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-ReReincarnation-  作者: KoTATU
4/6

−I need you−

長いです。

まじで。

頑張って理解してくれるとありがたいです。

あ、定期的に投稿できるように頑張りまーす。


sacrifice


突如として、ウメの肩が爆散した。

血が吹き出し、俺の顔に生暖かいものがビシャリとかかる。

ウメがよろけ、肩から流れ出る血を抑えながら、その場に崩れ落ちる。

「...!?」

一瞬、何が起こったのか理解ができなかった。

状況を把握できずに戸惑う。

「ガフッ」

地面に倒れたウメが大量の血反吐を吐いた。

負傷したのは肩なのに、致命傷を負っている様子。

明らかに普通じゃないのがわかる。

「脅威値Dの対象を補足。先制攻撃の被弾を確認した。D-L5の有効性も確認。だが予定外の脅威値不明対象がいる。応援求む。」

後ろを振り向くと、階段を登ってきた男が銃のようなものをこちらに向けており、誰かと会話していた。

「...了解。対象に動きはなし。どうやら動揺している模様だ。外見は人間のようだが、観測対象と友好的に会話していたことから敵として認識してもいいだろう。上に報告頼む。」

こちらから一切視線を外さずに、耳につけたデバイスで会話を続ける男。

話し終えた男は、銃口を倒れているウメから外した。

そしてそのまま素早く俺の方へ向ける。

引き金に指をかける。

少しだけこちらの様子をかがったあと、

パンッ。

動かず、抵抗せず、命乞いもせず、ただ突っ立っているだけの俺の胸が爆ぜる。

痛い。

一瞬にして体が熱くなり、力が入らなくなる。

思考も鈍り、何も考えられない。

重力に従って、ウメと同じように崩れ落ちる。

だんだんと息ができなくなってきた。

視界がぼやけはじめて、感覚が鈍くなっていく。

指先一本すら動かない。

何かがおかしいが、何がおかしいのかがわからない。

ゆっくりとこちらを確認しながら近づいてくる男。

視界が真っ暗になって、ジャリジャリという音だけが近づいてくる。

生きる気力がなくなって、体が崩壊していく感じがして。

ああ、また死ぬんだな、俺。

そう思った瞬間。

「...ク、クラス5魔法。空間制御...空間転移...!」

ウメが叫んだ。


第 章


春の心地よい風と、鳥のさえずり。

自然を身近に感じられるような、土の匂い。

「うむ。とりあえず、応急処置はこれでいいじゃろう。」

何度目かの修復魔法を詠唱し終えたウメが確認する。

無事に傷はふさがっていた。

「あ、ああ。ありがとう。本当に助かった。」

「何、こういったことは得意ゆえ、いつでも頼むがいい。さて、数十時間も昏睡状態じゃったし、のどが渇いたじゃろう。ワシは水を汲んでくる。まだ完全には動けんじゃろうから、体力回復に努めるが良い。安全は確認できておるから、ゆっくりな。」

