はホームできょろきょろしている。土曜日の駅とあって、人の数は多い。万が一ここで霞とはぐれてしまったら、大変なことになってしまう。二人がはぐれないためには――。
「霞、はぐれないでよ」
霞の手を取って、特急車両のホームを目指して階段を降りる。
「う、うむっ」
霞は戸惑いながらも着いてきているようだ。雷電からもらったメモを頼りに、ホームに向かう。
『まもなく、3番乗り場に、特急が到着します』
「わわ、電車来ちゃうよ! 急がないと!」
慌てて階段を上ると、ちょうど特急車両が到着した頃だった。皐月は安堵のため息を漏らす。
「……ふう、間に合ったね」
「じゃな。……ふふ、頼りになったぞ、皐月」
霞は皐月と繋いでいる手を見て、満足そうに笑うとともに皐月の頭を撫でる。
「もう、人前で撫でないでよ……」
流石に人前で頭を撫でられるのは恥ずかしい。撫でられること自体は嫌いじゃないが、こういう場だと話は別だ。
ともあれ、電車が来たので、自由席の車両を探して、中に入る。荷物は二人掛けの席の足下に置き、霞が窓側、皐月が通路側だ。
「ふう、あとは乗り換えなしだから、これで落ち着いたね」
「うむ。世話をかけたな、皐月」
「ううん、別にいいよ。オレがしっかりしなきゃね」
「……そうじゃ」
霞はそこまで口にして、皐月の耳元に顔を近付ける。
「わ!? ちょ、近いよ!! 何なの、急に!?」
「さっきは初めて皐月から手を繋いでくれたの。嬉しかったぞ」
なんて、すごく嬉しそうに囁きかけてきた。
言われてみれば確かにそうだ。手を繋ぐときは、今までいつも霞からだった。自分からというのはやはり気恥ずかしく、気がついたら霞が手をつないでくる、といった形になっていた。
やってみれば案外できたものだ。まぁ、無意識だったから、次も同じようにできるとは思えないが。
「ふふ、今度からは皐月から手をつないでもらおうかの」
「……多分無理だと思う……」
「どうしてじゃ? さっきはできたではないか」
意地悪そうに微笑む霞だった。きっと答えはわかってるだろう。
「さっきのは無意識だったから……」
「無意識につないでくれたのなら、つなぎたいと思っておるのじゃろう?」
「うー……」
霞は本当に楽しそうだった。このままだとずっと言われそうだ。いつものようにそっぽを向く。
「すまぬすまぬ。そう怒らんでくれ」
「別に、怒ってはないけどさ……」
反応に困るだけだ。
そんなこんなで、列車が発進した。車掌に切符を見せ、文雄温泉までの2時間弱、ようやくのんびりできる時間となった。思わずあくびが出る。
「もう乗り換えはないんじゃの?」
「そうだね。あと2時間ぐらいは何もしなくていいよ」
「じゃあ、皐月にはゆっくりしてもらわねばな。眠そうにしておるし」
「……うん、ちょっと眠い、かな」
自分一人ならなんてことはないが、霞の心配をしながらである。正直、結構疲れていた。
「じゃあ、寝ておるといいぞ。わしは起きておるから」
「いいの?」
「うむ。皐月といるだけで、わしは楽しい。それに、皐月の寝顔も見れるからのぅ」
なんだかとっても恥ずかしい。寝顔は馴れ初めの頃から見られているが―正確に言えば失神していたのだが―、問題なのは最初の一言。皐月も霞と一緒にいるだけでなんだか楽しい気分になれるが、こう面と向かって言われると、非常に恥ずかしい。
「か、霞こそ、ずっと人間の姿じゃん。疲れないの?」
「最近はこの姿になることも増えたからのぅ。だいぶ慣れたぞ」
慣れの問題なのだろうか。ともあれ、霞がそう言っているのなら、遠慮なく――。
「……じゃあ、ちょっと寝るね」
「うむ。おやすみ」
目を瞑ると、ほどなく睡魔が襲ってきた。
『ひっこしても、ずっと、ずっと、すきだから!』
「んぁ……」
目を開けると、自分は霞の肩にもたれかかっていて、霞は窓の外を眺めていた。
昔の夢を見ていた。
千歳が引っ越したとき。それは小学2年生の頃だったが、印象的だったのか、鮮明に覚えている。
あれはどうなんだろう。初恋になるんだろうか。
千歳の気持ちは今も同じなのだろうか。そんなことはないと思うが、もしそうなら悪い気がする。
今の自分には霞という恋人がいるのだから。
考えているとなんだか恥ずかしくなってきた。皐月は上体を起こす。
「……うん? 何じゃ、起きたのか」
「うん。……どれぐらい寝てた?」
「一時間ちょっとじゃな。まだまだかかるようじゃぞ」
乗り過ごしてはいないらしい。ほっと一安心。
「もう少し寝るか?」
「ううん、いいよ。目、冴えちゃったし」
少し寝たせいか、ずいぶんとすっきりした。もう眠気はない。
それに、また寝ると、さっきの夢を思い出しそうだから。
それからというもの、たまに景色を話題にしつつ、時間は過ぎていった。何かしてないと暇でしょうがない。本の一冊でも持ってくればよかったかも。
「皐月、暇そうじゃの」
「まぁね」
何かしないことには時間は潰れない。ふと、指だけでできる簡単な遊びを思い出した。
「霞、『コレ』する?」
皐月が両手の人差し指を立てる。その仕草で、霞は首を傾げた。
「コレ?」
「うん。相手の数字を増やしてくんだけど」
皐月はそう言って、右手の人差し指で左手の人差し指を叩いた。左手は人差し指と中指が立ち、ピースサインになる。
「こうやって『1』で『1』を叩くと、叩かれたほうは『2』になって」
今度は左手で右手を叩く。右手は中指と薬指が立ち、3本の指が立っている。
「『2』で『1』を叩くと、『1』は『3』になる。こんな感じで相手の数字を増やしていって、『6』以上になったらその手は使えなくなる。で、両手とも使えなくなったほうが負け」
「ふーむ。なんとなくはわかった」
「やってみたほうが早いよ。とりあえずやってみる?」
「そうじゃな」
「……で、今のはオレの勝ち」
「ふむふむ」
「あと、『3と3』を『4と2』みたいに、両手の数字を振り分けることもできるんだけど、それやると相手の番になっちゃうから」
「ふむふむ。なかなか奥が深いのぅ。もう一度頼む」
「りょーかい」