第3章 シーハンティング
「ミサイル警戒装置起動、チャフ・フレアディスペンサーと連動。DIRCM起動、問題なし」
「レーダーチェック、問題なし。IRカメラ起動、感度良好」
「諸島部の上を飛びまわる、目凝らして探せよ」
「カメラと肉眼で索敵たぁ、面倒なこった」
「文句言うな、本国まで遠泳させるぞ。資料は読んだよな?」
「これか、サール2型にコマール型。諸島部の魚雷艇が旧式と言ってもコマールは古すぎやしないか」
「たわけが、どうせ魔改造されてる。それに近すぎると戦闘ヘリだろうが落とされる」
「怖い怖い、見つけたらちゃんと機首向けろよ、このポンコツ横の射角がバカ狭いんだからな」
「文句は設計局に言え、真横の敵はお前がキャノピー開けてクリンコフでも撃ったらどうだ?」
「そりゃないぜナギナ」
長々と冗談を言い合っているが、諸島部まで27kmもある、ヘリの速度じゃ長すぎる
「なんか見えるか?IRあるだろ?」
「10数キロ以遠がヘリのカメラで見えるかよ、レーダーにもなんも映ってないね」
「とりず4~5kmまで近付いて1周ぐるっと回るか」
「にしてもあの諸島?変な形してるな、諸島ってか諸柱だ」
「海の支柱って言われる所以だな、非常に低調な火山活動と元々の形が相まって、砂時計みたいな形の島が乱立してる」
「てことは上から見にくいが下からは狙いやすいし隠れやすいって事か」
「そういうこった」
「あと14km、5分もありゃ着くぞ」
「高度下げるぞ、12mまで落とす」
そう行って操縦桿を押し倒すと軽く-Gがかかりふわりとした浮遊感を感じる
操縦桿を引いて機首をもどすと反作用的なGがかかり座席に押し付けられる
「ほっほー、海面に手がつきそうだぜ」
「何度目かわからん感想を言う暇があるなら島でも見とけ」
「へいへい」
------------------------
「なんか見えるか?」
「いんやぁ……なんに……ん?あ?おい!フレア準備!」
「敵か?!」
「敵のMANPADSとその拠点らしき熱源だ!すぐさま飛んでくるぞ!」
「機首向けるぞスザン!!ATGM準備!」
「レーザー照射!射角よぉし!射程よぉし!」
「カサッカ1-1!ミサイル発射!」
左パイロンの6連ATGM発射機の内1本が放たれる
同時に敵からも対空ミサイルが反撃で飛来してくる
「弾着まで7秒!」
「DIRCMとフレアを信じるぞ!絶対当てろよ!」
ミサイルが風を切りカモフへと向かう
DIRCMが感知し指向する。レーザーがスティンガーのシーカーを焼き、さらにMWRが自動でフレアを撒く
眩んだシーカーは目標を見誤り機体から最も離れたフレアへと食らいつき、消えかけのフレアを追って海面へと突っ込んだ
対象的にこちらのATGMは旋転安定式のままに敵の建物に吸い込まれ、弾薬に直撃でもしたのか爆炎が屋根を破って上空に巻き上がる
しかし1点を潰したと思った次の途端、視界の両端から2本の白煙がこちらに飛来してきていた
「ちぃ!回避機動にはいるぞ!掴まれよ!」
操縦桿を左前に倒し、エンジン出力をあげていく
右のペダルをふみ機首を島に向けながら横滑りの容量で回避を行う
「1時の方向距離3200!敵の魚雷艇が出てきやがった!」
「ここで回避を続けるのはジリ貧だ!島の合間を縫うぞ!」
「ああクソ!お前の操縦技術頼りにするからな!ペラ擦って堕ちるんじゃねぇぞ!」
「わかってらぁ!」
フレアを数発放出した後に諸島の中に突入する
「右に魚雷艇!ちがうガンボート!」
「機関砲準備ィ!右旋回するぞ!」
「捉えた!30mmをくらいやがれぇ!」
機体右下に取り付けられ2A42 30mm機関砲が轟音を発し、APDS弾が放たれる
2秒も撃たなかったが、うっすい装甲のボートは破片になって爆沈した
「すぐ動け!狙うべきは目標だけだ!」
「わかってらァ!」
直ぐに機首を動かし加速する
島と島の間をくぐり抜けて目標を探す……が
「おい!今なんか後ろから飛んできたよな!魚雷艇だのミサイル艇が飛ぶわけないな?!」
「当たり前だ!敵ヘリだ馬鹿野郎!避けろ避けろ!」
「フレアフレア!左旋回!」
高度を落とし左旋回
風圧で水が舞う中で180°その場で旋回し、機首をあげて後退する
「機関砲向けろ機関砲!出てきたらきっちりお返ししてやれ!」
「あたぼうよ!」
島と島の間を縫うように、2機のMi-24が飛来した
「2機か!右の機体を撃て!左はイグラで墜とす!」
機体の右側でMi-24PとKa-52Kの30mm弾が交差する
FCSに補正されたこちらの30mm弾はハインドのキャノピーを突き破り、削り取る
燃料タンクに達した徹甲弾は引火し、火の玉と成って海中に没した
反対側のハインドはHUDの中に展開されたシーカーと重なり、長く震える様な電子音が鳴り響く
それに合わせて引かれたトリガーに応じ、左翼から1発のイグラが放たれる
その目に獲物を捉えて白煙を引いたままイグラはハインドのエンジンへと突っ込み、またひとつ爆炎を海に突き落とした




