第三話 初めての街
前回までの書き方では見にくいと感じたので他作品の作者の方々と同じような形式に変更しました。
三人は緑豊かで心地の良い風が靡く草原に送られたときと同じ様に光の中から姿を現す。少し遅れて、車に積んでいたの荷物も無傷の状態で現れる。
「うう…… やっぱりこの感覚には慣れないよ」
身震いをしながら宵は独り言を言う。
「そう? 私は体が浮く様な感じがして気持ちが良いけど」
「夕ちゃんは絶叫系大丈夫な人でしょ。 私はなんかジェットコースターの降りるときみたいで体が受け付けないんだよー」
「あー、宵は苦手だもんね」
夕は宵のブルブルと震えてみせる様子を見て小さく笑う。
「お二人とも問題はありませんでしたか、って大丈夫そうですね」
プロデューサーは来た荷物を運びながら二人の元へ駆け寄るが、二人が大丈夫そうだということが分かると、歩きに変えた。
「プロデューサーの方こそ大丈夫? 私たちより歳食ってるし」
夕は少し悪戯っぽい顔でプロデューサーをからかうように冗談を言う。
「冗談はよしてください、まだまだそんな歳ではありませんよ。 とりあえず、自分の荷物は自分で持ってくださいね」
「「はーい」」
(あのー、談笑中失礼します。 どうやら無事に転生出来た様ですね)
三人の脳内には先ほど聞いたアルトリエスの声が響く。反射的に上を見上げるが晴天が広がるばかりで姿は見えない。
(荷物の中にお金も入れておきましたから当面はそれで生活をお願いしますね。 ガイド的な事を言いますと、その草原は基本的に無害な生き物しか住んでいないので警戒はしなくて大丈夫です。 また、夕さんから見て500mほど真っ直ぐ進めば街が見えると思うので行ってみてください。 それと、自分たちが転生者だってことは絶対に言わないでくださいね)
アルトリエスが指す街を三人は視認し、街が城壁で囲まれている様子や馬車が出入りする様子を確認する。
「ご丁寧にありがとうございます。 それでは、お二人とも最初の目標は助言通り街へ向かいましょうか」
「はい! 分かりました!」
「了解です、プロデューサー」
宵はビシッと敬礼を決めてから夕の手を取り、街へ駆け出して緑の丘を下っていく。一瞬転びそうになった夕もすぐに駆け出す。
「転ばないでくださいよ」
置いてかれないよう、慌ててプロデューサーも小走りで二人の後を追いかける。
二人は一足先に道に出て、石造の門前に着く。馬車の邪魔にならないように出入り口の端に寄り、道の脇で停車している馬車をまじまじと見つめる。
「おう、嬢ちゃんどうしたそんなに馬車を見つめて」
馬車の積荷を確認しているおじさんが不思議そうに二人へ聞いた。
「あ、いえ、馬車を初めて見たので興奮しちゃって……」
「へぇ、馬車を見た事が無いのかい。 珍しいねぇ、その服といい二人はどこから来たんだい?」
「えっと、日本っていう国です」
「ニホン…… 聞いたことのない国だな。 つまり、はるばるここまでやってきたってわけか」
返答に困る様子の宵に対して、夕は落ち着いた様子で代わりに答える。
「まあ、そんなところです」
小走りで追いかけていたプロデューサーは談笑する二人を見つけ、駆け寄る。
「お二人ともどうかされたのですか?」
「馬車を初めて見るので気になって見つめてたら、話しかけてくださって」
夕は手のひらでおじさんを指し示す。おじさんはどうもと言った様子で手を軽くあげて挨拶をする。
「どうも、仕事中にすみません。 お邪魔になりませんでしたか?」
プロデューサーは軽く会釈をする
「いやいや、全然問題ないよ。 品物を買って帰ってきたところだからね。 あんたは嬢ちゃんたちの護衛かい、美女二人に囲まれて仕事できるなんて羨ましいね」
ハッハッハと笑顔を見せ、馬を撫でるおじさん。
「美女二人って、ありがとうございます。 仕事はまあ、そんなところですね」
「聞いたー? 美女二人だって」
「プロデューサーも嬉しそうですねぇ」
話を聞いてご機嫌な二人は茶々を入れるように発言をする。二人はおじさんから人参をもらい、馬に餌をやっている。餌をもらった馬はぼりぼりと2本のにんじんを軽く食べ、鼻をフンスフンスと鳴らしている。
「どうだい、ここであったのも何かの縁だ。 来たことない街だろう? 説明がてらうちの店に来なよ、歓迎するからさ」
「いえ、お邪魔になってしまうので……」
「気にすんなってさあさあ、ついてきなって」
遠慮をするプロデューサーをよそに二人は喜んでいた。馬車に乗った気前の良いおじさんに手招きされ、三人は門をくぐる。
街内部は石畳の道で舗装されており、奥には大きな石造りの屋敷が見え、屋敷の前には噴水らしき物も見られる。道の左右には二階建てから三階建ての家々が立ち並び、奥の屋敷に近づくにつれ出店、商店や工房などが目立つようになる。
門から300mぐらい歩いたところで綱を引き、馬車を止める。馬車は赤色の屋根をつけた二階建ての家の前で止まった。
「さあ、着いたよ三人とも店に入ってくれ」
三人は馬車から降りたおじさんに言われるがまま、丸窓が取り付けられている木製の扉が開いた家の中へ入っていく。
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