ウメはそう言い、部屋を出ていく。

バケツの金属音がして、扉のガラガラという音がしたあと、静かになった。

木々のこすれる音だけが残る。

俺は一人、完全に治った胸に手を当てる。

結局あの後、とどめを刺される前にウメが俺を一緒に空間転移させ、救ってくれた。

俺たちが転移してきたのは山奥の民家跡。

ここは近代化と同時に人々から忘れ去られた土地。

人が寄るには厳しい環境であり、人目を避けたい俺達からすれば安心して生活できる場所。

ただし、人の手から離れて数十年経ったここは完全に自然に支配されており、生活するには少し困難な環境になってしまっている。

それでもあの状況から切り抜けるためには十分であり、当分はここで英気を養うことに決まった。

ここに到着してすぐ、ウメは意識のない俺に応急処置を施した。

そのおかげでほとんど死にかけだった俺は意識を戻すことができた。

その後は俺の魔力を同調しながら、ゆっくりと治療を施してもらった。

ウメが治療系の魔法に精通していたおかげで、俺の体は無事に治っていった。

ウメよりも重症だったが、転移した先で速攻で取り掛かってくれたおかげで、俺は今生きている。

しかしウメは自分の傷の治療を後回しにしたせいで、腕の修復が間に合わなかったらしい...。

それでもまだ動けない俺を懸命に助けてくれた上に、世話まで焼いてくれているウメには感謝しかない。

つい数十時間前に会ったばかりの俺にここまで尽くしてくれる理由は何なのだろうか...。

「戻ったぞ。すまんのう、物質生成やら物質移送やらは習得しとらんでの。人力じゃから川まで行くのに手こずってしまったわい。わしも衰えたのう。調子は戻ったかの?」

笑顔で話しかけてくるウメ。

手を失って、自分も疲れているはずなのに、優しくしてくれる。

「ありがとう、ウメさん。本当にすまない...俺が何もできなかったせいで...」

心の声が吐露する。

「お主のせいじゃない。久しぶりの同郷者に気が緩んで結界を解除してしまったワシに落ち度があるんじゃ。むしろお主を巻き込んでしまったのじゃ。ワシのほうが謝らねばなるまい。申し訳ない、トウよ。」

「まだ名前間違えてるんかい」

「...ほぇ?」

「アリガ トウって適当に言った名前だよ。ホントの名前はタマヨリ ケイ。」

「なんじゃ、からかったのか!お主いい度胸しとるのう...!」

「いや気づけよ。」

「むぅ、確かに」

こういった、ちょっとしたやり取りも心が楽になっていく。

「話を戻すとしてお主、体の方は大丈夫かえ?」

と、若干脱線した話を無理やり戻すウメ。

「そうだな...正直自分の体じゃないから今の自分が万全なのかどうかあまりわからないな。気だるさや痛みは感じないけど、気力あふれる感じでもないし。ま、でも動くのには問題ないし、デバフもウメさんのおかげで無事解除できてる。問題なく思考できてる。」

「さん付けなんてしなくて良いぞ。ウメで良い。...して、問題なく解除できたようで安心じゃ。まさかニンゲンにあのようなことができるなんて想定外じゃったからのう...」

あのときの男が撃った弾にはどうやら脳に直接影響を与える物質が含まれていたらしく、俺達は思考回路が鈍らされていた。

肩にあたったウメは影響が比較的少なかったが、避けようとせずに胸に食らった俺には即座に影響し、魔法発動やら思考やらが一瞬でできなくなってしまった。

ただ、

「ワシらはこちらの世界の人間とは大幅に体の構造が異なる。つまり、ニンゲンには効くものでもワシらの体には影響を及ぼさないものが多い。ましてワシやお主は神柱の末裔と一人。こういったものは意識せずとも無効化されるはずじゃ。」

「つまり、こちらの人間は俺達みたいな異世界のやつに対する知識を持っている可能性があると?」

「そのとおりじゃ。ワシはこの世界に来たときからあまりニンゲンと直接触れ合うことはしてこなかった。しかしここ十数年、ワシらのような異世界の生物がよく来るようになっているらしくてのう。警戒心が強まっているようじゃ。」

「転生してくるやつはいないんじゃないのか?」

「転生ではない。『世界の扉』を通して知性のない魔物がちょこちょここちらへやってきているだけじゃ。奴らは知性ないゆえに弱いからのう。ニンゲンからしたら格好の研究対象なんじゃろう。その影響でワシも特殊な装置で魔力を感知されて、コソコソせねばならんくなったのじゃ。」

