第3章 第1話 第2空母打撃群出航
ネバスティン事変発生から9時間後
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アスティア連邦海軍 第1空母打撃群並びに第2空母打撃群麾下の全戦闘艦に対し出航を発令
ストリボーグ級原子力航空母艦3番艦バクー以下改キーロフ級2隻 スラヴァⅡ級4隻を主力とした第2空母打撃群第18任務部隊が南海岸沖300kmに待機している同群第7任務部隊との合流の為出航、灯火管制の元全ての戦闘艦が港から姿を消した
……アスティア南海岸沖340km 2242
TF18 第18任務部隊所属
ゾヴレメンヌイⅢ級駆逐艦17番艦 《ヴォルダグ》
「艦長、あがられます」
コツコツと足音を鳴らし、艦橋へと上がってきた彼
名をナイドリクト・デーニッツ海軍中佐である
「状況は?」
「対潜対空並びに対水上レーダーに感なし、艦隊速力19ktで共和国への艦対地攻撃の為、ローレント沖310kmに向けて南南東に向かっています」
「いい調子だ。艦橋からCICへ、FCSに異常はないか?」
「CICより艦橋、異常ありません」
「よし、これより戦時下非戦闘状態時間割に則り第3種戦闘配置を敷く、各員6時間交代で配置につけ」
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ローレント沖570km 2134
空母打撃群旗艦 原子力航空母艦キエフ所属の空母航空団が対地攻撃の為に発艦してから30分後。
雲一つない星の海の下、過去何十年もの間に鉄と重油、そして魂が沈んで淀みきった泥の海の上に浮かび、静寂に支配された鋼鉄の城塞に、それを打ち破るには大き過ぎる声が響いた
「空母キエフ所属の早期警戒管制機から通信!艦隊右舷前方より敵対艦ミサイル飛来!数、50!」
「距離580!速度マッハ0.8~1.1!高度14000から33000ft!」
「総員第1種戦闘配置!繰り返す!総員第1種戦闘配置につけ!」
ヂリリリリリとベルの音が艦内に響き渡り、赤いランプによって染め上げられている
ドタバタと足音が交差し、CICの席はすぐさま埋め尽くされた
「艦隊回頭!おーもかーじ!」
「艦隊運動に合わせろ!おーもかーじ!」
「CICより艦橋へ!目標との距離230km!」
「キエフCICから通信!ミサイルはエグゾセ36発に!ッ?!かっ…K-300P バスティオン 14発!」
「最優先はバスティオン!叩き落とせ!」
「改キーロフ級7番艦 ディルヒスキーが艦隊防空戦闘開始!」
「スラヴァⅡ級11、17番艦 ウルブリヒト、スターリンも艦隊防空戦闘を開始!」
「目標識別!3M317発射準備!艦首艦中央VLS1~7番まで解放!対空ミサイル発射始め!」
『撃てぇ!』
艦首主砲後部と延長された船体中央にあるVLSの口が開き、そこから噴煙が巻き上がる
その中からミサイルが姿を表し、白い尾を引いて直上に上昇して行った
「近接対空防御準備!コールチク、パーンツィリ起動!」
「主砲VT弾装填!1番2番自由射撃許可よろし!」
「空母を守れッ!絶対に通すなッ!」
「対空ミサイル初弾命中!14……22発を撃墜しました!」
「全艦近接対空火器使用始め!巡洋艦戦隊、キンジャール発射!」
「キエフも個艦防空戦闘を開始!」
「対空ミサイル到達まで10…9…8…7…6…5…4…3…2…1!着弾!」
「敵ミサイル残数14……9……6……3……1……0!全弾撃墜!敵ミサイル残数0!全弾撃墜に成功!」
ミサイルを全て落とした。その言葉がCICから艦橋へ、艦橋から艦内へと広がる。
艦内にどっと歓喜の声が満ちる中、落ち着いた声が館内に鳴り響いた
「総員、第1種戦闘配置解除、第2種戦闘配置へ移行せよ。FCS要員は対潜対空、対水上監視を厳にせよ」
「対空レーダーに感なし。第二波はないようです」
「対潜レーダーに感なし」
「対水上レーダーも感ありません。艦隊半径320kmに敵性艦艇なし。」
「艦橋よりCICへ、全レーダーに感なし。第3種戦闘配置への移行を進言します」
「いいだろう。2330をもって第3種戦闘配置へ移行する。」
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ゾヴレメンヌイⅢ級駆逐艦「ヴォルダグ」 艦橋
「乗り切りましたね、艦長」
「死者も被害艦も無し。完勝だな」
「ですが恐らく、いや十中八九、ミサイル発射母機への報復があるはずです。」
「敵艦隊かもしれんのにか」
「だったとしても、全て水底送りにするだけですよ。連中の水葬方法は知らないですけどね」




