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東方連小話  作者: 北見哲平
ルーミア 〜 笑顔の魔法
25/67

ルーミア - その1

宵闇の妖怪 - ルーミアの話です。

東方キャラで一番笑顔が似合うのはルーミア!

たぶん、恐らく・・・きっとそうなんだと思います。

笑顔の魔法という、かなりきわどいサブタイトルのお話は、作者のそんな勝手な意識から始まります。

でも・・・意外と大真面目です。

いつも通り食べます。そーなのかーと腕を広げます。・・・でも、そんな中でも一生懸命に、バカルテットの一員だけど頑張ってるルーミアが書ければいいかなと思っています。

「明けましておめでとうなのかー」

 年と年を跨いだ瞬間を見計らって、私は口を大きく開けて挨拶する。この挨拶は、年明けには必ず口にする人間の風習みたいで、私は去年覚えた。何がめでたいのか私にはよく分からないけど、響きがいいから嫌いじゃない。残念よりは、めでたい方がみんな笑顔になれるに決まっているよね。

「明けましておめでとう。・・・でも、少し明けるの早くない?まあ、時計が無いからはっきりとは断言できないけど、私の予想では1分と12秒早いね」

「細かいことは気にしない気にしない」

 私がそう言うと、静葉は軽く表情を崩して「そりゃそうだ」と納得する。


 私、宵闇の妖怪ルーミアは今、生まれて初めて人間の里で新年を迎えた。

 因みにここは、今里で人気拡大中の神様姉妹、秋姉妹の住居だったりする。穣子にお願いして昨日からお世話になっている。

「穣子も、明けましておめでとーう」

ガブリ

 私は大口を開けて、畳の上でぐったりしている穣子の肩に噛み付く。この挨拶は人間の風習ではなく、私のオリジナルだったりする。

「あうっ、また噛まれた。・・・今年1回目、昨日から数えて48回目・・・もう、どうにでもして・・・がくっ」

 穣子の反応は鈍かった。きっと、昨日からの夜更かしで眠たいんだね。決して、私が噛み付きすぎたせいじゃないよ・・・多分だけど。

「こらルーミア!私のお人形さん・・・じゃなくて、私の妹に気安く噛み付かないでって言ってるでしょうが。私だってそんな羨ましい・・・違った、そんな・・・え~、何と言うか、そんな感じの悪戯をしたことはないんだからね」

 静葉は、必要以上に口をパクパクして言う。

「なに言ってるのかよく分からなかったぁ。穣子は、噛み付くだけでいつも美味しいから、溶けない飴みたいな物なのかー」

 つまり、ずっと楽しめるってこと。

「おのれルーミア!穣子は噛み付かなくても、想像するだけで美味しくておかずになるのよっ!」

 ・・・ん?

 静葉は妹想いのいいお姉さんだと思うけど、時々よく分からないことを言う。

 穣子は相変わらず床でぐったり・・・あれれっ?

スゥスゥ・・・

 どうやらそのまま眠ってしまったみたい。

「全く、昨日からあれだけうちの食材を食べ荒らして、まだ穣子まで味わおうするなんて、本当にしょうがな・・・って!穣子いつの間にか寝てるし。・・・ちょっと待ってなさいよルーミア」

 静葉はそう言うと奥の部屋に消えて行き、すぐに戻ってきた時には暖かそうな毛布を抱えていた。

「もう、新年早々妹の看病なんて私は、嬉しいけど・・・ダメだからね」

 静葉は穣子に優しく毛布を掛けてあげる。こういうところを見ていると、姉妹ってつくづくいいものだと思ってしまう。

「うぅ〜、もう噛み付かないで〜」

「あっ、穣子起きちゃった?・・・ごめんごめん」

 ・・・。

 ・・・。

 ・・・スゥスゥ。

「初夢をみてるみたいだね」

「ありがとう・・・姉さん。・・・うーん」

 静葉は一瞬顔を綻ばせたが、すぐに複雑そうな顔をして私の方を見る。

「あまり穣子のこといじめないでよね。・・・この子はあんたのことが大好きなんだから」

 静葉が、そのままの表情で私に言い聞かせてくる。別にいじめているつもりはなかったけど、よくよく思い返してみれば、穣子は私に噛み付かれる度に泣きそうな顔をしていたような気がする。

