第4章 第3話 バルツァフの日常 労
9月19日 18時47分
「大将、次はこの書類にサインを。後退する地上軍戦車隊がここを経由するので、その許可証です。」
「あぁ...この書類前もサインしてなかったか?記憶違い?」
「前のは第197機甲大隊と第372野戦高射砲兵中隊のもので、今回は第714機械化歩兵連隊と第1044機甲大隊のものですね。んで次は」
「まーてまてまて。不知笑君今何時だと思ってる?」
「あーんと、13時くらいですかね。」
「18時49分だよ!!!僕は昼飯すら食わずに朝から書類を捌いている。そろそろ空腹でぶっ倒れるがよろしいか?」
「よろしくないですね。では昼食としましょうか」
「もう夕食の時間だよ!」
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食堂に着いたのは19時ちょうど。執務室から食堂までには少し遠く、歩く度に腹がなったいた
そうして着いた食堂で頼んだメニューは......
「あぁ......美味しぃぃ.......身に染みるねぇ......」
「カツ食べてその反応はどうかと」
カツ定食である。シェフの兵が列島出身だからメニューに追加されたが始まりだが、なんやかんや常設メニューになった。
「いいじゃないか、染みるもんは染みるんだ。そういや不知笑君はやけに僕に敬意を持ってないよね。ここ連邦軍だよ?」
連邦軍とはクソみたいな伝統のせいで必要以上に縦割り的な組織で、同階級でも年齢で差があったりする。最近はそんな事無くなってきたが。
「歳下上司ですよ。歳どころか物理的にも下じゃないですか」
バルツァフは現在32歳、身長153cm
不知笑は38歳の178cmである
「君ここが連邦軍っての忘れてるね?社会の底に行きたいのかい?」
「まぁいいじゃないですか。」
「何も良くないが?......ったく、まぁいいか」
「ですよね、時にバルツァフさん」
「閣下か上級大将とか付けてよ。でなんだい?」
「閣下が防空軍内、特に中央や東方の上層部から疎ましく思われてると風の噂で聞いたのですが。本当ですか?」
唐突に投げかけられた質問に対して、バルツァフの目は少し鋭く、しかし悲しみをあらわにする。
「最近の風はやけに情報を乗せてくるんだね?まぁ、ホントの事さ。理由は分かるだろ?」
「家系とコネで入った上に歳上を全く敬わない無礼な小娘だからですね?」
「君の特技は自己紹介かい?それとも不名誉除隊RTAでもしてるのかい?まぁ合ってるからこんなもんにしとこう。君仕事の腕はかなりいいからな。」
「そう、それに関わる事で1つ言おう。僕が左遷されようと降格されようと君には着いて来てもらうぞ。」
「......それ、私が言うべきですよね。あなたが何処へ行こうと着いて行くって。」
「そういうもんなのかい?何にせよ、僕は君を手離したくない。正直な所、僕は君が好きだ。仕事は人一倍出来るし、なんやかんやで気遣いも出来る。あと顔がいい」
「......閣下、頭おかしいって言われませんか?人居ないとは言え、いきなり好きとか」
「将校なんかこんくらい頭がおかしく無いとやっていけない。ほら飯食い切ったなら仕事に戻るぞ。」
「私も将校なんですけどね」
いつの間にか食い切った食器を片付け、執務室への道を再び歩く
傍から見れば身長差カップルにしかみえない。
ちなみにこれを不知笑の前で言うと黙って減給降格ダブルパンチにされるらしい




