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幽霊猫と私の8のやりたいこと  作者: 鈴風飛鳥
1/1

猫と私

 これは幽霊猫と私の不思議なお話。


 

 『にゃー』


 私の朝はいつもこの声の主によって起こされる。


 今日は日曜日。バイトもなく大学もないので、のんびり遅起きしてからやり途中のゲームを進め、好きな実況者さんの動画を見て、朝ご飯という名のお昼ご飯を食べる――といった素敵な計画があったのだが。


 『にゃー』


 声の主は私の上に乗りながらゴロゴロ喉を鳴らし、後ろ足で踏ん張りながらフミフミと前足を交互にぐっぱしながら掛布団をこねていた。布団こね職人の朝は早いらしい。

 そんな愛らしい姿を幸せな気持ちになりながらしばらく眺めていると――、


 「にゃー」


 今度はベッドの下でご飯の催促をする声の主が現れた。

 体を起こすと、布団こね職人はぴょんとベッドの上から飛び降り、ご飯を催促してきた声の主の隣に座り込む。

 布団こね職人兼目覚まし係の声の主と、ご飯の時間を知らせる声の主――二匹の猫は私の顔色を窺うようにじっとこちらを見つめてきた。


 「おはよ。ごめんね、ご飯だよね。今下に行くから」


 じっと真摯にご飯を待つ姿にさすがに申し訳なくなった私は、ベッドから体を起こすと手櫛ではねた前髪を整えた。きちんと乾かしてはいるものの、癖となってしまったのか朝起きると必ずと言っていいほど前髪がはねてしまう。


 一通り身なりを整えると、ベッド横のコンセントで充電しておいたスマホを持って、扉を開けて部屋を出た。扉を開けると同時に猫たちは一階のリビングにある自分の餌置き場に向かって猛ダッシュ。よほどおなかが減っていたらしい。

 今朝はお母さんからご飯もらわなかったのかなと思いながら、寝ぼけ眼をこすりつつ階段を下りた。


 階段を下りた先にあるリビングには人の姿はなく、テーブルの上にはテレビのリモコンと母の字でメモが残されていた。


 『起きるの遅くなったからご飯は昨日の残り。猫にご飯よろしく!』


 よほど急いでいたのだろう。普段の母の字はきれいだけど、書かれた字は走り書きで歪んでいた。

 台所にある冷蔵庫の扉を開けると、昨日の残りの野菜炒めと里芋の煮っころがし、お惣菜で買ってきた豆腐ハンバーグがあった。

 私はそれらを取り出して冷蔵庫横にある電子レンジに突っ込んだ。数分あれば食べ物があったまるなんて、文明機器は最高だ。


 自分用の朝ご飯を温めている間に、キッチン下の収納棚を開けて猫のカリカリ袋を取り出した。ガサガサと袋の音が聞こえた途端、猫たちはすりすりと足元に体や尻尾を寄せて甘えてくる。


 ――うっ、かわいい。うちの子はこの世で一番かわいいと思う。


 そんな現金で甘えん坊な猫の奴隷として世話をさせてもらえているのだから、私はなんて幸せなのだろう。すり寄ってきたうちのサビ猫の方の頭を撫でながら、二匹分のエサ皿を取り出してそれぞれに餌を盛りつけた。


 「はい、お待たせ。たーんと召し上がれ」


 二匹分のエサ皿を床に置くと、サビ猫の方は待ってましたと言わんばかりの勢いでカリカリを食べ始めた。もう片方のキジトラ猫はエサ皿をじっと見つめるが、まったく手を付けようとはしない。いつものことだった。

