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東方連小話  作者: 北見哲平
ルーミア 〜 笑顔の魔法
28/67

ルーミア - その4

 私と千穂、穣子と静葉の四人で並び神社までの道を歩く。相変わらず静葉は寒そうに体を窄めていた。


「ねぇ、千穂ちゃん。私、最近この里に移り住んできたからあまり知らないんだけど、これから向かっている神社ってご利益とかあるのかな?」

 穣子が千穂に質問する。

「え~、そうですね。初詣でお参りすると、それとなく願いを叶えてくれるって評判なんですよ」

「そーなのかー」

「そ、それとなくって・・・?」

「まあ、貧乏巫女が治めるどこぞの神社に比べれば百倍はご利益がありそうだけどね」

 静葉がさらっと言い切る。これは私にでも分かった。貧乏巫女といかにもご利益が無さそうな神社のセットと言えば思い当たるのは一つしか無い。博麗神社で間違いなだろう。

 因みに、霊夢とはあまり話す機会は無く、交流もほとんどない。でも、一応以前に一度コテンパンにされたこともあって知らない仲ではないので、偶然すれ違った時などに軽く挨拶程度は行っている。

「姉さん。それはいくら何でも言いすぎじゃないかな。確かにご利益は期待できないけど、霊夢とはあの一件以来、割と仲良くやってるじゃない」

「まあ確かそうだけど・・・。それにしても穣子っ!神様が神様の力にあやかろうとするのもどうかと思うけど」

「え~、だって私の力って大したことないし。・・・他の神様の力にあやかろうとしても別にいいでしょ」

 いや、私は穣子の力は十分すごいと思うよ。だって、穣子がいれば一年中食べてても食べ物がなくならないし、穣子自身の味も無くならない・・・あれっ?これは少し違うかな?

「そんなこと言うなら姉さんは神社のお参りしないの?」

 静葉は右手をギュッと握りしめながら自信満々に答える。

「するよ、ああ勿論しますとも。神様のくせに神様にお願いするよ私は。そんなことで願いが叶えてもらえるのなら、私はお賽銭箱の前で土下座でも何でもするよ。むしろ踊るね。跳ぶね。歌うね。ああ~、何だか少し暖かくなってきたよ~、いいよ~。因みに、私が何をお願いするのかは内緒だ!静葉ちゃんのトップシークレットファイブの一つだからね」

 息継ぎを一度もせずに意味が分からないことを言い切った静葉。それを聞きながら思ったことは「静葉のスカートの紅葉っぽくなっているところって何だか美味しそうだな~」と言うことである。

 色合いが食欲を誘います。基本的に葉っぱでも何でも食べるよ私は。

「へぇ~、そこまでして叶えたい静葉さんの願いって何なんでしょう?・・・私は一人っ子だから、よく分らないんですけど。私にもし妹がいたら、今年も妹と一緒に二人元気で、仲良く、明るく暮らせますようにってお願いします」

「あっ」

 千穂がそう言った瞬間に、ピタッと固まった静葉。

「え、えぇ。まあ・・・ちょっと違うけど、そんなところかな・・・いや、だい~ぶ違うとも言うけどね」

 千穂と穣子は苦笑いをする。これは私にも分かった・・・静葉ちゃんのトップシークレットファイブの一つが暴かれた瞬間だ。

 因みに、トップシークレットファイブって後何個くらいあるの?

「静葉~。顔が引きつってるよ。わはー」

 私は、静葉の前で今年一番の笑顔に笑ってみせる。

「わはーって、何それ?」

「笑顔の魔法だよっ」

 私が自信たっぷりに言うと、静葉は「プッ」と空気を吹き出して、さも愉快そうな表情で私を見返して来た。

 あっ、笑った。やっぱり笑顔の魔法だね。

「ルーミア恥ずかしいんだ恥ずかしいんだ~。笑顔の魔法?・・・そんな」

「素敵だねっ!笑顔の魔法って何だか私すごく好きかも~」

「だ・・・だよね~穣子。私もルーミアのセンスには以前から期待していたのよ」

 静葉の態度がころっと豹変したように感じたのは私だけかな?

 因みに「笑顔の魔法」と最初に言い出したのは私ではない。イモリって言う、ちょっと変わった不思議な人間だ。


「ねぇねぇ姉さん。私も笑顔の魔法使っちゃうよ。・・・にぱ~・・・なんちゃってね」

「笑顔来たー!魔法来たー!笑顔の魔法来たー!!」

 来た来たと、何が来たのかよく分らなく叫ぶ静葉。本当に静葉は時々わけが分からない。それにしても、とても幸せそう。穣子にも使えたんだなぁ、笑顔の魔法。

「ちょっ、ちょっと静葉さん。少し声が大き過ぎます。皆さん私達の方を見ています」

 周りを見渡してみると、確かに見覚えのある里の面々が、私達の方に熱いような寒いような、何とも言えない微妙な視線を向けていた。

「ねぇ千穂。いつもより人がたくさん居るみたいだけど、これってみんな初詣に向かってるのか?」

「えっ、あ、うん。そうだね。皆、初詣と言えばこれから行く神社だから。多分、里の人ほとんどが集まるんじゃないかな〜」

 成程、きっとみんな毎日美味しいものを食べて暮らしたいってお願いするんだろうな〜。

 えっ?それは私だけって?

