第1章前日譚 その道の先は栄華か破滅か
彗暦2035年、新連邦歴44年6月8日
大サーイェスト大陸の南西に位置する超大国アスティア・ローレシア連邦は属国であったローレント共和国、長きに渡る対立関係を持つランバスタ公国との間に起きたネバスティン事変をキッカケにして連邦は2カ国に対し宣戦を布告。
連邦防空軍はその空軍力により開戦3日でローレント上空の「絶対的航空優勢」を確保、翌日には親衛軍率いる第2機械化装甲軍集団第8親衛戦車軍の奇襲突撃により東部国境線260kmを突破
まともな支援も命令も受けることも出来なかった共和国軍は次々に敗走を重ね、遂に連邦地上軍はローレント首都ローズバルグより35kmに迫り、包囲戦を展開した。
時は開戦まで遡り連邦と公国の国境線付近では、連邦地上軍第1機械化装甲軍集団と公国第7装甲軍集団が睨み合っていた
新興国である連邦の前身たる旧帝国の崩壊をキッカケに武力を用いて独立した共和国と違い、800年を超える歴史を持つ公国は、連邦との開戦を予期し、大陸の資本主義国家から数多の兵器を秘密裏に輸入、局地的には連邦の親衛装甲軍と拮抗する戦力を展開しており、多大なる損害が考慮されるため連邦軍は進撃を躊躇していた。
睨み合いが始まってから1週間後の6月15日。
連邦軍は「前線重防御陣地殲滅計画」に基づき一昨年から配備されていた200発の新型中距離弾道弾の内75発を使用、M9.5に迫る大型燃料気化弾頭を撃ち落とす術は公国に無く戦線に大規模な穴が発生。
そこに第1機械化装甲軍集団隷下の第4機械化装甲戦闘団がなだれ込み戦線を拡張、同時に同軍集団隷下の第17親衛機械化軍も別の穴から突撃を敢行し、公国最大の軍である第7装甲軍集団を包囲し約15万人の公国軍を殲滅した
その後連邦地上軍は散発的に反撃してくる残党を狩りつつ無人の野を進撃、そして遂に公国首都ヴェルサイティンを包囲した。