アオイ
そしていよいよドラゴンの塔にたどり着いた。
塔を登るには光の団は数が多いので、少数精鋭で向かうことになった。
緊張しているせいか皆無口で、黙々と螺旋階段を登っていった。螺旋階段以外は中央部分が一階まで吹き抜けになっていたが、その理由は後で知ることになる。
ひたすら階段を登ったが、ドラゴンの姿も少女の姿も見当たらなかった。
クルーゼは一度階段を下りて、他の仲間と合流することにした。
待機していた仲間と合流した、まさにその時。
塔の吹き抜けを何か大きなものが下りて来る。
「来るよ」
いち早く気付いた俺は、クルーゼ達に注意を促す。傭兵たちは、蜘蛛の子を散らすように散開する。
次の瞬間には、塔の吹き抜けの部分に白く美しいドラゴンの姿があった。余りにも大きく美しいドラゴンに皆目を奪われた。
気を取り直した光の団は、それぞれの武器をかまえる。その時凛とした可愛いらしい声が聞こえてきた。
「待って下さい。このドラゴンは悪くないんです。武器を収めて」
するとドラゴンの手の平から可愛いい少女が現れた。長い黒髪、大きくはっきりした瞳。そして透き通るような白い肌。
「超可愛いい。」
俺は思わずそう呟いていた。さらにその少女が白い光を放って見えることに気が付いた。
「彼女だ」
俺はクルーゼ達に王様から頼まれた話を、事細かく説明した。
「なるほど。歌で人心を元気づけるという訳ですね。」
またいつの間にか、マークが近くにいて深く頷く。
「歌姫か。」
クルーゼが低く呟く。
「違う。普通の歌姫じゃ駄目なんだ。歌って踊れるアイドルじゃなきゃ」
この世界にはアイドルという言葉は存在しないらしい。
「君の名前は?」
俺は少女に尋ねる。
「アオイです」
少女は驚きながらもそう名乗った。その表情を見て、俺はますます確信した。この少女ならアイドルになれると。
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