第2章 8話 陣地構築と歓迎
「そうだ!そのATGMはここだ!おい!そこの重機関銃はあそこだ!早く土嚢と蛸壺を作れ!」
「ヴィクトルさん!対戦車地雷の散布は終わりました!」
「よくやった、ATGMの配置を手伝え」
急ピッチで陣地構築を始め2時間半程、輸送機が来るまでもう少しだ
友軍はここの南東から4km程離れた地点に着地しここを目指すらしい
「機関銃用の銃眼が出来た!MG3と弾薬を900発くれ!」
「おい!土嚢を早く!」
「1個班を空挺部隊の誘導に出せ!」
「そこの残骸からMG持ってこい!」
「もっと弾薬を持ってこい!」
基地内では部隊が慌ただしく行き来していた
「ATGMはあるだけ設置しました!MGはあと20挺あります!」
「4挺設置しろ、残りは予備に回せ。」
「了解」
「120mm迫撃砲の配置は終わりました!」
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「ヴィクトルさん、肉ありますか!」
「あぁ、今持っていく」
「早くしてください!全然足りません!」
陣地構築に一段落がつき、更に増援の中隊が到達したので我々は現在、在庫の食料を使い中隊の歓迎会も兼ねBBQを開いていた
「牛肉くれ、持てるだけな」
「よし、持ってけよ、肩とタンだ」
「ヴィクトル、これも持ってけ」
「分かりました……んっ…重いですね」
右手に肉を、左手に4Lの飲み物を持って陣地に帰る
「持ってきたぞ。肩とタンに、飲みもんだ」
「ありがとうございます、そこに置いておいて下さい」
「エカテリーナ、お前も食え、肉は俺が焼いておく」
「あ、分隊長!いえそんな……」
「いいんだ、俺くらいになると脂っこいのは重くてな。」
「…わかりました、ありがとうございます」
そう言ってトングを渡された分隊長は手際よく肉をグリルに乗せて、次々と焼き目をつけていった
グリルと言っても車両の残骸等から剥ぎ取ったスクラップと有刺鉄線を組み合わせた簡易的な物だ
俺も肉と飲み物を取り残骸に腰を下ろす
増援の中隊は迫撃砲8門にコルネット対戦車ミサイルを4基20発さらに23mm連装対空機関砲二基、歩兵160人、極めつけにT-72B4を1両だけだが持ってきやがった
T-72は既に敵が来ると予想される方向に配置しており、その他の重装備も最大限効果を発揮する事が出来る地点に備え付けられた
俺達は最前線で敵が戦車や鉄条網に取り付くのを阻止するのが役割だ
(弾薬も士気も十分、しかしこの戦力で守り切れるか……)
俺はグリルを囲って笑って、叫んで、豪快に肉に齧り付いている仲間に目を向ける
肩を組んで、やっすい酒……じゃなくて1Lの水を扇いでいる
「お隣、失礼しますね」
「……エカテリーナか、どうしたんだ」
「いえ、ちょっと疲れまして……」
疲れたか、休む暇はあまり無かったからな
「なら、好きなだけ休んでいけ」
「ありがとうございます……ヴィクトルさんは混ざらないんですか?」
「そういう気分じゃないんだ、今はな。生きて帰れたらバカ騒ぎして飲み食いしてやる」
西の山向こうに太陽が沈み、東の平野から月が登る
「いいですね、その時には私も混ぜてください」
「当たり前だ、もう戦友だからな。だが、着いてこれるか?空挺軍の祝勝会は激しいぞ」
「なに、これから何回もしないといけないんですから。着いていきますよ」
「そうだな……」
しばしの間、沈黙が続く
そして……
「この歌は鳴り止まぬさ!敵が迫りくれど!」
「歌ともに行く貨車は!前線へと続く!」
(スラブ娘の別れか……懐かしい歌を……)
騒いでたと思ってた連中が歌っていた
「我が国に危機あらば!」
「我ら皆命捨てるだろう!」
それを眺めていると誰かが俺たちに気付いたのか
「おい!そこの2人もこい!歌おうぜ!」
と誘ってきた
「十分休んだか?」
「まぁ、あと数時間は動けるくらいには」
「なら十分だ、行くぞ」




