第1章 第22話 不運にも
彼女が開いた箱の中には銀色のチェーンと小さなバラとクローバーのペンダントトップが入っていた
「おぉ、いい物を持って来てくれたな、ありがとう。」
「いえ、こちらを組み合わせまして……こうなりますよ、どうですか?」
慣れた手つきで3つを組み合わせ、ひとつのペンダントが出来た。
「いいな……ふむ……じゃあこれと…すまん、さっき良さそうなレタープレートがあったんだ、持ってきていいか?」
「分かりました、お待ちしております」
その言葉を聞くと同時に踵を返し目的の場所でそれをみつけてカウンターに戻る
「すまなんな、これとそれを頂こう」
「分かりました、ではカスタムメイドのペンダントとレタープレート、それと軍関係者割引含めまして245ベルツ(28665円)になります。」
俺は財布からお札を抜き出しちょうどで支払う
「245ベルツ丁度ですね、贈り物という事で、特別な包装ができますがどうしますか?」
そしてカウンターの下から桜と薔薇がそれぞれ装飾として描かれた白い長方形の包装箱が取り出された
さらに2枚の、それぞれ青のデジタル模様と赤の三本線が模様として描かれた包装紙も取り出された
「こちらを組みあわせた4通りで包装できますが、しますか?」
「なら……そうだな、この桜の箱と青い包装紙で頼む」
「わかりました、包装しましたらお持ちしますので、お車のそばでお待ちください」
「わかった、頼んだぞ」
彼女のはい!という言葉を背に店を出て車のそばで待っていると
「こんばんわーお兄さん、さっきいいお店から出てきたね?」
どこにいたのか、4人のチャラっちい悪ガキに抜け出す通路を防がれてしまった
「なんだお前ら?悪い事はいわん、さっさと何処かに行け」
「んだお兄さん、自分の状況がわからないんだ?こりゃお兄さんじゃなくておっさんだな」
4人のガキの中で1番年上に見えるリーダー格の男がそうワケのわからんことを言うと、他の奴らはゲラゲラと声を立てて笑う
そしてその中の2人が懐から折りたたみナイフを取り出して構える
「ガタガタ言わずに金と車のキーだけ置いてってくれれば良かったんだけどな。」
「そりゃ残念ながら無理だ、これから予定が詰まってんだ」
「ならこっちもちょっと荒い手を使わないとな、やれッ!」
その声と同時に素手とナイフが1人ずつ突っ込んでくる
突き出されたナイフを弾き落としその腕を掴んで背負い投げをかける
そして素手の奴が怯んでいる間にベルトに挟んでた拳銃を抜きコッキング
後ろのリーダー格の足元に2発と起きようとしてる奴、残りふたりにも2発ずつ撃ち込む
「全員動くな!」
それだけを発し、すぐに連邦保安局に通報する
30秒もせずにサイレンの音が近づいてくる、相当近場にユニットがいたんだろう
白黒のパトカーが駐車場に止まり警官が2人降りてくる
「銃を捨てろ!身分証を出せ!早く!」
彼の指示に従い拳銃からマガジンを抜き再度コッキングして銃をからにする
「捨てろ!早く!撃つぞ!」
「今捨てる!やめろ!」
銃を地面に投げ捨て足で警官の方に流す
「身分証は!」
「これだ、なにかは分かるな?」
空軍の身分証明書を見せると今までの態度を一変させる
この国にて軍人の身分証明書はちょっとした権力を持っており、小さな問題程度ならこれをかざすだけで不問にされる
小さな問題ってのはこういういざこざやちょっとした揉め事などだ
もちろん窃盗や一方的な暴力沙汰などは一般人同様連行される
この国の警官は軍人上がり、それも戦地帰りが多いので警官と軍人が揉めることはあまりない
「失礼、何があったか教えて頂きますか?」
「応援は?あと手帳も見せてくれ」
「どうぞ、応援は呼びました」
「よくやった。簡単に言うなら、そこの店で同僚へのプレゼントを買ったんだ、んで気持ち良く車で帰ろうとしたらこいつらに絡まれたんだ。8発威嚇で撃った、当たっちゃいないよ、多分な」
「あぁ……分かりました、今日は基地にお戻りください。もし何らかの事をやらかしていたら連邦国家軍警察が伺うかもしれないので所属をお願いします」
「連邦防空軍東部方面防空軍、ランドバルデン戦略空軍基地所属第112戦略飛行隊隷下第76飛行郡第1大隊大隊長、ミハイル・クズネツォフ防空軍少佐だ」
「少佐さんでしたか、ならおそらく大丈夫でしょう。ありがとうございました」
「もう戻っていいんだな?」
「はい、もう面倒事が起きないといいですね」
「全くだ、それじゃ買ったものを受け取って帰らせてもらう」
「お疲れ様でした」「あぁ、おつかれさん」
そう言って先程の店員を探していると少し先で別の警察官に事情聴取されている所が目に入った
「失礼、防空軍少佐だ、そこの彼女に用があってな。」
俺が身分証をかざしながら2人に近づく
警察官が敬礼をしてきたので返礼する
「君、包装はできたかな?」
「はい!こちらです」
「ありがとう、また来るかもしれない」
「ありがとうございました!またのご来店お待ちしております!」
俺はそれを受け取り、迷惑代として200ベルツを渡しておく
「えっこんなにもらっちゃ」
「迷惑かけたからな、お詫びだよ」
「あっえっと……」
しどろもどろしている彼女を後ろに乗ってきたクラウンにエンジンをかけて駐車場からでる
時刻は昼過ぎになろうかと言う時、道路は混雑しており俺は来た時のプラスを余裕で超える時間をかけて帰路に着いた