林から来る風がウメの髪を揺らす。

「なるほどな。でも、ウメならもっと人の手の届かないところにだっていけるだろう?なんで神社なんかに住み着いていたんだ?」

と、率直な質問をかける。

それに対して、ウメはキョトンとした顔でこちらを向く。

「...お主、気づいておらんのじゃな?」

「へ?」

呆れた顔をしながらよっこいしょ、と体勢を変えるウメ。

「全く...本当にこの世界のこと知らんのじゃのう。まずお主、この世界でワシらが生きるためには何が必要じゃ?」

指をちょいちょいと振りながら質問してくる。

「必要なものって...食料とか?」

「まあ、それも大切じゃが、もっと他にあるじゃろう。魔力じゃよ、魔力。」

言われてみて思い出す。

俺たちの体は魔力のもとの成分、魔胞子でできている。

つまり魔力を消費して成長だったり代謝だったりをしている。

俺達にとって魔力は生きるために必要な最低限の要素だ。

あちらの世界では大気中に普通にあるから気づかなかったが、たしかにこの世界には魔力の概念がないので、魔胞子も同様にあるとは考えにくいな。

「あれ、じゃあどうしてウメは生きていられるんだ?この世界に魔力の概念がないなら、とっくに体が崩壊してしまっているはずじゃ...」

「よう気づいたな。お主は頭が良いのう。」

まるで教え子の成長を喜ぶ先生みたいに笑う。

「そこがワシが執拗に神社やら寺やらに住み着いていた理由じゃ。ワシが六神柱の一人だということは教えたじゃろう?」

「ああ、覚えている。」

「うむ。もっと詳しく言うと、ワシら獣神族は、同じく六神柱族の魚神族とともに、この世界―科学界を平定するのが役目じゃった。ただし、この世界には魔力の概念がなく、魔力の概念がある黄泉で生まれたワシらが活動するのは困難だった...。そこで取得したのが『信仰変換』という種族スキルじゃ。このスキルは便利でのう、人々がワシらの存在を信仰することで、それが魔力に変換されるもの。それ故魔力のないこの世界でも我らは活動できておった。ワシがこの世界に一人放り出されても、このスキルで少しずつ魔力を回復することで、生き延びることができたのじゃよ。」

ふむふむ。

もともと魔力のない世界での活動を想定したゆえのスキルを獲得していたことで、最悪の自体を逃れているのか。

たしかに昔からこちらの人は神やら仏やらを信仰していたし、近代化の進んだ最近でもする人はまだいるのだろう。

神社に住み付けばそこに来る人から信仰を得られて、それで魔力を回復していたということか。

「...あれ、それじゃあ俺はつんでないか?死ぬの?俺。」

と、最悪の結論にたどり着く。

「早とちりするでない。こちらの世界でも食事をすることで少しではあるが魔力は回復できる。じゃから死ぬことはない。ワシが言いたいのはその先じゃ。」

「先?」

ウメが何処からか採ってきたぶどうを手渡してくれる。

ちょっと酸っぱいが、それがより甘さを引き立てている。

「ワシはニンゲンに存在を完全に敵対視された今、生きるすべがなくなったと言ってもよかろう。ワシほどの種族になると食事による魔力だけでは存在を保てん。そこで、じゃ。お主、ワシと契約してワシを信仰してくれぬかの?」

「俺が信仰...なるほど、この世界で唯一敵対していないであろう俺から信仰をもらうことで魔力にしたいのか。だが契約する必要はないだろう?」

「ワシが契約したいと言っているのは何もワシのためだけじゃない。ワシと契約することで繋がりを形成し、半自動的な信仰にすることで、わしは難なく魔力を得られる。しかしお主が死んでしまっては信仰の無くなってしまうワシも生きられん。じゃから契約を通し、条件のひとつとしてワシの作った魔力をお主に譲渡し、無限のサイクルを作りたいのじゃよ。」

あ、ワシかわいいからお主が信仰したら、姿見せなかったときよりも強い信仰得られうであろうな、とほざくウメ。

「なるほど、ウメを魔力生成機とすることで両者にとってwinwinな契約をしたい、ということか。それだったら俺にもメリットはあるな。」

「魔力生成機...まあ間違っておらんが。もちろんワシは信仰をもらう側。お主が契約主でよい。」

「いいのか?それだと俺が勝手に行動を縛れることになるが...。」

「左手を失ったうえ、信仰も失ったワシには生きるすべがない。じゃが、ワシは人助けをするのが好きでのう。お主のためにもなるし、ワシも生き続けることができる。行動制限くらいなんてことないのじゃよ。」

ウメが俺を懸命に治療してくれる理由はそこか。

人助けが好き、か。

根っからのいい人なんだろうな、ウメは。

「わかった。とりあえず契約内容は俺の体調が万全になってから決めよう。それから契約だ。」

「ありがとうじゃのう。まあお主も死んでしまうし、契約を断るとは思ってなかったがのう♪それでも頼んだこちらを案じてくれるお主は優しいのう。...お主は、似ておるの。」

最後に寂しそうな顔でつぶやくウメ。

聞こえたが、あまり言及しないほうがいいかもしれない。

誰にだって悲しい過去の一つくらいあるからな。

掘り返されたくないのはみんな一緒だろう。

「ま、お主は当分は体力回復に務めることが優先じゃな。」

「ああ。だがウメは大丈夫なのか?魔力がない今、動くのは危険じゃないのか?俺と同じく休んでいたほうが...」

部屋を出ていこうとするウメの背中に問いかける。

ウメは振り向いてこちらによってくる。

そして、俺の唇に指をを当てて、

「お主から信仰を感じるからの、ワシは大丈夫じゃ。お主は素直じゃな♪」

と、言って部屋を出ていった。

...なんか心を見透かされた感じで、ちょっと恥ずかしくなった。

少しだけ考え事をしたあと、考え疲れた俺はそのまま眠ることにした。

ウメの言うとおり、まずは体力を回復しなければならないな。


...........


