第3章 弾幕射撃
「第2小隊長より全車1時!距離3900!弾種榴弾!撃てェッ!」
T-90MSの一個小隊9両から放たれた破砕榴弾は残党の固まる陣地に直撃、地面を掘り返して壊滅させた
「こちら7車!11時の方向3600に敵残党確認!BMPTやっちまぇッ!」
「同地点からATM!発射機をぶち壊せ!」
随伴のテルミナートル2両、4門の2A42連装30mm機関砲から放たれた榴弾は地面をズタズタと切り裂き、炸薬と運動エネルギーの暴力により発射機を破壊した
「よくやったぁ!後で酒を飲ませてやる!」
「調子に乗るな7車!死にたいのか!」
その時、小隊長車右後方より、爆炎が上がった
「こちら4車!右前方からATMを被弾!射点を潰しましたが駆動系をやられました!」
「小隊長より4車、BMPTの援護を受けつつ回収を待て、危険なら退避しろ」
「4車了解、小隊長すみません……」
「謝るな、BTRを送る。生きて帰れ」
小隊は陣形を再編、速度変わらず突破を目指す
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BMPTは各個の判断に基づき弾幕制圧を実施、残党の命と30mm榴弾をトレードしつつ、戦車の援護を行っていた
「塹壕まで2000を切った!敵戦車が出てくるぞ!」
「行ったそばから来たぞ!2時方向に2両!11時に1両!」
「叩き返せ!BMPTに11時の敵を相手させろ!ATMを使え!全車2時の敵に対し順に射撃!撃たせるな!弾種徹甲!距離1800!」
3BM59の連撃を喰らい1両のT-72は後退も間に合わず砲塔正面と車体正面に直撃を受け行動不能に
もう1両は車体正面に貫通弾2発を受け弾薬庫に誘爆、爆散した
「11時の敵は!報告しろ!」
「ATM2発使用!直撃で撃破しました!」
「よくやった!このまま敵の追撃に移るぞ!」
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塹壕を突破後、小休止のうちに大隊から新たな命令が下令された
曰く、一個小隊を率いて威力偵察をしろ、と
「小隊長正気ですか!我が小隊のみで敵地に突入し威力偵察せよなど……!そもそも、この任務は大隊直属の斥候がやる事のはずです!」
「あぁわかってる!私だって情報の薄い土地に1個小隊で突っ込みたかぁない!……しかし軍隊、特に下の連中は上から『やれ』と言われりゃ『はい分かりました上官殿』つって行かなきゃならんのだ。……納得してくれ、危機的状況に陥れば即時撤退命令を出す」
「……了解しました。小隊長、目標地点は?」
「ここから南東に7kmの地点だ、近いぞ」
「ドローンで見れやしません?」
「地下坑道を転用したものらしい、ドローンでは不十分だと」
「はぁ……しかしそれなら余計大隊付きの斥候が適任では……何らかの増援は?」
「鋭いな。まぁ増援と言ってもBTRが2両とその兵員だけさ」
「了解、やるだけやりましょう。」
「すまんな副官……全員に下令しろ、直ぐに出るぞ」
燃料弾薬を補給したT-90とBTR、その他戦闘車両が続々と心臓を動かし始めた
ドクドクとした生物的な音とは似つかない、鼓膜を揺らす轟音
ディーゼルエンジンの振動が地に響き渡った
「各車前進。楔型陣形、距離90m 進撃するぞ」
少し進んだばかりのところから背の高い草の生え回る草原が広がってきた
「BMP-3Mを前に出して斥候と偵察をさせろ」
彼女の鶴の一声でBMP-3M各車が前進、偵察陣形を組んで小隊前方950mに展開した
「各車、斥候が出ていると言って気を抜くな。」
(先の戦闘でT-90が1両、塹壕の掃討時にしっぺ返しでBMP-Tが1両行動不能になった……戦力はある、しかし……)




