第1章 第28話 処分
地上軍への対地支援任務中に起きた所属不明機の出現
その正体は合衆国からの亡命を希望する2機の航空機だった
亡命機を護衛しつつランドバルデンに帰還せよと言う命令を受け、指揮下の機を全て集合させ帰路につこうとした時、後方からさらに1機の所属不明機が急速接近、さらに火器管制レーダーを照射してきた。
それに対しグラークリードは警告を放つもそれを無視しさらにはグラークリードに対しAAMを発射
亡命機並びに部隊機の撤退援護のためグラークリードは所属不明機と交戦を開始、近距離格闘戦の末所属不明機を撃墜、パイロットの脱出は確認されなかった
「はい……そうです、合衆国空軍所属の機体とそのパイロット2人が、亡命を希望しています……はい、"アレ"は手土産だと……はいそうです、同じく合衆国の戦闘機を交戦の末に撃墜したと……ミハイル・グズネツォフ、階級は少佐です……了解しました。では、後ほど」
(全く……やってくれたねグーズ、大変な事になるぞ)
薄暗い司令室の窓から滑走路を見つめる彼女の目には、8機のSu-35と、2機のF-22が映っていた
合衆国空軍機を撃墜、さらに別の合衆国空軍機の亡命を受けた俺は目の前で起きている事と想像していた事の落差に驚きを隠せなかった
「合衆国の新鋭機を叩き落としたんだって?!すげぇな!さすが連邦のエースだ!」
「Su-35でどうやったんだ?!相手はF-22だったらしいじゃねぇか?!」
「合衆国がなんぼのもんだ!連邦に勝てるならかかってこいや!」
てっきり大将以下基地全員に罵詈雑言を浴びせられると思っていた俺は今歓喜の声に包まれていた
そうして俺がどうしていいか分からずにいると、奥から何やら強面の人達がぞろぞろと歩いてきた
「ミハイル・グズネツォフ少佐はどこだ!」
「はっ!私です!」
「アスティア連邦国家安全保障省のユーリ・マレンコフだ!貴様には中立国機撃墜の容疑がかかっている!同行してもらうぞ!」
「……まぁ、そうなるわな」
そうして俺が連れていかれたのはランドバルデンから南西に300kmほど離れた連邦の主要都市の一つである「ソニーネングラード」だ
都市の中心部には大きな役所があり、その北東にある「連邦東部方面軍総司令部」の一室にぶち込まれ取り調べを受けていた
「……なるほど、警告を発したに関わらずU03はそれを無視しミサイルを発射、やむなく撃墜したと……ほう……」
「戦域コマンドからは既に撃墜許可は得ていました、私に非はないと思うのですが」
「その点に関しては連邦と合衆国と連合と話し合わんとなんとも、しかしまぁ複雑よ」
「3カ国を巻き込んでしまいましたしね」
「それもあるが、なぜ合衆国の戦闘機、しかも最新ブロックの機体があそこにいたのか、なぜ連邦に亡命しようとしたのか、なぜ連邦機を撃墜しようとしたのか……全くもってわからん」
一通りの取り調べを受けた後俺は一時的に釈放され、軍が手配したホテルに泊まっていた
(F-22のあの性能は間違いなく連邦のSu-35SMやSu-30SMDやSM2を上回っている……新型機を迅速に配備するかSMをSM4相当にアップグレードしなければ合衆国と対峙する時、航空優勢を握る事が難しくなるだろう……)
開発中の新型機とやらがどう言うものか分からないが少なくともF-22に対抗出来るものでないと……
(合衆国に機体を返還する前に徹底的に調べあげてもらわないと……)
そして一掴みの願いとともに床に付き、夢も見ることなく朝を迎えた
取り調べを受けてから1週間ほどが経った時俺は東部方面軍総司令部で軍法会議にかけられていた
戦時国際法だの中立国条約だのなんだのと言葉が飛び交っている
「グラークリードはFCSを照射され2度警告を発したにも関わらず、U03はそれを無視しグラークリードと交戦を開始しました。中立国条約第77条8項によれば中立国は自国を経由させ戦時国家に対し対戦国またはそれに準ずる国家の戦力を投入する事を禁ずる、とあります。ならばこの行動は……」
「しかし国際法102条284項には領空侵犯を犯し警告に従わない、または警告を受けずとも被領空侵犯国の領空または国境から……」
そこから数十分、時折来る事実確認に受け答えつつ不安を覚えながらもじっと判決を待っていた
そして……
「主文、、被告の行った戦闘行動は戦時国際法に抵触するものであるがそれは警告を無視し戦闘行動に移った合衆国軍機に対し、亡命機並びに指揮下のものを守ろうと下が故であり、双方に責任があり、しかし被告の行動は賞賛されるべきものである。よって情状酌量の余地ありとし2/4の減給と30日間の謹慎処分とする。以上!閉廷!」