「もう良いのか?」

一番広い部屋に行くと、ウメが座って服を縫っていた。

俺がこちらに来たときに着ていた服だ。

撃たれたときに空いた大穴を直してくれている。

片手でもスイスイと縫っていくウメが母親のように見えて、懐かしさを感じる。

「なんじゃ、ぼうっと突っ立ってないで座ればよいじゃろ。ほれ。」

と言ってボロボロの畳をポンポンと叩く。

お言葉に甘えて座らせてもらう。

そのままウメを真正面に見据えて、

「十分な治療と睡眠のおかげで体が軽くなったよ。改めて、助けてくれてありがとう。」

と、感謝の気持ちを伝える。

ウメは少しだけ照れて、笑いながらうなずいた。

「お主は大切な同郷者じゃからな。死んでしまってはワシも悲しむ。それに困っている人を助けるのが神柱の役目。ワシは役目を全うしたまでじゃ。」

謙遜しているだけに見えるが、本人は心からそう思っているのだろう。

素直に感謝するのが一番だが、問題は別だ。

「それでもありがとう。だけど...俺なんかのために、腕を一本落とす必要は...」

「言ったじゃろうて。お主が死んだら必然的にワシも死ぬ。それに人の命より腕の一本が重いことなんてありゃせんよ。...何、気にするでない。お主はそれ以上のものをくれることになるからの。ワシの生命線じゃ。」

俺の言葉を優しく遮りつつ話す。

「...わかった。俺もウメにできる限り貢献したい。まだまだできることは少ないと思うが、頼ってほしい。」

「ふふっ、頼りにしておるぞ。」

「ああ」

そんな会話をしているうちに、服を縫い終えたようだ。

「ほれ、縫い終わったぞ。タオル一枚だけじゃと春先でも寒かろう。さっさと着替えると良い。」

と言って服を手渡してくれる。

ほんのりウメの香りと温かみが感じられた。

しっかりと直っていた。

やはりウメもこういったことをしたことがあるのかな?

というか、ウメの家族は...。

いや、やめといたほうがいいかもな。

未練がありそうだし、何よりまだそこまでの中ではないだろう。

服を着替えている間にウメが食事を用意してくれた。

山の幸だけのかんたんな料理だったが、優しい味わいで、胃も心も満たされた。

川まで皿を運び、一緒に洗う。

この家に放置されていたやつだが、きれいだったのでまた使うことにした。

そして洗い終わって、家に戻り話を再開する。

「それじゃあ、契約について進めていこう。」

皿をしまい終えたタイミングで、ウメに話しかける。

外は太陽が空高く登り、温かい日差しが屋根の隙間から降り注いで、ちょうどいい温度になっている。

先にウメが口を開く。

「ワシからはお主の信仰と少しばかりの自由以外には特に要求せん。あとは好きに決めてくれて構わん。」

「わかった。俺としてもウメを制限するつもりはないからな。俺はウメからの定期的な魔力の供給。...他には従属の確認かな。あ、あとスキルと固有魔法の貸与もお願いできるか?」

「できるが...なんじゃ、それしか要求せんのか。無欲なやつじゃのう、お主。ワシ一人をすべて独り占めできるんじゃぞ?ほれほれ」

なんて言いながら少し体をくねくねさせる。

動きが古臭いな。

たしかに体とか顔とか耳とか好みではあるが、なんか悟られるのが嫌なので無視。

「はいはい。...じゃあ契約の内容は決まりだな。あとは期間だが...双方の目的達成まででいいか?」

「なんじゃ、お主もしかしてろりこ...まぁええじゃろう。ワシには目的がないから、お主の目的が達成されるまででよいじゃろう。ま、黄泉に帰りたい気持ちもあるが、お主の目的をを優先してもらって構わん。最悪は魔法界でも良いからのう。」

