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即死防止措置

魔王が放った魔法、

その極大の光束により

勇者は消滅した。


壁の影から姿を現す

漆黒の鎧、兜と仮面、

それは間違いなく魔王本人。


勇者の透明化能力は

魔王に見破られていたのだ。


以前イヴァンに気づかれた時点で

勇者も気づくべきではあった、

魔王に透明化は通じないことを。


「これで終わったか……」


魔王は戦いの終わりを確信した。



だが勇者がいた場所にだけ

異変が起きる。


何もない筈の所に突如

光が現れ、

勇者が光の中に消える瞬間、

光に当たる前へと

それは移り変わって行く、

まるで逆回し再生でも

されているかのように。



勇者は昔のターン制RPGを

プレイする際、

敵ボスの理不尽とも思える

圧倒的な一撃を受け、

突然パーティーが全滅しないよう

バトルがはじまると

最初のターンで全員に

即死防止魔法を掛けておく

タイプの人間であった。


中でもお気に入りは

一度完全にHPゼロになっても

オート蘇生されるものだ。


ゲームの中ですらそうなのだから、

本人の生死が掛かっている戦いで

即死防止対策を怠っている筈がない。


完全に消滅する前の状態へと

戻った勇者。


「なっ、馬鹿な」


仮面を付けているので

表情はわからないが

魔王も驚きを隠せない。


「やれやれ、

即死防止しといてよかったぜ」


「俺が死んだら、

俺の肉体と魂が

三分前に戻るように

事前に能力を掛けておいた」


「だから厳密に言うと、

この俺の肉体とこの世界のすべては

時差が三分発生している」


「それも今時間合わせをしたがな」


初期から時を止める能力を持ち、

時空を越える

転移系の技を使う勇者が、

限定的に時を戻すことが

出来るようになったのも

自然の成り行きということだろうか。


時を戻す能力、

それは限定的なタイムリープに近い

ものなのかもしれない。


-


死の淵から生還した勇者だが、

死ななかったというだけのことで、

窮地に陥っている状況は変わらない。


魔王と一対一で近接戦闘をするには

如何せんレベルが違い過ぎる。


最大LVを99としたならば

勇者はまだLV16ぐらいのもの。


そして当然

アンチ転移フィールドが張られた

城内にいるということは、

アンチ転移フィールドの

結界の中にいるようなもので、

転移系の能力は

一切使えないままである。



魔王が振りかざす剣を勇者はかわすが、

避けるのが精一杯で反撃どころではない。


ダメ元で催眠洗脳能力を試すが

やはりさすがに

ラスボスである魔王には効き目がない。


「我は相手から掛けられた能力を

無効化する能力を持っている、

お主の催眠洗脳も全く効果はないぞ、

潔く諦めて観念するがいい、勇者よ」


「そんな事、敵に教えるなんて

やっぱり年寄りは随分と優しいんだな」


「相手に能力が掛からないってんなら、

自分に能力を掛けるしかないね」


自らに身体能力UP、肉体強化などの

能力を使う勇者。


魔王との圧倒的レベル差を埋めるべく

さらに勇者は自らの肉体と魂を

数秒早送りさせて動く。


時を巻き戻すことが出来るなら

早送りすることも出来る筈。


それでも防戦一方、

ひたすら逃げ回るばかり。


「ちょこざいな」


アジリティがUPした勇者を捉えるため

剣すらも捨てて

徒手空拳で向かって来る魔王。



しかしレベル差はやはり

いかんともしがたく、

逃げ回っていた勇者も

ついに魔王に捕まる。


魔王が放つ拳の一撃が、

勇者の土手っ腹に決まった。


おそらく肉体強化を行っていなければ

腹を突き抜けて貫通していたであろう。


前のめりになって崩れ落ちる勇者。


魔王はその手で

勇者の首、喉輪を掴み、

そのまま持ち上げる。


息も出来ずに足をバタバタさせ

宙に吊り下げられる勇者。


その顔は血の気を失い、

口から泡を吹いている。






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