第1章 第9話 転機Ⅷ
アスカが言ったことが本当ならばまずい……早急に帰投して報告せねば……
とりあえずグラーク3~14には護衛に戻るように伝えて合流させた
「こちらグラーク1よりランドバルデン戦略空軍基地へ」
「こちらランドバルデン管制官 グラーク1 どうぞ」
「護衛任務中6機のF-15と交戦、4機を中距離AAMで撃墜 2機を格闘戦で撃墜」
まず戦果を報告する
「6機も撃墜したのか、よくやったな」
「こちらの被害はなかったんだが……」
「被害がなかったならいいじゃないか」
全く良くない
「グラーク2が敵機格闘戦中にノルマン連合の軍旗が描かれていると報告してきた、既にIRST付属のカメラで撮影してある、確認のため帰投の許可を求む」
「連合の軍旗?!…少し待て、上と話す」
「グーズ……これからどうなるんだろ……」
「戦争中の国の上を飛んで更に当事国の爆撃隊にマッハで近づいてきたんだ、非はあちらにある」
「でも……」
不安そうな声で言う
「何大丈夫だ、なんせこの隊全員が共犯だからな」
「えっ」
「なんだグラーク3、言いたいことがあるならいってみろ」
「あぁ……いえ…あの、もしも全面的に非がこちらにあると言われたら、どうなるのでしょうか」
正直な事を言えば最悪死刑だろう
「まぁー大丈夫だろう、うん、大丈夫なはずだ」
「えっそんな雑な……」
そう話していると管制官から通信が飛んでくる
「こちらランドバルデン管制官、グラーク1 2 早急に帰還せよ、軍上層部がお呼びだ」
「こちらグラーク1了解 アウト」
「グラーク2了解 アウト」
「グラーク1より爆撃隊へ、報告のため我々は帰投する、グラーク3 ツェルニ、お前をを臨時飛行隊長に指名する、任せたぞ」
飛行隊の中で俺、アスカの次に階級が高いのでどうしてもこうなってしまう
「グラーク3 ツェルニ了解、必ず全機連れて帰ります」
「頼もしいね、頑張って!」
アスカが励ますが、この作戦に応じて飛行隊の改編が行われ、俺が飛行隊長に、アスカが飛行副隊長に再編されたのだ
つまり元々ツェルニが飛行隊長なのだ。
心配はいらないだろう
「すまんなツェルニ、頑張ってくれ」
そう言いながら2機ともランドバルデンに機首を向け最高速で帰投する
〜1時間半後〜
「グラーク1-1並びに1-2、ランドバルデン管制空域に侵入した、RW63への着陸許可を求める」
「こちらランドバルデン管制官、RW63への着陸を許可、2機同時に着陸誘導を行う」
管制官の指示に従いフォーメーションランディングを行うとすぐに管制官とは違う声で通信が来る
「おかえり2人とも、アスカはすぐに第2格納庫に機体をとめてくれ解析班が待機している」
「バルツァフ閣下、俺も第2格納庫に?」
「あぁ、そっちのが都合が良さそうだね」
俺たちは地上移動の為安全を考慮しエアインテークの格子状のダストカバーを閉じ誘導に従って第2格納庫に到着、エンジンをカットしコクピットを開く
「お疲れ様 っほら飯と飲み物だぞ」
なんともありがたいことに整備兵が飯と飲み物を持ってきてくれた。
と言っても軽食的なもので、ホットドッグを三本と瓶に入った某コカな清涼飲料水だが
「おぉありがたいな、あっそうだ」
「お、なんだ?奢りの約束か?」
軽食を持ってきてくれたとはいえ流石にそれで奢りは無い
てか基地周辺に奢れるような美味い店なんてものはない
「ちがう、尾翼のカメラで面白いもんを撮ったんだ、数時間後に帰ってくるツェルニが別アングルで撮ってくれてるからそれも回収しといてくれ」
「面白いもんだとぉ?おーけー、回収しといてやる」
「さんきゅ、じゃ俺は報告してくるわ」
俺は機体の点検を行ってる整備兵達に感謝の言葉をいいながら報告の為司令室に行こうとした……ら先にバルツァフが格納庫に来た
それに気付き敬礼で迎え、それに釣られて気付いた他の整備兵達も敬礼をしていく。
「ん、構わんから作業を続けろ。アスカロフ!来い!」
「はい!ただいま!」
アスカが飛行用ヘルメットを外しコクピットに放り投げフライトジャケットを羽織ながらこちらに走ってくる
「よし来たな、詳しい事はカメラの高画質化が終わってからだが、管制塔下のブリーフィングルームでざっと報告してくれ」
「あいさ……やっぱりさ、連合の軍旗が入ってたらまずいよね…?」
まぁ、まずいだろうな、いやまずいで済めばいいのだが
「まずいなんてもんじゃ無いよ、事実なら最悪連合と戦争となる、勝てない戦ではないだろうけど、少なくない損害を喰らう事は覚悟しないといけないと……」
「あうあうあ………」
アスカが遠い目をしてよく分からない声を垂れ流している
「安心しろ、グラーク隊全員共犯だからな」
励ましたくてそう言ったが今度は「あわ……あわわわ……皆のキャリアが…命が……ががががが……」と更にヤバい声を出し始める
「大丈夫かい?アスカ?アスカ〜?」
バルツァフがアスカに向かって声をかけさらにペチペチと叩く
「大丈夫、何かあったらこのバルツァフ親衛防空軍上級大将閣下が助けてやるからな!」