 ・・・そんなことは無いと思うけどな~。

「ふ~ん、そーなのか」


「穣子聞いた?たくさん人が集まるんだって。ここは笑顔の魔法をガンガン使うチャンス。好感度上がるよ〜。今だっ!ほらっ!・・・はぁはぁ、そこぉー!」

 何かが外れたかのように興奮する静葉。とにかく必死だと言うことは伝わったけど・・・明らかに変な人。いや、変な神様丸出しだった。

「・・・」

 今日まで、静葉と顔見知り程度だった千穂は言葉を失っている。

 いつも一緒に居るはずの穣子でさえ、表情を歪めてかなり引き気味だったりする。

「と、とりあえず、行きましょうか」

「そーだね」

 私達が千穂に続いて歩き出すと、周りの人の流れも再開した。

 うんっ。確かにみんな同じ方向に向かっている。


「んっ!あれはどうしたんだろう?」

 少し歩いたところで穣子が何かに気付いたのか、これから進む道の真ん中を指差した。

 ・・・ん?

 確かに穣子の言う通り、明らかにおかしかった。

 先を歩く人達が、道の中心を避けて左右から回り込むようにして歩いていた。道はそんなに広くないので、周りの畑に足を踏み入れている人までいる。

 ・・さて、みんながそうまでして道の真ん中を避けたい理由は?


「おーいチルノ〜」

 私は、道の真ん中で小さく腕を組んで突っ立ってる少女の元に駆け寄りながら声を掛ける。

「あっ、ルーミアじゃん。どうしたのこんなところで」

「それはこっちのセリフなのかー」

 私と同じくらいの背丈に、背中に魔力で出現させた氷の羽を携える。服も髪も目も、全体的に青っぽく、青いリボンがよく似合っている少女は私の友達、氷の妖精チルノだった。

「あたいってば最強なもんだから、恐れをなして誰も近づかない・・・やっぱり最強ね!」

「うわ〜、さむぅ〜。確かにこれじゃみんな避けるわ」

 体をゴシゴシ暖めながら少し遅れてやって来る静葉達。

 氷の妖精であるチルノの能力は、見たまんま感じたまんま聞いたまんまで「冷気を操る能力」だったりする。まあ、これもいい加減なものだ。いつも魔力を垂れ流し状態のチルノは、常に周囲に冷気をまとっている。よって近付くと寒い。

 因みにチルノもこの里ではわりと有名だったりする。それは、妖精友達の大ちゃんと一緒に、人間によく悪戯をして困らせているからなんだけど、どれも程度が低く幼稚なことばかり。だらか、みんなも大目に見ている・・・それどころか一部では人気さえあるらしい。チルノが里に現れるのは今ではよく見られる光景になっている。

 でもしかし、見てもわかるように、冬に現れると迷惑以外の何者でもない。よって、静葉にとっても迷惑以外の何者でもないみたいだ。

 私?・・・私は寒さとかどうでもいいから関係ない。

 それに、チルノとは友達だから。

 ・・・因みに、夏は逆に人が集まってくるのだが、その理由も多分チルノ自身は分かっていない。妖精は基本的にバカだと言われているけど、チルノはその中でもトップクラスだったりする。バカからは、状況判断能力や理解力、更には記憶力などが欠落している。

 なんて、友達とか言って結構酷いこと言っちゃった。まあ、私も結構なバカなので、あまりチルノのことは言えないんだけどね。

「あんた誰よ」

 チルノは静葉に問いかけた。恐らく二人は初対面なので、質問としては間違っていない。

「あんた誰よ」

 静葉はチルノの口調を真似して聞き返す。

「あたいが先に聞いてんの」

「あたいが先に聞いてんの」

「だから、あたいが先に聞いてるんだってば」

「だから、あたいが先に聞いてるんだってば」

「こらー。真似するなー」

「こらー。真似するなー」

「だから真似するなってばー」

「だから真似するなってばー」

「も、もういいよ。それであんた誰よ」

「お前こそ誰だよ」

「あたいチルノ!」

「あたいったら最強ね」

「あたいったら最強ね」

「あたいったらバカね」

「あたいったらバカね・・・って、あれぇ?」

 うん、チルノは正真正銘のバカだよ。

「はい、自己紹介ごくろうさん。名前はチルノ。話に聞いた通り最強のバカね」

「こらぁ〜。バカって言うな〜」

「はいはい、もう帰っていいよ・・・あ〜、寒い寒い」

 バカを馬鹿にする静葉。でも、あまりチルノを怒らせない方がいいかもしれない。

 妖精は基本的には、私達妖怪よりもずっと弱く、人間にもあまり恐れられることはない。

 ただし、チルノに関しては例外のようで、私なんかよりもよっぽど強い力を持っている。まあ私が弱すぎるだけかもしれないけど、それでも並の妖怪じゃ、恐らく一瞬で氷漬けにされてしまうくらい強い・・・多分だけど。

