第1章 第23話 一期一会
渋滞により基地に着いたのは1340、彼女らの移動開始は1700であるがこちらの余裕が無い
俺はクラウンでそのまま戦車隊の所へ向かって近場に止めた
そして最後に渡すものを確認して車を降りる。
「ジーナ少佐はいるか」
「少佐ならあっちの大隊長車の方に居ましたよ。案内しましょうか?」
「いや、大丈夫だ。ありがとう」
俺は彼が指し示した方向に歩を進める
2~3分歩くと、T-72B3の砲塔上部に寝転んでいる彼女を見つけた
「やぁジーナ少佐、元気か?」
そう声を掛けると彼女は上体を起こして
「元気……まぁ元気だな、それで?どうしたグズネツォフ少佐」
「そろそろお別れだからな、これを渡しておきたかったんだ」
そう言ってプレゼントを手渡すと彼女は「へ?あ、ありがとう」と素頓狂な声を出して驚く
「いやなに色々と世話になったしな、ちょっとお礼をしたかったんだ。それにあと少しで次の経由地までの移動が始まるだろ?餞別としても渡しておきたくてな」
「……ふぅ…っはは!先を越されたか」
「先を越された……という事は?」
「考えている通りだ、着いてきてくれ……はは!いやぁまったく!はははっ!」
そんな笑う事かと思いつつも彼女の後をついて行く
そして着いたのは
「これって陸軍の武器弾薬の運搬車だよな?」
「ああ、ちょっと待っててくれ」
彼女はその言葉と共にトラックの荷台に飛び乗り奥へと消える
しばらくして戻ってきた彼女は、その身長の3/4はありそうなウェポンケースを持ってきていた
「おいしょっと……ほら、これが君へのプレゼントだ」
そう言って開かれたウェポンケースの中には丁寧にカスタムされたAK-12Mが納められていた
「AK?!しかも結構カスタムされてないか?」
「あぁ、AK-12MにRMOパッケージを適用したものだ。ハンドガードにはグリップを、右側面にはレーザーサイト、照準器も外国製の光学照準器にしてある。」
「すごいな……にしてもどうして俺にAKを?」
「この前君の機体を色々と見せてもらったよな」
1週間も経ってない、覚えている
「あぁ……それが?」
「君さ、脱出後用の生存キット収納ボックスほぼ空だったよな」
「あぁ、色々とあって補充が遅れてるんだ」
「生存キットの補充が遅れる?んな事あるのか?」
「まぁな、空軍も色々と事情があるんだ」
なんとか咄嗟に誤魔化しの言葉を出す
ふーんという彼女の言葉に安堵する
遅れてるってのは嘘で普通に補充願書を書いていないだけだ
まぁ書いたとしても燃料弾薬が優先されて来るのはどうせ1ヶ月は後になるだろうがな。がはは!
「まぁとにかく私はな、君に死んで欲しくないんだ。万が一にでも君が叩き落とされて、敵地に着地したとする」
「おう」
「で、本来生存キットがあれば助かった状況だったのに、それがないせいで敵に殺されただの、餓死したりだのしてみろ」
大体の末路は見える
「どうせメディアの連中は親の仇が如く叩くだろうな。東部方面防空軍切ってのエースがそんな理由で死んじゃな」
「やけに自尊心が高いな?まぁその通りだ。まぁそれに……なんだ、その……つまり私はお前にぃ…」
「あぁ、俺に死んで欲しくないんだな?」
その言葉に彼女は顔を背けてしまう
「まぁそうだ。別にお前への贈り物は別にそれだけじゃない」
「……んう?」
いや普通に変な声が出た
「聞いてわからんか?なに、別にAKだけが君への贈り物じゃないんだよ……っほら!」
いつの間にか彼女はまたトラックからキャリーケース程の深緑色のボックスを持ってきていた
「君用の生存キット、全て中身は一級品だ。いくつか地上軍からも頂いてきた」
「大丈夫なのか?」
横流しかもしれないとは……いやはや恐ろしい
「大丈夫。ちゃんと許可は取ってある。」
「ならいいか……」
「入っているのは長期保存可能な水が1.5L 4日分の乾燥軽食 5.45mm弾マガジン3本とかだな」
「いや、ありがたいな、本当に」
「なんの……ほら、君の機体まで持ってくぞ。ちょうどそこに車両もある」
そんなこんなで出撃待機中のグラーク隊が居るエプロンまで移動する
「あと1時間程度だからさっさと詰め込まないとな」
そう言って自機の前輪の下に潜り前輪格納庫内のハッチを開ける
昇降用レールを展開し脱出キットを下ろす
60cm×60cm×100cmの強化木製の箱を開ける
「んーと……入るな。よし」
AKのストックを折りたたみマガジン4本と共に入れる
次に3本の500mlの水を入れる
続いて食料や防寒や防暑にも使える合羽、簡易医療キット等を詰めていく
20分もせずに全て詰め込み終わる
「よし、これで全部か……」
「あぁ」
俺の言葉に彼女はそう短く返す
「そろそろ出撃準備の号令がかかるだろう。そうなったらお別れだ」
「……」
俺が別れの言葉を言おうとした時、基地内のサイレンが甲高く鳴り始める
「グラーク隊出撃準備!繰り返す!グラーク隊出撃準備!装備を整え搭乗し出撃に備えよ!」




