第1章 第11話 転機Ⅹ
翌日の朝0900
「ようやく戦線が動く……けどもこの戦線の拡大がいい方向に動くとは限らないな……」
「まったく、連合も厄介な事に首を突っ込んだね」
現在俺たちは公国防衛戦の突破殲滅を目的として行われる「地獄の業火作戦」の為に連邦地上軍の支援を行っている。
支援と言っても散発的に来るCAS機の撃墜と局地的な近接航空支援が主任務であり、現在グラーク隊14機で既に29機の敵航空機を撃墜、30箇所の防御陣地を吹き飛ばしている。
「にしても隊長、ここまでやっても連中の防御砲火が弱まる気配が全くしてないですね」
「だな、流石第4機械化装甲戦闘団と拮抗してるだけある」
本作戦の為に第1機械化装甲軍集団隷下の第4機械化装甲戦闘団が一時的に増強され、公国の防衛戦に対し少しずつ迫っている。
「でもこんな事しなくても、戦力を増強して無理やり突破するのとか……」
まぁ、ツェルニの言うこともわかるが……
「だな、だが例えばあの戦線を通常砲火力と機甲師団で突破したら、どれだけの敵がのこる?」
「たしかに……」
「それにもし取り逃した連中にゲリラ戦法でも取られちゃ敵わん」
ゲリラ戦法の厄介さはこれを読んでる皆がわかるだろう
「だからこそ大型燃料気化弾頭で吹き飛ばすべきだと軍上層部は考えたんだろうな」
『こちら第4機械化装甲戦闘団隷下第6野戦防空大隊、識別コードDC57だ、そこから南南東の方向 方位163 距離70kmから敵のCAS機が6機接近中』
『DC57 グラーク1-1了解 迎撃の必要があるか?』
『野戦防空ってのは最終手段だ、分かるな?』
『グラーク1-1了解した、全部叩き落とす』
『頼んだぞ、アウト』
「よーしグラーク1-1から1-7は着いてこい、2-1から2-7までは上空待機だ」
「グラーク2-1 ツェルニ了解 待機します」
14機のV隊形から7機が離脱し南南東に向かう
残った7機は隊形を組み直し高度2500から4500まで上昇する
今回はマルチロール任務のためグラーク1-1~1-7まではR-73×4 R-27ET×6 FAB-250×24発で武装している
ほとんどの機体は既にR-27ET×3 R-73×1を使用し爆弾は残り6発のみ残っている
南南東に進路をとり数分、レーダー上に60km先を2機編隊3個が2km間隔で飛行しているのが映った
「レーダーコンタクト ホットだ、推定速度650で飛行している、レーダー反応からしても恐らくAV-8Bだろう」
作戦開始は0940、あと40分で叩き落として退避するには一撃で殆どを叩き落とす必要がある
「よし、全機高度4000まで上昇、厚い雲の上から奇襲するぞ、アフターバーナー全開!フルスロットル!」
そう言うと7機のSu-35Sが一気に機首をあげ音の壁を超えながら厚い雲を切り裂いていく
30秒もせず高度4000に到達した
『グラーク1-1よりDC57へ』
『こちらDC57 グラーク1 どうぞ』
『簡易的な空中管制を要請する、敵機の編隊とこちらの編隊がレーダー上で被さるように誘導してくれ』
『できない訳では無いが正確性に欠けるぞ、いいのか?』
『構わん、頼むぞ』
『了解した、じゃあ進路を2度右へ変更しろ、360秒程度で……いや待て、敵機が930に増速した、接触まで180秒』
『了解した』
編隊は既に水平飛行に移っており、速度は1400程度
「全機!マスターアームオン!セーフティー解除!一撃離脱で全て叩き落とすぞ!」
「Да-с!」
「よし!最初に1-2から1-7が降下してR-73で叩き落とせ、もし取り残しがあったら最後に俺が降下してお零れを貰おう」
『DC57からグラーク1-1へ30秒で接触する、20カウント開始』
19…18…17…16…15
「全機しっかりお仲間の元に送ってやれ」
9…8…7…6…5
「4…3…2…1…全機降下!降下!降下!」