 でも、それでも私のことを好きでいてくれているという静葉の言葉を聞いて、私はホッとした。・・・よかった、これでまた穣子に噛み付いてもいいんだ。

 って、そっちなのか~。私の食いしん坊。

「うん。私も、別に味が無くても穣子のこと好きだよ」

「ならいいんだけど・・・何か少し引っかかるけど」

「穣子とは友達〜。だから今日はここで一緒に寝るのか〜」

 私は、畳にゴロンと横になって、険しい表情でうなされている穣子に体を寄り添う。

 毛布も穣子も暖かくて気持ちよかった。

「ったく、しょうがないな・・・その代わり、私も一緒に寝るからね」

「えっ、何でなのか?」

 静葉はまた奥の部屋に行き、今度は二枚毛布を持ってきた。そして、その一枚を私に投げ渡す。

バサッ

「よっと!・・・うわ〜、ふかふかなのか〜」

 それに、何だか美味しそうなにおいがする。

「近頃冷え込みが激しいから、しっかり被って寝た方がいいわよ。・・・まあ、あんたみたいな妖怪が風邪を引くとは思えないけど」

 私の方をチラリと確認して、後に付け足して言う。

「風邪ひいたことないよ〜。わはー」

「心配した私が馬鹿だったよ・・・」

 静葉は「はぁ〜」と溜め息をつく。風邪という病気については最近人間と付き合い出して知ったのだけど、妖怪の私も引くものなのかな。そこんところがいまいちはっきりしない。でも、もし引けるのなら一度引いてみたい。

 風邪を引くとみんな気を使ってくれて、変わった食べ物を食べさせてくれるって聞いたことがあるから・・・。

「でも、用心するに越したことは無いって、この間誰かが言ってたよ」

「そうね。万が一にも無いとは思うけど、明日・・・いや、もう今日か。初詣はあんたに負けないくらい穣子も楽しみにしてるんだから、風邪なんか引いて中止になった日には・・・流石の私も少し怒るからね」

「うん。分かったよ」

 初詣が中止になるのは私も絶対に嫌だった。聞いた話によると、神社の周りではたくさん美味しい物が食べられるみたいだし、それに神社のお参りと言うのも経験しておきたい。

 今年もいっぱい美味しい物が食べられるようにお願いするんだ。

 私は毛布を口元まで被るとすぐに目を閉じた。

「おやすみ〜」

「おやすみなさい」

 静葉は、部屋の明かりになっていたロウソクの火を消す。真っ暗になったのが目を閉じたままでも感じ取れた。


 暗闇に潜む妖怪とも言われている私は、暗い方が好きだって?・・・実際そんなことはない。明るい方がいいに決まっている。時々、自分の周りに闇を纏ってフワフワしていることがあるのだけれど、前が見えなくて木にぶつかることなんて日常茶飯事だったりする。だったら止めればいいのにと思うかもしれないけど、何だか気付くと勝手に出てたりするのでどうしようもない。夜目が効かないわけではないのだけれど、私の発生させる闇はどうやら少し特別らしい。

 ただ、誰かと一緒に居るときは出さないように心がけている。

 なぜかって?

 ・・・それは、お互いの顔が見えない付き合いなんて嫌だから。


 当然だよね。


 ああ〜、眠たいな。

 何だか、横になったらいい感じに眠たくなってきた。

 そう言えば穣子と同じで、私も昨日から全然寝てないんだった。

 妖怪の中には寝なくて大丈夫なのもいるみたいだけど、私は無理。眠たいときは寝るし、夢だって見る。そして、それは人間と変わらないらしい。

 まあ私としては、みんなが寝ている時に起きていても楽しくないし、お腹も余計に減っちゃうから、夜に寝て朝起きるのは、今や習慣になっている。

 以前はそうでもなかったんだけど、人間と仲良くなってきたのを切っ掛けに自分で変えた。

 宵闇の妖怪なのに、すっかり昼型。期待を裏切っちゃってごめんね。


 こんなことを考えている内に、私の意識と体はフワフワして、何だかいい加減なものになってきた。でも、すごく気持ちいい。楽しいことがいっぱいあった後はいつもこんな感じ。私は、この感覚がとても好き。これだから毎日を楽しく過ごすのはやめられない。


 初夢見られるかな〜。

 どんな夢かな〜。


 出来れば、お腹一杯になれて楽しい夢がいいなぁ〜。

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