第1章 第14話 疲れと変わりゆく世界
足早に司令室に行き、扉の前で息を整えてから扉を3回ノックする
「バルツァフ司令、グラーク隊CAP/strike任務から帰還しましたので報告に上がりました」
返事が来ない
「司令?いらっしゃらないのですか?」
………
「……ッ失礼します!」
何かあったのではと心配になり扉を開けて入室した俺たちの前には……
「Zzz……あぁ……つら……Zzz……」
ソファに横たわり空軍将校の制服のまま寝ているバルツァフの姿があった
「あー……?」
「これは起こさない方がいいかな?」
「え……でも……えー…」
俺たちがどうしようか悩んでいると
「ん……ん、おーグーズにアスカじゃん…起こしてくれてよかったのに……」
もしかしてだが寝ぼけてるのかこの人
「ねぇ、バルちゃん」
「どしたー?」
やっぱ寝ぼけてないか
「ここどこか分かる?さすがに分かるよね?ね?」
「あぁと……ロストークの……」
「違うね」
「違うな」
口を合わせて否定する。さっさと起きて報告をまとめてもらわないといけないので現在の状況を事細かに説明することにした。
親衛防空軍上級大将に、しかと防空軍の中でも数少ない上級大将にだ。
「いいか?バルツァフ上級大将、あなたがいるのは連邦防空軍の基地であるランドバルデン戦略空軍基地で、俺達はいまさっきCAP/strike任務を終えてこのに帰ってきた。んであなたに戦果を報告してまとめてもらうために今ここにいる。オーケー?」
若干早口で伝える。声も少し大きくしてだ。
「あぁ……あっえ?あっおかえり?おはよう?」
バルツァフは言われた事を理解したのかバッと飛び起きた。ちょっと混乱してるのか言葉の最後に疑問符が付いている
「あぁ、ただいま。起こしといてなんだが疲れてたみたいだな、何かあったのか?」
「あぁ、ちょっと例の件でね、北部方面軍の参謀達と話をしていたんだ。」
例の件つまりは……
「ノルマン連合の正規軍派遣の可能性についてか。」
「そうだね。もしかしたら近々連中が参戦してくるかもしれないとかめんどくさい事を色々と話し合ってたら、すっごい疲れてね」
「そりゃお疲れ様だ。ほら2人ともコーヒーだよ」
「お、さんきゅ。」「ありがとー」
アスカがコーヒーを持ってきてくれたのでありがたくいただく。
バルツァフはズズっとのみ、話を続ける
「決まった事としては北部方面軍のデフコンレベルを3Aから2Bまであげること、それに伴い……」
なんか機密情報言おうとしてないかこの人
「あー待て待て、今から言おうとしてることは機密情報だったりしないか?その場合俺達の方がやばいかもしれないが」
するとバルツァフは「あーどうだろ」と考え始めたが直ぐに
「まあ大丈夫じゃないかな。」
と答えた。まぁ大丈夫じゃないかなとは、かなり雑な答えだとは思ったが。
「やけに不安になる答えだな。」
「何大丈夫さ。」
俺がその答えに不安を示しているとアスカが質問をなげかけてくる
「ところでさ、3Aから2Bに上がるってことはもしかしてうちら、移動することになる?」
デフコンレベル2B、それは方面軍における警戒レベルを表すもので、この戦争が幕を開けてから全方面軍は無線を機密周波数に変更しており、陸海軍は知らんが防空軍は常時スクランブル体制をとっていた。
それに今回の主戦線となっている東部方面軍ではデフコンレベルが1Cになっている。
レベル1Cとはつまり「準総力戦体制」であり、発令された方面軍では全部隊に対し臨戦態勢を下令しさらに地上軍には前進並びに防衛陣地の構築、兵站の優先などが指示される
防空軍には基地に所属する部隊の1/3または1/2の即時出撃準備、全民間機に対する航空優先権などが下令される
「んーにゃ、北部方面の防空軍は十分な数があるから移動は無いね、君達はこのまま対公国戦を続ける事になる」
「なるほど、了解した。」
「うん、あってか君達は戦果を報告しに来たんじゃないのかい?」
そうだった。こいつを起こすのに気を取られて忘れてた。
てなわけで俺達は部隊の総合戦果を報告し明日の大まかな日程を伝えられた。
「了解、明日は1000に南部方面軍から北部方面軍への増援として友軍戦車隊がここを中継地として3日ほど滞在すると」
「そゆこと、くれぐれもトラブルとか起こさないでくれよ?」
起こすな、つまりこちらからは何も言うなと言う事だ。
「わかった、部下たちにも言い聞かせておくよ」
「頼むよ〜、連邦防空軍と地上軍の仲は悪いわけじゃないから怒らないと思うけどね」
「わーったわーった」
念を押してくるので軽く受けておく
「わかったならほら早く行きたまえ、私は早くベッドで寝たいんだ」
さっきからソワソワしてると思ったら寝たいのかこの人、まぁ疲れてるようだし撤収する事にしよう
「おう、しっかり寝るんだぞ。それじゃあおやすみ、親愛なる上級大将」
「おやすみーバルちゃん、またあした〜!」
「おやすみー」
その声を背に俺達は司令室を後にした




