第X話 任されました!【改訂版】
これは本編の前日譚となる話であり、読み飛ばしてもらっても構いません。(7/1追記:3話以降の書き方の方が見やすそうなので編集しました)
第X話 任されました!
何人かの人々らしき存在がまるで神殿の広場ような美しい場所で会議をしている。多くの人々はその情景を少し見ただけでもいくつもの疑問点が浮かぶことだろうが、それらを全て忘れるほどの神々しさが溢れている。
円卓を囲むように設置されている木の円形の椅子に座り、あるものはクッションを敷いたりなどで木の固さを誤魔化して座りやすくしている。
「我々が管理しているこれらの世界についてだが、それぞれが素晴らしい発展を遂げているとは思わんかね」
一人立ち上がっている美しい衣を身に纏う半裸の男が、円卓の中心に映し出されたそれぞれが全く違ういくつかの風景を指して誇らしげに語る。
「そこでだ、これらの世界が更に発展を遂げるためにお互いの文化を交流させることを目的として各世界の文化に対して貢献できるであろう人物を送り込むことを提案したい」
同じ男が語る。それに対して、周りの人物らは賛成を意味するかのように札をあげる。男は満足気に頷き周りに目線を送ってから宣言を行う。
「これより異世界間文化向上計画を始動する! 担当は各世界の文化へ関心が高く精通もしているアルトリエスに頼めるだろうか?」
男の目線の先にはアルトリエスと呼ばれた銀色の長髪を靡かせる女性が座っている。
「任せてください! 私ならば必ずや文化の向上を達成できます!」
力強い返事と共に立ち上がったアルトリエスは目を輝かせ、周りの人物たちも手を叩き応援の意をしめした所で会議を終わらせる旨が男より伝えられる。
それぞれが光に包まれながら一人また一人と消えていく。最後に残ったアルトリエスは会議中は見せなかった笑みを浮かべ、消える。
「やっっったわ! 遂に! 遂に今までの苦労が報われたのよ!」
ああ! 今日はなんていい日なんでしょう! 今までの神生で最高の日と言っても過言ではないほど喜ばしいこと。
今までの私が学んできた文化の知識を活かせるだけでなく、一任されてしまうとは。世界の文化について携われるなんて、これだけで面倒な作業や会議へ積極的に参加してきた甲斐があったというもの。
決して失敗出来ないのだから選りすぐりの子を選んであげなくちゃいけないわ。ああ、どんな子を選びましょうか、そう思うと意識せずとも顔がニヤけてしまう。
まずは呼び出された候補者たちが混乱してしまわないために説明する資料や選択基準も決めておかなくてはいけない。
「これから忙しくなるわね」
そう呟き、私は足取り軽く各世界の書物が揃っている図書館へと向かって歩きだす。コツコツと靴を鳴らして歩くのはいつも通りだが、速度は誰が見ても速いと感じることだろう。でも、今はそんな事は頭の隅に追いやってしまうぐらいの多幸感に包まれながら歩みを進めていく。
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