 そうこうしているうちに、自分の分のエサを食べ終えたサビ猫が、食べないなら食うぞとキジトラ猫の分にまで手を出していた。


 私は二匹の微笑ましいごはん風景を見守りながら、自分の分の朝食を準備した。

 電子レンジで温めた昨日の残りのおかずをテーブルに並べ、炊飯器からホカホカの白米を茶碗によそう。朝は白米でないと、一日の調子がくるってしまうのだ。

 最後にお気に入りの猫の足型コップを取り出して、ウォーターサーバーの水を灌ぐ。


 椅子を引きながらリモコンを手に取り、適当にチャンネルを回す。特に気になる番組もなかったため、最後にたどり着いたチャンネルで止めて映像を垂れ流しにしておいた。


 「いただきます」


 私が朝食を食べ始めるころには、猫たちはほぼごちそう様な状態になっていた。

 カリカリにまったく手を付けなかったキジトラ猫は前足で顔を洗い、サビ猫は口周りをなめずりする。その様子を見ながら、私も着々と朝食を食べ進めた。


 『――続いて、本日の天気予報です。朝は曇り空になりそうですが、昼間から夕方かけて晴れる所が多いでしょう』


 (今日は昼間から晴れ……することもないし、久々にその辺ぶらぶらするかなぁ)


 友人で同じサークルの可奈を誘おうかと思ったけど、あの子は今日彼氏とデートだったのを思い出した。


 本日の予定が未定のまま朝食も済ませ、おかずがきれいになくなった食器を食器洗い機へと並べていく。同じく朝食を終えた猫のエサ皿は手洗いできれいに洗うと、水切り用のバットに置いた。


 朝食を終えてご満悦な様子のサビ猫は、お気に入りのキャットタワーの上へ昼寝をしに、キジトラ猫もベランダの窓ガラスから外の様子を眺めながら香箱座りをしてくつろいでいた。


 猫たちが満足したところで、私は出かける準備に取り掛かった。

 再び二階の自室に上がると、パジャマを脱いで動きやすいジーンズにTシャツ、薄手のパーカーに着替えた。そろそろ秋も深まって次第に冬になる。長袖の服もタンスから出しておかなきゃ。

 そう考えながらワンショルダーバッグを取り出して、財布にスマホ、スマホの充電器、ハンカチ、手作りの猫のぬいぐるみとデジカメと使い切りカメラをしまい込んだ。


 準備が整ったところで荷物を持って一階に下り、洗面所へ行って歯を磨いた。顔を洗って、タオルで水気をとると、じっと鏡の自分とにらめっこする。

 茶髪にナチュラルボブの髪はいつも通っているスタイリストさんが進めてくれた髪型だ。結構気に入っている。顔は少々丸顔なのがコンプレックスだけど、これは愛嬌だ。一重なのも愛嬌。そう、決して太っているからなのではない。

 そう自分に言い聞かせながら、洗面台の上に置いてあったメイク道具でナチュラルメイクを施した。


 鏡で変なところがないか最終確認をして玄関にバッグを置いて再びリビングへ戻ると、清潔になったエサ皿を再び取り出してカリカリを盛りつけた。留守の間いつでもご飯を食べられるようにしておかないと、帰った時に不満を言われるからだ。


 「行ってくるね。むーくん、お留守番よろしく」


 キャットタワーの上でくつろいでいたサビ猫のむぎことむーくんの頭を撫でる。むーくんは鳴きはしないもののしっぽだけ振って返事をしてくれた。


 玄関へ行って荷物を手に外に出ようとしたとき、


 『にゃー』


 キジトラ猫が私を呼び止めた。


 「今日も一緒に行く?くーちゃん」


 私はキジトラ猫のくーちゃんに話しかけると、くーちゃんは私の肩にひょいと乗っかってバランスをとった。本来なら肩に爪が食い込んでいたいのだろうけど、肩に猫を乗せて一緒に出かけるのが夢だった私にとっては最高のシチュエーションだ。


 玄関を開けて鍵を閉めて庭に行き、止めてあった自転車の留め具を外す。サドルにまたがって、勢いよくペダル漕ぎ出した。


 ――さぁ、今日は何をして過ごそうか。


 ここまで閲覧ありがとうございます。猫好きなら一度は猫が絡んだお話を書きたくて。


 一人と一匹のお話、ゆっくりのんびりかけたらいいなと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱり女の子と猫の絆を描いた作品は良いですよね! [気になる点] ちなみに作者様は声優はお好きですか?
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