「了解だ。とりあえずは双方が合意できる状態になったら、の契約でいいだろう。それじゃ、契約を頼む。」

「わかったぞ。それにしても、従属側として契約するのなんて初めての経験じゃのう。というより、歴史上で初めてじゃないのかのう?神柱族が従属するなど。」

ポンポンと膝のホコリを払って、ウメが立ち上がる。

そして、手を合わせ、意識を内部に向け、お互いの魔力を循環させ始める。

俺が爪で指先をひっかいて傷を作り、魔法術式を展開する。

契約の準備ができたら、ウメの合意を確認して、詠唱を始める。

「我、主神の恩恵を得、ウメを従者とし、契約を履行す。」

言い終わった瞬間、傷口を中心として紫色の魔法陣が淡く浮かび上がる。

魔法陣はゆっくりと回り、完成していく。

完全に完成したことを確認して、指先をウメの唇に持っていく。

そしてそのままウメが傷口をなめ、血を摂取する。

ゴクリ、と飲んだ。

ウメの額に同じ魔法陣が浮かび上がり、少し光ったあとに消える。

無事、契約完了だ。

「...うむ。順調に魔力の生成量が増えておるな。お主の方にもしっかりいってるようじゃ。成功して良かった良かった。」

ウメが唇についた血をなめながら言う。

「ああ、体がさっきまでと違ってすごく軽く感じる。まだまだ満タンには程遠いけど、クラス5の魔法もこの分ならすぐに使えるようになると思う。信仰変換ていうのはすごいな...!」

「じゃろう?契約して正解じゃったな。...さて、次はお主の目的までの計画じゃ。」

おっと、たしかに契約に話題が言っていたが、本題はそこであることを忘れてはならない。

「そうだな、それが俺にとっては大切だしな。」

「うむ。ワシも協力するゆえ、どのようにしてお主の想い人を助けるか一緒に考えようではないか。」

想い人というよりは仲間なのだが、まあそこを指摘するのは野暮というものだろう。

大切な人、というところに変わりはないしな。

「俺は前にも行ったとおり、この体の持ち主...ノアっていうんだが、その娘の魂を完全なものにして生き返らせてあげることが目的だ。そのために別れた魂を探している。」

一度言ったことだが、あのときはまだウメを信用していなかったし、簡潔にしか伝えていなかったので、もう一度しっかり言い直す。

そこでウメから疑問が。

「お主、魂を戻すのはいいとして、その娘が生き返ったあとはどうするのじゃ?体の中に完全な魂が2つ以上あることは不可能じゃぞ。」

「大丈夫だ。俺の体は『魔法の理』によって保護されている。今俺がこの娘の中にいるのは魂の不在によって体が崩壊するのを防いでいるためだけだから、魂が戻ったら俺も元の体に戻るさ。」

「『魔法の理』が肉体を保護...妙じゃな。あやつがそんなことをするなんて...。」

「へ?」

「あ、いや、なんでもないぞ。して、魂の場所はどうやって探すのじゃ?」

「いや、俺は何もわからないんだ...。『魔法の理』も教えてくれなかった。ウメはなにか知っているか?例えば分離した魂がどういう経由で物や人に憑依するのかとか...」

「うーむ、正直ワシにも生物の死はわからん。死というのはこの世で最も難解な方程式みたいなものじゃからのう。それに従っているワシもまた、方程式の本質を知り得ることはできん、というわけじゃ。しかしお主、そのノア?が死んだのは魔法界じゃったのだろう?であれば黄泉か魔法界にあると考えるのが普通じゃな。科学界と魔法界を魂が移動するのは無理じゃろうからな。」

「そうか...そうなると、まずはあちらの世界へ戻らなきゃいけないわけだな。」

「そうなるのう。すまんがワシはもうすでに界を移動するだけの力は出せん。いくら魔力供給があっても、な。別の方法で行くしかないのう。」

「ああ、わかっている。だがあちらに戻る方法なんて...」

と、そこまで考えてふと思い出す。

そういえばこちらの世界にちょくちょく魔物が来ている、という話を。

ウメが言いたいことってもしかして...!

