第4章 第6話 バルツァフの日常 出
企業の私兵、АРМСИСКの車両に乗った連邦軍の兵士を見てから見る映画ってのは内容が全く入らなかったし、せっかくアリィが奢ってくれたステーキも柔らかかったのにその事を考えすぎて数分噛み続けた
何度「やっぱ君モテないだろ」を聞いたか覚えてないし、なんて返したかも覚えてない
昼過ぎに公園で休んでる時に心配したアリィにガチ恋距離まで近付かれてようやく考えが止まったが、次はその顔が頭に張り付いて離れなかった
「不知笑君この本読んだことある?スパイ物なんだけど、古いスパイ映画みたいな流れってかストーリーで結婚面白いんだ」
「この本はエイリアン相手に人類が抗うシリーズ物だね。アニメとかゲーム化されてて、声付きだと悲壮感ってか残酷さがより強調される。読んでみ、カウンセラーは先に雇っといた方がいいよ。あと推しは作らない方がいい」
「これは引退したトップクラスの暗殺者が、何の因果かまたその世界に戻る話さ。元々は映画でそれを書き起こしたもの、評価も高いよ。映画も見るといい」
「ん、民間人が書いた空軍戦略に関する本だって、専門家が書いたらしいけど気になるね。これは僕が読むか」
「これは彗歴300年頃の帝国を舞台にした空想物だね。主人公は貴族の......辺境伯の子だったかな。これも読んでみてくれ、僕も読む」
おかしい
私は閣下の読む本を買いに来たのかと思ったら私の読む本を買わされている
いや勘定は閣下がしてくれるらしいがそれにしても数が多い
何冊買った?PP-2000抱えた上でこれ持って帰るのか?
........楽しかったし、まぁいいか
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まぁ良くなかった
基本文官なのに銃抱えた上で本数冊、しかもどれも分厚いから思ったよりも重い
やはり少しでもトレーニングはするべきだとは思っていたが、これ程体が鈍るとは
戦後処理のガタガタで書類整理が一纏めに来ないから、ちゃんとした時間が取れないからだとしてと、やけに身体の調子が悪い
「不知笑、やり残した事はないかい?買いたい物はある?ないならもう帰ろう」
「いんや、もうやる事はないよ。帰ろうか」
1日やってわかったがタメ口で話すのは慣れない
急な転換ってのはどうにも不都合が多いのが世の常だと、そう再認識した
かくしてバルツァフ邸に帰った訳だが、やはり気が抜けたからか、ベッドに身を下ろすだけで疲れが強くのしかかる
そうして気付いたら.......
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爺さんが飯を作ってくれたので不知笑を呼びに来た
そう、来たんだがノックしても返事がない
いやまさか、若干顔色悪かった気がしないでもないが、ぶっ倒れちゃ居ないよな
「不知笑くぅ〜ん....?夕食の時間だけど...」
(電気は点いてる、気配もあるけど物音がしない)
ドアノブに手をかけ、物音を立てないようにゆっくりと開ける
見慣れた構造の小部屋、ベッドに机、本棚にクローゼット
見慣れないとすれば......
「不知笑く....ん?」
(顔色が悪い、それに息も荒い?とりあえず服をどうにかするか)
不知笑は外出した時そのままの格好で横たわっていたので、まずそれを解く事にした
マフラーを外しズボンのベルトを外す
「ん...あ、閣下ぁ?どうされ...」
そう言い切る前にゴホッと咳き込む、息を聞くと透き通ったようないつもの呼吸音ではなく、雑音混じりで呼吸する毎に喉を痛める様な音をしていた
「.....風邪か、インフルかもしれないな。医務室は遠くない。連れて行く、肩を.....」
貸そうとしたが身長差的にキツイ、流石に165と173じゃキツイものがある
「い...いぇ...大丈夫です...ほん....」
「その声で大丈夫な訳があるか、医者を呼ぶ。楽な格好になって横になれ」
内線で医務室に電話をかける
「もしもし、私だ。217号室に来い、ASAPでだ」