 流石に、自分で最強だと言い切っているだけある。静葉は、私が噛み付いただけで泣きそうになる程頼りない穣子のお姉ちゃんだから、チルノが怒ったらちょっと笑えないことになるかもしれない。

「もうあたい怒ったんだからね・・・あんたなんて、英吉利牛と一緒に冷凍保存してやるわ!!」

 ほら、やっぱりこうなっちゃう。

「ちょっと、チルノ落ち着くのか〜」

「ふんっ!面白いっ!お嫁にいけない体にしてやるよ」

 ・・・いや、お嫁にいけないでしょうチルノじゃ。

「とにかく、二人ともやめるのかー!」

 あーあ・・・もう止まらないよこれじゃ。

 静葉とチルノは、にらみ合い手にスペルカードを挟んで、発動させるタイミングを見計らっている。

 こんな人通りの多い道のど真ん中で、しかもこんな楽しい日に・・・こんな奴らと仲間だと思われたら、御近所での私の評判が悪くなっちゃうよ。・・・まあ一応友達だけどね。

「ねえルーミア。このままじゃまずいよ。もっと何か止める方法は無いの?」

 私以上に力が無く普通の人間の千穂は、おろおろした表情で私の方を見てくる。

 ・・・ごめん、バカって一度火が着いちゃうと周りの言葉なんて聞いてくれないから。

 私がもう完全にあきらめてしまったその時、それまで隣で何も言わずにプルプル微振動を繰り返していた穣子が久し振りに口を開いた。

「あ、あたいったら・・・最強ね」

 ・・・んっ?

「きゅ、急にどうしたんですか穣子さん」

 そして、微振動は次第に強振動に変わる。

「い、いぎりすぎゅうと一緒に・・・れいとうほぞん」

「み、穣子。お腹空いてるのか?それに、すごくプルプルしているのか・・・寒いのか?」

 何だかただならぬ雰囲気。よく注意していれば、穣子の視線はずっとチルノを捉えていたような気がする。

「か・・・か、かかか・・・」

 っ!それに、よく見ると目が据わっている!

「キャワイイヨーーー!」

 えっ?

 穣子は奇声を上げてチルノ目掛けて飛び付いた。この神様ただ者じゃない。チルノまではかなり距離があったはずなのに、それを助走をつけずに、空も飛ばずにジャンプで!

「うあっ!」

ドサッ

 穣子は地面に足をつくこと無く、飛びかかったままの勢いでチルノにしがみ付く。それは、以前私が人間を襲っていたときの光景に似ていた。

 これでは、流石のチルノもどうすることも出来ず、二人は絡まるようにして地面に倒れ込んだ。

「おお穣子。姉さんに加勢してくれるのか。姉さん嬉しい、ぞ?」

「はう〜。可愛いよ〜。何これ、何このちっちゃいの?やばいー、やばすぎる〜」

「うわぁ〜、なんだこいつ。やめろ〜・・・ほ、ほっぺたが熱い〜」

 黄色い声を上げながらものすごい勢いでチルノに頬擦りする穣子。妹の豹変ぶりに静葉は開いた口が塞がっていなかった。まあ静葉も似たようなものだけどね。でも、私だって正直驚いた。まさか穣子まで静葉と似たようなものだったなんて・・・。

 確か、以前に穣子が言ってたけど、似た者姉妹ってこういう意味だったのかー。


 ああ、穣子がチルノにハマっちゃったよ。


「私、秋穣子だよ。あなたのお名前は・・・なーんて言わなくても知ってるよ。チルノちゃん!・・・あたりっ?もうすごく有名なんだから。早く会ってみたいなとは思っていたんだけど、まさかこんなに可愛いなんて。好きー」