俺が結論に達したのを察したのか、ウメがニヤリと笑う。

「ようできる子じゃ、お主は。そのとおり、世界の扉を使うしかあるまい。」

とことこと歩いていき、庭にヒョイっと降り立つウメ。

片手を広げ、腕に魔法陣が現れる。

魔法陣から出てきた光が段々と収束していく。

「ワシはこの世界を管理していた六神柱族が一人、シロヌエノユカリノウメ。世界の扉を開く鍵を持つこの世界唯一の人物じゃ。どうじゃ、契約してよかったじゃろう?主よ♪」

そう言って、極上の笑みを浮かべる。

そんなウメは右手に、鍵状の光を手にしていた。


計画


庭から戻ってきたウメがゆっくり座る。

「なんで庭に行ったんだよ。」

「なんかかっこいいじゃろ。そんなことより良かったのう、ワシが鍵を持っていて。まさかこの権能が人を救うことになるなんて思っとらんかったわい。ワシには持ち腐れだと思っとったが、感謝してほしいのう。」

「はいはい、じゃあとりあえず色々試したいこととか、基本的なスキルとか習得し直したいから、出発するのはその後でお願いできるか?諸事情で基本的なスキルを習得できていなくて...ってどうした?」

不意に話の途中でウメが顔をそらした。

怪しい。

「おい」

「...な、なんじゃ?主様?」

「なんで様付なんだ。なんか隠してるだろ。」

「さ、さぁ?お主が何を言ってるかワシにはわからんのう〜?」

「ウメ、扉の場所知らないだろ。もしかして。」

「...!」

顔から汗がダラダラ流れている。

その上、しっぽも耳もピーンとなって毛が逆だっている。

意外と感情が出やすいんだな。

「まずはそこからか...。」

「す、すまんのう...世界の扉は普段は使わない緊急用での...一度も使ったことない上に場所も知らんのじゃ...。」

「知っている人はいるのか?」

「いや、わからないがおそらくもう生きておらんじゃろう。もしいたとしても連絡できるかどうか...。自分たちで見つけるしかあるまい。」

「でもたまに魔物が出てくるんだよな?だったらそこをつき止めればいけそうだが。とゆうかなんで鍵を持たない魔物が扉使えているんだ?」

「そんなに質問攻めにするでない。落ち着くのじゃ。魔物の発生源を調査するのはいい案だと思うが、ワシらはいまお尋ね者じゃ。ニンゲンの目をかいくぐりながらホイホイとは動けんじゃろう。あと魔物に関してじゃが、世界の扉はどちらかが開けば、片方が開いていなくても片道通行で行くことができるという特徴があるでの。おそらくじゃが、あちらの世界で世界の扉が開いておるんじゃろうな。たまに災害やら戦争の衝撃やらで十数年開き続けてしまうことがあるのじゃ。放置していたらそのまま閉まるがの。それが魔物がこちらへ進行してきている原因じゃと思うぞ。」

「それじゃあどうするか...」

「うむ、まずは人のいない場所を端から探索するしかあるまい。空間制御での探索もできるし、常人よりは早く見つかると思うの。それでも時間がかかるのは目に見えておるが。」

と、申し訳なさそうに言うウメ。

別にウメは悪くないんだが、もし知っていればな、と責任を感じているのだろうな。

「大丈夫だ、何年かかっても、この娘を生き返らせることができるならば大丈夫だしな。...それにもっといい考えがある。」

と、代替案について話を切り出す。

実は思考を張り巡らせる中で、俺には一筋の光が見えていた。

今までウメが話してくれたことを統合して、勝算がある可能性を持つ計画が頭の中に一つできていた。

「考えじゃと?地道にやっていくしかないと思うんじゃが...。しかしお主は頭がいいからのう。ワシにはわからない計画を思いついておるんじゃのう?で、どんな案なんじゃ?教えてほしいのう。」

早く教えてくれ、と言わんばかりに迫ってくる。

ブンブンと尻尾が振られている。

尻尾すごいな。

話を戻そう。

「まず、俺たちは鍵を使うために扉を探さなきゃいけない。」

「うむ。」

「でもイレギュラーな存在である俺達は人間側から敵対視されている...」

「じゃから地道に探していくしかないんじゃろう。なんじゃ、もったいぶらずに教えるが良い。」

「じゃあ、コソコソせずに調査する方法はなにかあるか?」

「コソコソせずに...とは何じゃ。」

「まだわかんないか。要は敵をなくせばいいんだ。そうすれば俺達は安全に扉を探せる。」

「敵を無くす...。皆殺し...じゃないじゃろうからのう。って...お主まさか!?」

ビクンっと体と尻尾を震わせるウメ。

反応からして、どうやらわかったみたいだな。

「やっと気づいたか。」

そう、俺の考える計画とは、敵の敵は味方理論。

そして俺は立ち上がり、先程のウメのように手を広げ、言う。


「人間に協力しに行くぞ。」















読んでくれてありがとうございました。

プラナリア

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