「うあー、こらはなせ〜!・・・うっ」

 好きーとチルノを強く抱きしめる穣子。うわ〜、あれは痛そうだ。チルノの顔色がみるみるうちに青ざめていくのが分かった。

 とりあえず、これで道の真ん中で撃ち合うことは無くなったけど、こんなのと友達だと思われるのも嫌だなぁ〜。

 ・・・まあ、友達だけどね。

「穣子、そんなちんちくりんなバカのことを好きってどういうことよ!」

「どういうことって、無茶苦茶可愛いじゃん。姉さん視力落ちた?」

「ぐわっ!」

 胸を苦しそうに押さえて膝をつく静葉。そのリアクションの大きさに、周囲からはどよめきの声が上がる。


「あのー、ルーミア。これ止めなくていいのかな」

 言葉控えめな千穂が私の肩をトントンと叩いてくる。

「これはどうしようもないのか。今の穣子だったら、噛み付いても反応無さそうだし・・・」

「うぅ~・・・穣子さんは真神様だと思ってたのに」


「はぅ~、チルノちゃんの頬っぺた冷たくて気持ちいいよ~。あっ、耳に噛み付いちゃえ・・・ガブッ」

「や、やや・・・やめろって!・・・あぅっ」

 か、噛み付いた!・・・穣子もあんまり私に文句言えないじゃん。

「ちょっ!変なもんに噛み付いたら、何か怪しい病気になっちゃうわよ。何かに噛み付きたくなったら、私の耳使ってもいいから」

「何言ってるの姉さん。姉さんの耳に噛み付くなんて気持ち悪い。そもそも、姉さんの耳だって絶対的な安全が保障されているわけじゃないでしょ」

「はぐあっ!」

 今度は何もないのに突然後ろに吹っ飛ぶ静葉。

オオ~

 既に観衆と化した周囲の人達からは歓声が上がる。

 ・・・何だか私も楽しくなってきたよ。

「ま、まだまだぁー!」

 静葉は再び立ち上がる。やめとけばいいのにと私は思った。でも、傷付くことを恐れない静葉の姿は・・・チルノに負けてないぐらいバカだった。

 ・・・楽しいね。


「チルノちゃん。これからは私のことをお姉ちゃんって呼んでくれてもいいよ〜」

「だっ、誰がよぶかぁ〜。ってかはなせ〜・・・ぐっ」

 穣子は更に強くチルノを抱きしめる。チルノは本気で苦しそうだ。

「はは〜ん。分かったぞ。悪いのは全部チルノ、おまえだ!穣子に何をした、魅了の魔法か!それとも、氷で穣子をお人形さん化したのか!(意味不明)バカのくせになかなかやるじゃないのよ。さあ立ちなさい、スペカ勝負だ!あんたを倒して穣子の心をとりもど」

「姉さん、マジで五月蝿い!しばらく黙ってて!」

「はぐあぁー」

 最後は三回転半の横回転を加えてさっきよりも派手に吹っ飛ぶ静葉。

ズガガガガガー

 ものすごい勢いで地面をえぐり、土を撒き散らしながら地面を滑る。そして滑り終わる頃には、静葉の活動も停止していた。

ウワアアアアーー

 今日一番の大歓声。

パチパチパチ・・・

 そして、それはすぐに拍手に変わる。みんな静葉を称えているんだよ。

 ・・・静葉は立派だった。

 でも現実は、今もなお穣子に抱きしめられてホカホカ暖かそうなチルノと、土の上で冷たくなっている静葉。勝負とは残酷なものだと思った。



「みんな~、お騒がせしましたなのか~。わはー」

 私がそう言うと、人の流れは三度再開した。道のど真ん中で弾幕の撃ち合いにならなかったのは、何と言うか不幸中の幸いってやつだったのかもしれないけど、その代わりに静葉が廃人(廃神)になってしまった。

 まあ、もともと静葉がまいた種なんだからこうなっても文句言えないか。それに、誰かに流れ弾幕が当たって怪我をさせたりしたら大変だからね。静葉のことだから、ほっといてもそのうち復活するだろうし・・・。


 結局、穣子達ての希望によりチルノも加えて初詣に行くことになった。


「千穂、まともなやつが一人もいなくて何だかごめんなのか」

「ううん、ルーミアとお友達になってもう一年以上だよ。もう、こういう展開にも慣れちゃった。それにチルノちゃんも一緒の方が絶対楽しいと思うしね」

「でも、チルノは色々と大変だよ~」

「知ってる。もう一度言うけど、ルーミアとお友達になってもう一年以上になるんだよ」

「そうだったね。わはー」


 私は千穂と手をつなぐ。

 そう言えばこうやって手をつなぐのも随分と久しぶりのような気がする。友達になりたての頃はずっとこうやって、色々なことを話しながら里を案内してくれてたっけ。

 何だか懐かしい気分・・・でも、あの頃と比べて何かが足りないような気がする。


 ・・・何が足りないんだっけ?

 私の気のせいかな。つないだ手で感じる千穂の体温が、あの頃より少しだけ冷たい気がする。


 ・・・そうだった。あの頃の千穂は、もっと心の底から楽しそうで、もっと心の奥から笑っていた。だから違って見えるんだ。


 千穂、私今日はちゃんと笑えていないのかな?

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